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【通信講座】 小説「過去を編む人」 講評




『【通信講座】 小説「拝み屋雲水の事件簿 拝み屋雲水③ 花鬼」 講評』で

9万字の長編。
冗長すぎる。
10枚で書ける。
読書体験がこんな苦行であっていいだろうか。
14/131 までしか読めなかった。
耽美的文体を志向しているのは分かるが、あまりにもぎこちない。
一挙手一投足をいちいち書くので
遅々としてストーリーらしきものが進まず
非常なストレスを読者に感じさせる。

と書いた。


『【通信講座】 小説「月下の悪魔」 講評』で


個性的文章、定型を越えた表現を志向していながら
(未熟な作者の通弊だが)
作者の不正確で稚拙な文体は、まったくの無個性。
小説「拝み屋雲水の事件簿 拝み屋雲水③ 花鬼」とまったく同じ欠点があり
まったく同じように読みすすめるのが苦痛。
読者を感動させるために
作者が感動しながら書く必要はない。
感傷的な筆致で盛りあげることに急でありながら
遅々としてストーリーらしきものが進展しない。
つまらない、長い、古い、くだらない、複雑、難解
という小説への先入観は捨てなさい。
作者が読者として感動した小説のように書けばいいだけなのだが。
あなたが創作をこころざしたきっかけの小説が
このような文章でないことだけは断言できる。

と書いた。
読書体験がこんな苦行であっていいだろうか。


何度目か分からないが、安吾とエーコを引用しなければならない。

 小説としての散文の上手下手は、所謂文章――名文悪文と俗に言はれるあのこととは凡そ関係がない。所謂名文と呼ばれるものは、右と書くべき場合に、言葉の調子で左と書いたりすることの多いもので、これでは小説にならない。漢文日本には此の弊が多い。
 小説としての散文は、人間観察の方法、態度、深浅等に由つて文章が決定づけられ、同時に評価もさるべきものであつて、文章の体裁が纏つてゐたり調子が揃つてゐたところで、小説本来の価値を左右することにはならない。文章の体裁を纏めるよりも、書くべき事柄を完膚なく「書きまくる」べき性質のものである。

坂口安吾『ドストエフスキーとバルザック』
(性行為の描写も含んだ)映画のなかで、登場人物が車やエレベーターに乗り込むとき、言説の時間が物語の時間と一致するかどうか確かめるのです。フローベールはフレデリックが長い旅行をしたと言うために一行を使いますが、普通の映画のなかでは、登場人物が飛行機に乗ったかと思うと次のカットですぐに到着しているのにお目にかかります。ところがポルノ映画では、だれかが一〇ブロック先まで車に乗っていくとなると、車は一〇ブロック—現実の時間で—移動します。だれかが冷蔵庫を開けてテレビをつけてソファで飲むためビールを注いだとすると、みなさんが家でそれをするのにかかるのと同じだけ時間がかかるのです。

ウンベルト・エーコ『小説の森散策』


この機会に申し上げるが
物語構成を学んで、自分の個性が毀損されると少しでも思っているなら
それは、ぜったいにありえない。
未熟な作者の不完全な作品は
すべて、同じように退屈で、つまらない。
個性など皆無。
常に、「見聞きし考えたことをすべて書く」。
過去の講評の引用以外に、あたらしいことを言う必要すらない。



(作者より)
♢「過去を編む人」に関して
・これは小説と呼べるのか(もし小説であるとすれば、純文学と大衆文学のどちらに分類されるのか。また、区別は必要なのか)

これは「設定」であって
それ以外のなにかではない。

・説明文が多すぎる(単調である)気がするが、最後まで読み進めるのが苦痛であったかどうか

苦痛だった。

・本作のテーマは”生きることはままならない”に設定して書き進めたつもりだが、この作品から主題のようなものは読み取れるかどうか

不可能。
ひたすら退屈な時間が流れているだけ。

・猫の描写は不要か

まるで必要なことがどこかに書かれているかのようだ。
不要。


・描写が自己陶酔に陥っていないかどうか、またその線引きはどう見極めるとよいか

すべての細部は
主題とひびきあうときにのみ精彩をはなつ。


・「先生は」「人間が」など、主語が多すぎて読みにくかったかどうか、また、「言った」等の述語が単調過ぎるかどうか

どうでもいい。
そんなことを気にする段階ではない。


・会話文自体、また会話文のつながりが不自然に感じられたかどうか

どうでもいい。
そんなことを気にする段階ではない。

・一人称の文章として、違和感はなかったか

叙述トリックめいた技法になんの意味もない。


・一人称(鳥)の語りに過不足はなかったか

まるで必要なことがどこかに書かれているかのようだ。


・どうしてもハッピーエンドを想像できなかったのでこのような終わり方にしたが、作品として破綻していないかどうか

これがハッピーエンドだとも
それ以外のなにかだとも思わなかった。

・なぜこんな話を書いたのかと、読んでいて退屈であったかどうか

退屈だった。


・その他、致命的な欠陥があれば、ぜひ

「見聞きし考えたことをすべて書く」をやめる。
もっとも退屈で、もっともつまらない舞台設定をしている。
家から出てみてはどうか。


♢その他、小説を書く、ということに関して、機会があればぜひお聞きしてみたいこと
・私の文章(短いですが)に文体の兆しのようなものは見られたかどうか

絶無。


・(たいへん稚拙な質問として)タイトルやワンシーンから連想して文章を書きはじめる場合、テーマはどこからやってくるのか

その「タイトル」や「ワンシーン」を見つめつづけるしかない。
書くに値する「タイトル」、「ワンシーン」なら
どのように書いてほしいか、語りかけてくるだろう。


・私がこれから「小説」を書けるようになるために、今後とくに練習が必要な点

読書する。

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