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『Ark:Survival Evolved』はオープンワールドとサバイバルの到達点


「サバイバルゲーム」に飽きている人はいるだろうか?

原因はさておき、文明レベルが著しく下がってしまった世界に放り出され、設定の割に主人公が簡単に得られる物は多く、中盤以降の装備が整った状態ではほぼ負け知らずで界隈を闊歩しているような作品……

もちろんよくできたサバイバルゲームだって存在している。けれど、いつからか僕らは「サバイバルゲーム」という肩書を見た瞬間に、軌道に乗るまで面倒臭いことをさせられるゲームだという認識を得てしまっていないだろうか?


何故、いきなり先人たちへの根拠のないDISから入ったかというと、今回紹介する『Ark:Survival Evolved』が、筆者が感じていた既存の「オープンワールド・サバイバルゲーム」への偏見をすべて吹き飛ばしてくれたからだ。

恐竜たちのいる世界に丸裸で放り出されるという、いわゆるサンドボックス型の作品なわけだが、このゲームは一味も二味も違う。なんというか、すごいのだ。



●ファーストインプレッション

起き上がったのはとある島の浜辺。主人公は丸刈りで、服もろくに着ていない状態。5W1Hのすべてがわからないまま、大自然のなかを悠然と闊歩する恐竜たちを見つめている。

食糧メーターと水分メーターらしきものはある。どんどん減っていく。水は河で補給できるが、飯のほうはその辺のベリーではあまり足しにならない。どうしよう。トリケラトプスが目の前をのしのしと歩いている。狩りをしようにも、素手ではこちらが狩られる側だ。

何か武器を作らなければと思い、とりあえず手近な木を拳で殴ってみると、指が血だらけになって藁や木材が採れた。HPが減っている。この時点で「このゲーム、ヤバいのでは?」というワクワク感が込み上げてきている。木を素手で殴って資材を採る。血が飛び散ってもひたすら殴る。なんなんだこのゲーム。

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そうこうしているうちに、空腹値がマックスになり、HPが急激に減り始めた。何か食べるもの、食べるもの……と虚ろな眼で浜辺を彷徨っていると、草食恐竜の糞が見つかった。これだ、これしかない。栄養には変わりない。まだ暖かい恐竜のウンコを、夢中で喰らう。


死んだ。

当然だ。食えるわけがない。


ここで筆者はコントローラーを置き、「とんでもないゲームに出会ってしまった」と打ち震えた。

「レッドシーズプロファイル」で無策のまま遠出し、ガソリンが尽き、有能なサイコメトラー刑事のキャラのはずなのに、妙にリアルな縮尺のアメリカの片田舎を薄暗くなるまで延々と歩かされ、遂に倒れた記憶が想起される。

以降、筆者は人類には(史学的に)早すぎる世界でサバイバルをし続けることになる。



●まごうことなきサバイバル


『Ark:Survival Evolved』は本物のサバイバルゲームである。

たしかに藁であれ拠点を作れば、視界の悪い夜を越せ、暖を取り、有事にはリスポーン・ポイントとして活用できる。

だが、そんなものはAIの気まぐれで近くに肉食恐竜の群れがポップすれば、頭突きひとつで粉々にされる。フレンドを招くために意匠を凝り、製作に何時間かけていようと、一瞬でぶっ壊される。

命からがら逃げてきた高台から、自分たちの拠点が恐竜に壊されるのを眺めたあの夜、人類は悲哀という感情を覚えたのだ。


たしかに武器やステータスは次第に強くなる。斧や槍や弓矢しか作れなかった人類も、鉄鋼を覚え、アサルトライフルを手にする日が来るのだ。

だが、鉄鋼石が取れるのは大抵危険な山道であり、そもそも施工盤を動かすにはガソリンがいるし、そのためには海底で原油を掘る必要がある。サバイバルにお膳立てなどない。

死にたくなければ、DIYである。

DIY or DIEである。


それでもひとつ、ひとつずつ。

数多の死(ちょっとした河を泳いだらピラニアに集られて死ぬ、卵を拾うとキレた草食恐竜に踏み潰される、拠点と食糧を失った仲間たちのために焼身自殺して自らが焼肉となる)を経験し、プレイヤーは昨日よりも少しだけ強くなっていく。


恐竜を捕まえ、武器を整え、拠点を作り直し、菜園を整え、灌漑を引っ張り、聳え立つオベリスクの秘密を解く。


そして、ついにティラノサウルスの背に乗ったとき、人は知るのだ。

我々こそが、食物連鎖の頂点であると。

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●余談

こんな文量では、『Ark:Survival Evolved』は到底語り尽くせない。筆者はまだ七つあるマップのうち、基本のマップを50時間~遊んだほどだし、それだけでも割愛したエピソードは死ぬほどある。

海底で原油を掘るためにメガロドンと戦ったベールゼブフォの墓をみんなで作ったこと、その墓のお供え物として全員で脱糞したこと、ゴリラに跨って洞窟のフンコロガシを探しに行って死にかけたこと、ウンコを投げつけてくる恐竜から命からがら逃げてきたこと、などなど。

思い出すのはウンコのことばかりである。


さあ、君も一緒に『Ark:Survival Evolved』で真のサバイバルを始めよう。

レベル差とか始める時期なんて関係ない。大型肉食恐竜を相手に、人間一人が鍛えたところでどうしようもないのだから。






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