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亀屋良長さんのにぎわいを食べて

後祭の巡行が終わり、私は亀屋良長さんへ向かっていた。
友人との待ち合わせのためだ。
せっかくなら祇園祭の時期にも販売されるちまきを購入したいと考え、店内へ入った。残念ながらちまきの姿はなかったが、すでに甘いものを食べたい気持ちになっている。
代わりのものを選んでいると、「にぎわい」という生菓子が目に入った。
表面に八坂さんのご神紋である木瓜が押されているから、祇園祭に因んだお菓子なのだろう。ちょうど良いように思われた。

帰って調べると、お囃子に使う鉦のバチの下げ緒が揺れる様を表現したものだという。
錦玉と小豆入り餅羊羹の2層になっていて、錦玉の部分に緑の線と赤い点があしらわれている。これがおそらく下げ緒を模しているのだろう。
食べてみると思いのほか軽い。
錦玉はもちろんだが、餅羊羹の粒々とした舌触りが涼やかだ。
それでいて、名の通り賑わいを思わせるぎゅっと詰まった確かな存在感があり、そのギャップが楽しい。
餅羊羹というものをはじめて食べたのだが、とても好きだと思った。普通の羊羹とも水羊羹とも違う。桜餅のようなつぶつぶ感があって、とても好みに合った。
甘すぎないのが良い。
甘いものが食べたいと言いつつも、夏の最中はこってりと甘いよりは軽さがあるものの方がちょうどいいと思うのは私だけだろうか。
このにぎわいには、そんな軽さがあった。
それこそ祇園祭のお囃子の鉦の音色を思い出すような。

食べながら、ここまでの祇園祭が思い起こされた。今年は、前祭の鶏鉾の車輪しかり、蟷螂山のからくり人形の腕しかり、後祭の鷹山の屋根しかり、何かと起きる山鉾巡行であった。
しかし、都大路の厄を集める巡行の意義を考えれば、役割を果たしたということなのかもしれない。
後祭巡行の最後には、大雨に見舞われた。
何を信じるかは人それぞれだと思うが、雨が降ることが悪い意味とは限らない。恵みの雨ともいう。
各山鉾が懸装品を守るため、ビニールかけ等見事な対応をされていた。
その後の還幸祭は恙なく執り行われたという。

祇園祭は神事であり、神への祈りだという認識でいる。
しかし、その祈りをもって起きたことを受け取るのは、人だとも思う。
どのように受け取るのか、それはこれからだ。
まだ祇園祭は続く。しかし、神輿渡御および山鉾巡行が終わった今、ひと段落ではあると思う。
そのようなタイミングで、このにぎわいをいただき、祇園祭に思いを馳せられたことは幸いであった。
とても美味しかったので、またぜひ食べたいと思う。

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