【通信講座】 小説「初恋葬送」 講評
https://note.com/royal_pothos7457/n/n34d12849782b
ていねいな表現で書かれていて、しかも、叙事的に書き飛ばすところも心得ているのは好印象でした。
語り手が気持ち悪すぎて読みすすめるのが苦痛でした。
茶色みがかった男子にしては少し長めの髪、色白ではないけれどインドア派と分かる肌、髪と同じ色の縁の眼鏡、涼やかな目、主張の少ない口許、しゅっとした輪郭。
念願のラッシーの長台詞は酷いものだった。まず声が低い。中性的な容貌に似つかわしくない、声変わりのすっかり済んだバスボイス。しかも自信の無さからかぼそぼそ喋るので聞き苦しいことこの上ない。おまけに日本語訳も拙くて、先生に解説ちゃんと聞いてたの、と突っ込まれていた。私はなんだか居たたまれない気分で五分弱をやり過ごした。
内面になんの興味もないようです。
谷崎潤一郎、江戸川乱歩のように、気持ち悪いことを主題に気持ち悪く書くことはありえますが、そういうつもりでもなさそうなのがこわかったです。
そんな刷新されたはずの環境で、私はまた見つけてしまった。
さらさらの茶色みがかった髪、品の良い眼鏡、楚々とした細面、しなやかそうな痩身。もちろんラッシーではない。ここにも座席表はあり、それで名前が分かった。安野俊哉。
チェーホフの『可愛い女』のような構造かとも思いましたが、ちがいました。ひたすら容姿だけに関心があるようです。
ラッシーと同じ制服の、デフォルメしたグレイ型宇宙人にちょっと似た男子は、ぱっと笑顔になった。
身振り手振りを交えた宇宙人君の話は面白かったが、ラッシーの前に初老の先生が来ると私の意識はそちらへ滑っていった。
容姿で差別する語り手にはまったく共感できませんでした。
作者より
・情景描写や心情描写に不足はないでしょうか。
書きなれているとは思いましたが、過剰です。
うまいことを言って感心されようという欲望は捨てて、いまの3割くらいの力で素直に書いたらいいのではないでしょうか。
・初恋の喜びと未練、陰キャの執着が表現できているでしょうか。
喜んでいるかは分からず、未練は気持ち悪かったです。
陰キャというより、不快なエゴイスト、最悪のストーカーです。犯罪をおかすまえに「ラッシー」が死んでよかったとすら思いました。
・純文学とエンターテインメント、私にはどちらが向いているでしょうか。
ミステリー、時代劇、ラブストーリーが書きたいならエンターテインメントでしょう。
それくらいの目安しかありません。あとは、掲載される雑誌ですね。
いまや、分類は無意味になっています。
・今後どういう力(文章、キャラクター、展開など)を鍛えるべきでしょうか。
自分が書きたいものの王道をきちんとチェックし、模倣することからはじめたほうがいいでしょう。
あなたは自分が書きたいものを書けておらず、書けていないのに書いた気になっています。
・参考にすべき作品があれば教えてください。
性癖の気持ち悪さなら、谷崎潤一郎、江戸川乱歩でしょう。
恋愛ものだと、あまり思いつきません。『TUGUMI』、『ダフニスとクロエ』は純粋にうらやましくなりました。
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