邦楽『Ranunculas』(DIR EN GREY) 原点をやることの凄み
作品を重ねるごとに生じる進化。それを追いかけ、味わう楽しみが、音楽にはある。
ただ進化とは言っても、一概には言葉通りの「進化」とは言えないこともある。聴き手によって感じ方は違うし、結局どこまでいっても評価は好き/嫌いに左右されるから、進化ではなくただの「変化」であったり、場合によっては「退化」と捉えられることも少なくはない。作り手は大変だよね。
そんな中、そのキャリアを通して激しい変化を繰り返してきたバンドがいる。
DIR EN GREY、彼らだ。
初期はコテコテのV系。メジャー1st『GAUZE』なんかは確かYOSHIKIがプロデュースしてたからか、時代を感じるしオモチャっぽい音楽だ。メロディが良くてたまに聴きたくなるけど。
けど2ndの『MACABRE』からいきなり様子が変わってくる。とにかくおどろおどろしい。だけど、V系にありがちなエログロとも違う。神(宗教・信仰)や古今東西の民族性みたいな要素がふんだんで、独特かつ圧倒的な世界観を誇っている。メンバーの薫曰く、この当時はキングクリムゾンをはじめとするプログレをよく聴いていたとか。初めて聞いたのは中学生の頃だけど、衝撃すぎて恐怖を覚えたことを覚えている。音楽で恐怖を覚えるってなかなかない。大好きなアルバムです。
その後もアルバム毎にいろんなアプローチを繰り返してきた彼ら。時にはあまりの振り幅に、ついていけなくなったことも……(今となっては好きです)。
求められているものではなく、自分たちがやりたいことを試行錯誤しながらやっているんだろうなあ。かっこいい。
そんな彼らの曲で、改めて衝撃を受けた曲がある。10thアルバム『The Insulted World』のラストを飾る『Ranunculas』だ。
なにが衝撃かというと、この曲の存在そのものである。
悲しくて綺麗なメロディ、激情的なボーカル、絶望の中の希望を叫ぶ歌詞、シンプルで力強い演奏とアレンジ……。これほどのキャリアを積み、多彩な作品を産んできた彼らが立ち返ったのは、自分たちの原点とも言えるところだった。しかも、こんな最上級の曲で表現してしまうのは本当にすごい。ここ数年で一番好きな曲だ。ぜひ多くの人に聴いてもらいたい。
彼らの作品はいつだって刺激的だ。その音楽に触れるとき、心のそこからワクワクする。次はどんな驚きと感動を与えてくれるのかと。