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【通信講座】 小説「拝み屋雲水の事件簿 拝み屋雲水③ 花鬼」 講評

『【通信講座】 小説「ボウキョウ」 講評』で

13万字の長編。
冗長すぎる。
20枚で書ける。

と書いた。
9万字の長編。
冗長すぎる。
10枚で書ける。


読書体験がこんな苦行であっていいだろうか。
14/131 までしか読めなかった。
耽美的文体を志向しているのは分かるが、あまりにもぎこちない。

 狐の首に抱き付き、椛が弱音を漏らす。狐は椛の冷たく冷えた頬を舐め、頬擦りして来た。椛はキャッと短い歓声を上げ、狐の真っ白な毛皮に鼻を擦り付けた。
 狐はゆっくり尾を振り、椛の頬を二度ほど舐めてから、身を起こし、目配せして来る。
 「うん、わかったよ」
 椛が目元を手の候で拭い、返事をする。狐はふんと鼻を鳴らし、尾を振り振り、歩き始めた。椛は後に続き、桜並木から外れた木々の合間をえっちら、おっちら、歩き出す。狐は時々、振り返り、椛が遅れず付いて来ているのを確認しつつ、前を歩く。

一挙手一投足をいちいち書くので
遅々としてストーリーらしきものが進まず
非常なストレスを読者に感じさせる。

「鬼ねぇ、この明治の代で、そんな話がまだ転がってんですかい」
「あっしは伊三ってんだ。お嬢さん、名前を聞いても良いか?」
「あいつと出会ったのは、この先の宿場でなぁ。綺麗な女だったんだが、どこか寂しげで、悲しそうで、お茶引きだったのさ。店の連中にも嫌われてたよ。お茶引きなんて言葉、お嬢さんには判らねえだろうな。まあ、客が付かないって意味さぁ。この先の宿場には、沢山、男の相手する女達が働いてるんだよ。あいつ、おせいは面相はいいんだが、にこりともしない女で、お陰で碌に客が付かねえ、そんな女だったのさ。お嬢さんには、まだ早いかなぁ。まあ、戯言だと思って聞き流してくれよ」

明治を想定しているようだが
東京弁が中途半端すぎて気持ち悪い。
現代標準語で書いてはどうか。



(作者より)
視点が移り変わる構成で、敢えて改行を減らしております。
視点切り替えがわかりにくくないか?
間尺に比べて、エピソードを詰め込み過ぎて、ストーリーが追いにくくなってないか?
最後の朔夜のオチが乱暴ではないか?
以上の改善を思案しております。
文章面で言えば、重複表現を減らしたつもりですが、改良すべきかどうかが気になっております。


視点切り替えがわかりにくくないか?

分かりにくくない。
文体がとにかく読みづらい。



間尺に比べて、エピソードを詰め込み過ぎて、ストーリーが追いにくくなってないか?

ストーリーの展開が遅すぎる。
おそろしく退屈な人物の動作の記述は
延々とへたなパントマイムを見せられているようで
なにを話しているのか、なにが目的なのか
まったく頭に入ってこない。



最後の朔夜のオチが乱暴ではないか?

申し訳ないが
とても「オチ」まで到達できない。



文章面で言えば、重複表現を減らしたつもりですが、改良すべきかどうかが気になっております。


ほとんど同じ表現で
しつこく「桜並木」を書いている。

娘が甘い声で言葉を投げ掛ける。
舌足らずな甘い声だ。
娘が甘い声で囁く。
娘が甘い声を出し、雲水の手に指を絡めて来た。

声がいつも「甘い」。

ある情景には1つのイメージ、
ある人物には1つのポーズしかない。

ストーリーの進行とともに
情景も人物も変化していくべきで
さまざまな角度から描写できるだけの観察力こそが肝要。

泉鏡花が書く女の肌は
常に「雪」だが、

お雪は細い音に立てて唇を吸って招きながら、つかつかと出て袂を振った、横ぎる光の蛍の火に、細い姿は園生にちらちら、髪も見えた、仄に雪なす顔を向けて、
「団扇を下さいなちょいと、あれ、」と打つ。蛍はそれて、若山が上の廂に生えた一八の中にかろく留まった。
滝太郎がその挙動を、鋭い目で角の屑屋の物置みたような二階の格子窓に、世をはばかる監視中の顔をあてて、はらばいになって見ていた、窃盗、万引、詐偽もその時二十までに数を知らず、ちょうど先月までくらい込んでいた、巣鴨が十たび目だという凄い女、渾名を白魚のお兼といって、日向では消えそうな華奢姿。島田が黒いばかり、透通るような雪の肌の、骨も見え透いた美しいのに、可恐しい悪党。

