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【通信講座】 小説「Time To Heal The Earth」 講評

構造がおもしろい。
最後の「海夏」のパートだけなら
凡庸な「Twitterマンガ」的スケッチにすぎないが
このように既存の形式を乗り越える方法があるとは思わなかった。


『【通信講座】 小説「美ら海に漂う愛」 講評』で

最近の小説に顕著な
「Twitterマンガ」化がとてもよく分かる。
設定、人物、状況はあるが
ストーリーがない。
関係性そのもの、雰囲気そのものを書こうとしている。
なにも起こらない。
この時間を切りとった理由が分からない。

と書いた。
たしかに「海夏」は「Twitterマンガ」の人物であり
ストーリーのない、変わらない、終わらない時間の住人だが
成長、変化、終幕に対する拒絶としての
「なにも起こらない」世界ではなく
開かれた未来、永遠性への視線を感じさせる。

「終わらない時間」を重層的に並置することで
効果的に「海夏」の「なにも起こらない」世界を
「なにも起こらない」ままに変質させている。
つつましく調和した構成ながら、時間、空間のひろがりがあり
「最近の小説」に対するパロディーとしても興味深い。

しいて言えば
コントロールしきれていない多幸感、躁的なスピリチュアリズム、色彩の奔流を
もう少し抑制することができれば
さらに作品の純度はあがると思う。

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