ベケット 詩抄 (1) Translated by Toshiya Kawamitsu
もっとおだやかゆるやかに
1
ことばは
あふれる こんなにも
なのに どうして うつむくの
摘んで 破棄するより いいでしょう
ひとり わたしは 荒野にいます
時間は 灰色 あなたは いない
まぶたを とじて 連れ去られ
いつでも それは 早すぎて
ノゾミのベッドの爪あとに
年上 アイは 骨 起こし
ユウコに似た目で 眼窩は 埋まる
いつでも それは 早すぎて
塗りつぶすなら 黒がいい
浮かんで 流れていく 愛を
叫ばれた 猫 九日 いない
九ヶ月ではありません
いいえ もう一度 よく聞いて
九の生命 つかっていません
2
いいえ もう一度 よく聞いて
あなたが おしえてくれないならば
わたしは まなぶこともなく
最後に もう一度 よく聞いて
もとめる 愛する 知る
いいえ
うそは 知らないふりをして
アイには 愛を
わたしに アイを
心臓の くさった ことばの缶のなか
アイ アイ アイ と リフレイン
トイレそうじを くりかえし
ア と イ 分離し すりつぶし
ただ こわい ただ
ただ こわい 愛 愛せない
愛される アイではなくて
アイではなくて
そう
知ることも
うそを 知ること
うそを つくこと
うそ つけたこと
みんなが アイを 愛したら
すべての愛は アイでしょう
3
愛が みんなを アイさないならば
Cascando
Translated by Toshiya Kawamitsu
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