                    泉鏡花『黒百合』


天才的なリズム感で
文章の韻律の流れのなか、完璧に据わっている。
この「重複表現」が傷になったりはしない。

耽美的文体を雰囲気でまねようとする前に
正確な観察、心地よいリズムを心がけてはどうか。



私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


ぼろぼろの傘を被り、降り積もる桜には目もくれず、自分の足元を見ながら、ひたすら歩き続ける。

「傘」→ 笠?


女は大きく息を吐き、一際大きさ桜の木の根元に、どかっと腰を降ろした。

一際大きな


木々の合間に赤子の声が染み渡る。大桜は枝を揺らし、赤子の上に花びらを降り注ぐ。

「合間」
 不明。
 なにもない空間に? 空気に?


此処には赤子を捨てた女の鬼が住むと、そう言われている。

「そう」
 不要。


この桜並木は山間の谷間を切り開いて作った街道なのだが、山一つ分ほどの距離がある。

こんな「距離」の比喩がありえるだろうか。


老婆は、最もらしい顔つきで、有り触れた怪談をつらつらと語って聞かせる。

「最もらしい」→ 尤もらしい


あんな団子、始めて食べた。

初めて


懐から銀色に光る長煙管を取り出し、口に咥える。降り注ぐ花吹雪の中を、雲水はゆるいゆるりと白い紫煙を吐きつつ、歩き出した。

「ゆるいゆるり」
 ゆるりゆるり?

「白い紫煙」
 不明。


「鬼ねぇ、果たしてどうなることやら」
 つらつら、独り言を呟き、桜吹雪の中を歩く。頭上から梟の鳴き声が聞こえて来るが、姿は見えない。

「つらつら」
 念を入れて物事を考えたり、見たりするさま。よくよく。つくづく。
 私は「ぽつりと」あたりだと思う。


昔、この一帯には、小さな村が幾つもあったのだが、江戸の頃に地震に合い、村は一つ残らず、全滅してしまったと言われている。

「地震に合い」→ 地震に遭い


女は地面を叩き、思うままに言葉を紡ぎ、泣き続ける。

「言葉を紡ぎ」
 不正確。


男の問いに、椛が答えようとした時、甲高い狐の鳴き声が木々の隙間から聞こえて来た。椛は首を巡らし、泣き声の主を探すが、狐の姿は何処にも見当たらない。

「泣き声」→ 鳴き声


 男が背を向け、しゃがみ込む。おぶされと言う事だろう。椛は男の肩に両手を置き、背中に凭れ掛かる。
 「よっこらせ」
 男はゆっくり、立ち上がり、歩き始めた。
 「おじさん、おじさんの探してる人って、どんな人?」
 背中越しに椛が尋ねる。

「背中越し」→ 肩越し?


 この男の名は伊三と言う。流れ者の宿なしで、季節ごとに里を練り歩き、野良仕事や期間工をして、糊口を凌ぐ、ろくでなしの類だ。

別に犯罪者でも博徒でもないのに、かわいそうに。
立派に自活していると思うが。


店の主人に金を積んで、おせいを見受けしたいと頼んだのさ。

「見受け」→ 身請け (まちがいではない)


息を詰め、耳を塞ぎ、椛はその場にしゃがみ込み、瞳を伏せた。

「瞳」
 虹彩の中央の、光が眼球に入るあなの部分。瞳孔。



「あきって言うの。ねえ、煙管加えた男の人を見なかった?」

咥える、銜える。


行手にあるのは舞い散る桜の花弁、青く煙るの宵闇の中に白い花弁が雪のように降り続いていた。

なにがミスなのか探してごらんなさい。

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