見出し画像

成果は、能力というよりは「強いつながり」

「能力があれば結果を出せる。」

それって本当かな?と思うことがある。

自分の目から見て、そんなにすごくないのに成果を出している人もいれば、めちゃくちゃすごいのに成果を出せていない人もいる。すごかったのに転職したら普通になっちゃう人もいるし、逆もいる。ワンチャン、結果と能力は意外と関係ないのではないか。成果を出せていない僕としても、ぜひそうであってほしいw

そう思って調べてみたところ、結果に効く、ある重要な要素「A」を発見したもちろん「A」は能力ではない。僕が結果を出せていないのは、「A」のせいだ。きっとそうだ。

「A」とは何か。それは強いつながりである。

社会学者マーク・グラノヴェッターはStrength of Weak Tiesという論文で、人間のつながりを、弱いつながりと強いつながりにわけ、それぞれの特徴を論じた(と、入山章栄さんの本「世界標準の経営理論」に書いてある)。その論文は、価値が低くそうな弱いつながりの重要性を示した点で革新的なのだけれど、今日お話ししたいのは強いつながりの方だ。強いつながりとは、接触回数が多い・一緒にいる時間が長い・情報交換の頻度が多い・心理的に近い・血縁関係に近いなどの関係を言う。「強いつながり」は「強い人脈」と読み換えても良い。

強いつながりがあると、そこに信頼関係があり、駆け引きがない本音の情報が行き交うので「仕事が鋭い」。お互いにクセや考え方を知っているので「仕事が早い」。強いつながりは「輪」を作りやすく、その中で情報が巡り、推敲されるので「仕事が深い」。要は、強いつながりは実行力につながる。「人脈は大事だよ」とビジネスパーソンなら2億回ぐらいは言われていると思うけれど、グラノヴェッター的には「強い人脈は、実行力につながるから大事」となる。(ちなみに「弱い人脈は、イノベーションにつながるから大事」だそう)

ではどうやって強いつながりを手にするのか。

まずは「似たもの同士」。人は本質的に自分と似た人とつながりやすいというホモフィリーという性質を持っている。そのため、自分と似ている人が多いと強いつながりはできやすい。性別、趣味、年齢、大学、国籍、などなど...。

次は「類は友を呼ぶ」。親友の親友とは仲良くなりやすいように、強いつながりは次の強いつながりを生みやすい。自分と強いつながりを持つ人から紹介された人との方が仲良くなりやすいという経験はあなたにもあるはず。

そして最後に「結果」。実行力がある人は成果を出しやすく、さらなる強いつながりを作りやすい。なぜなら、人も仕事も成果をだしている人に集まってくるから。

このように、強いつながりは次の強いつながりを生みやすい。逆に言うと、自分と似ている人が少ない環境では、最初の強いつながりを作りにくく、成果を出しはじめにくい。例えば、女性が少ない職場では、女性は能力に関わらず、実行力を発揮しにくく、成果も出しにくいと、ざっくりとした傾向としては恐らく言える。

ちなみにグラノヴェッターのすごいところは、弱いつながりがイノベーションの源泉だと発見したところにある。強いつながりは実行力を高めるが、似た考えを持つ集団になるので、新しいものを生みにくい。あくまで実行力とは深化(鋭く・早く・深く)であり、イノベーションに必要なのは緩く・遅く・浅く、いろんなアイデアを模索する探索である。イノベーションは、実行力とはある意味で相性が悪いのである。

世界標準の経営理論では、チームに「面白いんだけど実行力が足りない」人がいたら、実行力のある協力者(人脈おじさん)をつけることで、イノベーションを生み出しやすくなるのではないかと書かれていた。なるほどなと思った。

...というわけで、成果が出ない時に、自分の能力の低さを責める前に、一度「強いつながり」を十分に作れているか、作る努力をしているかを振り返ってみようと思う。

(最後に補足:グラノヴェッターの論文では、たしか「社外の」人脈を分析対象としているけれど、僕のこの記事では、その考えを「社内の」人脈に適応した。そのため、もしかしたら齟齬があるかもしれない。あったらごめんなさい!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?