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文三から文学部へ

はじめに
 こんにちは。文学部日本史学専修に進学しました、東大特進スタッフの小山大貴です。文三→文学部という、ありがちな進学選択ではありますが、①文三という科類は、ほとんどの学生が特定学部に進学する文一、文二とは異なり進学選択事情が複雑であり、②文学部という学部も 10 のコースに分かれている、といった点で受験生にとってはわかりにくいところも多いかと思いますので、そうしたことも含めてお伝えできればと思います。
 また、先に書いておきますが、自分は大学入学時には既に志望学科を決めていたので、前期教養の過ごし方は、よくある「一点でも多く点数を取る」というものとは少し違っています。特殊な例です。こういう人間もいるんだなあ、という風に思って読んでいただくのがいいでしょう。


なぜ文科三類に入学したのか

 自分は元々歴史、特に日本史が好きで、大学は法学部や経済学部ではなく、文学部に進もうと決めていました。いつからこう思うようになったかは定かではありませんが、高 1 初期の模試を探し出して志望校・志望学部を見ると文学部が並んでいたので、中学時には既に文学部進学を決めていたのだと思います。中学生の時に日本史研究に関わる本を読んで、一般的に無味乾燥な暗記科目だと思われている歴史に、「研究する」という活きた側面があることに興味を持ったのが始まりだったと記憶しています。
 しかし当初の第一志望校は東大ではなく、京大でした。まだ大学受験のことについてよく知らなかったので、「歴史=京都」というイメージがそうさせていたのだと思います。東大に変えたのは、高 2 の10 月頃でした。いよいよ志望校を決めなければいけない、ということで大学の情報を調べたところ、東大の方が良さそう、という結論に至ったためです。また、やりたいことは文学部であっても、文学部は就職が不安という話を聞いたため、進学選択が魅力になったという面もあります。そして科類について調べたところ、文学部といえば文三とのことだったので、文三を第一志望にしました。

○文三→文学部 前期教養 (1 年 S セメスター〜 2 年 S セメスター ) 

進学選択に関係のある期間は 1 年の S セメスター〜 2 年の S セメスターの一年半です。ここでは、その期間について書いていきます。
 文科三類に入学した頃には既に、「文学部に進みたい」という漠然としたビジョンは、「文学部日本史学専修に進みたい」という明確なものに変わっていました。進学したい学科が決まったら、まずは底点(最低点)のリサーチです。駒場一号館には進学情報センターという所があり、そこから近年の得点分布が閲覧できるのですが、日本史学専修は底割れ(定員割れ)の年もある学科で、競争率は高くなく、70 点あれば大丈夫ということがわかりました。ちなみに 70 点というのは東大生の平均より少し下で、毎回授業に出て勉強していれば割ることは考えにくい数字です。ということで、前期教養は、「前期教養の勉強もある程度しつつ、後期課程のために日本史の勉強も始める」という方針をとることにしました。前期教養には歴史系の授業もあるので、そこで高い点数を取りに行けば、(正直必修科目がそこまで点数が高くなくても)目標点数に達することが可能だったという事情もあります。
 授業は自分の好きな科目だけ取れるわけではありません。先に少し触れた必修科目や、準必修の科目( 法、経済、心理、歴史など ) というものがありますし、自由に選べる総合科目も、理系科目の単位を取らないと進学できないようになっています。
 1 年の S セメスターでは、英語 2 コマ、第二外国語 3 コマ、初年次ゼミナール、情報など計 8 コマが必修でした。また準必修の社会科学・人文科学も
計画的に取らないといけないので、自由に取れるのは数コマでした。(部活などで多忙だったため、限界まで履修はしませんでした。)理系の授業も計画的に取らなくてはならない関係で歴史系の授業を 3コマ取ることになりました。正直必修科目はあまり興味が持てないものが多かったので、最初の方針通り、必修の失点を歴史で挽回する形でした。
 1 年の A セメスターは、必修授業は 5 コマに減ってはいましたが、歴史系の授業があまり取れなかったのと、理系科目の単位を取らなくてはいけなかったこともあって日本史の勉強に傾倒してしまい、単位こそ取れたものの点数が芳しくありませんでした。
 ここで少し 1 年の A セメスターについて補足です。2 年の A セメスター終了時に前期課程の単位を残していたら留年なので、(「背水の陣」状態になりたくありませんから、)基本は 2 年の S セメスター中に前期課程の単位全取得を目指します。そしてそのためには、苦手な科目、落としそうな科目(文系にとっての理系科目など)は、安全のため 1 年の Aセメスター中の単位取得を目指したいわけです。こういうわけで、1 年は S セメスター:必修、A セメスター:苦手科目取得、といった形で、履修と自分の興味があまり一致しない学年になりました。もちろん多様な科目に触れられるのは前期教養の利点で、前期教養は必要なのですが、最初から進学先を決めている自分のような人間にとっては、自分の好きなことを勉強するための時間を取られている気持ちがしました ( 笑 )。
 さて、進学選択に関わる最後のセメスター、2 年の S セメスターです。このとき、残す単位は 6 単位(3 コマ)だったので、かなり自由に履修ができ
ました。このセメスターではかなり歴史の授業を多めに取り、成績を例年の底点より 5 点ほど高い点数に引き上げることができ、2 年 S セメスターは、前期課程修了条件達成、文学部日本史学内定という結果で終えました。


進学後の様子(2 年 A セメスター〜)

 東大の学生は、最初の 2 年間は前期教養の所属ですが、2 年の A セメスターから「(後期課程への)持ち出し科目」という名目で、進学先の授業を受けます。これは任意ではなく、この時期に取るべき必修授業もあります。取りこぼした前期教養の単位を取る期間でもあるわけですが、自分は 2 年の S セメスターで前期課程修了条件は満たしたので、進学先の授業を心置きなく履修することができました。
ちなみに、これを書いているのは 2 年 A セメスターの全試験・課題を終えた 2 月中旬です。
 A セメスターでは日本史の授業 5 コマ(取れるもの全て)、他学科の授業 2 コマ、史学概論(必修)を取り、1 コマが対面オンライン併用、他は全面オンラインでした。ゼミは 3 年からですので、まだありません。そういうわけで学科の学生間の交流は未だありません。授業に関しては、前期教養の歴史系の授業が概説・研究史の説明程度で留まっていましたが、ほとんどの授業で史料が配られ(史料しか配られない授業も!)、歴史学の勉強が始まるんだな、と思えるものでした。内容も高度で、単なる授業の
復習だけではなく、授業と並行して関連書籍を自分で探して読んだりしていました。大変ですが、そういう勉強をしたかったので、今は非常に充実しています。
 また、評価方法は基本的に試験らしいのですが、この状況ということもあり、全てレポートに変更になりました。新しい関連書籍に手を出しながら授業内容が深められるのでやっていて楽しかったです。先生にとっては読むのが大変かもしれませんが、ぜひ来年度以降もレポートでお願いしたいと思っています。


文三の進学選択

 文三の進学選択については、科類紹介ページでも書かれていると思うので一部説明が重複しているかもしれませんが、同級生の進学選択を多く見てきた立場から書けることもあるので、少し文三の進学選択について書きたいと思います。文三にいる人の進学先は、大きく分けて 3 種類です。①法学部・経済学部(それぞれ文一・文二が主)、②教養学部(文三に優先的に枠が割り当てられているが、それでも最低点が高い)、③文学部・教育学部。これが文三の進学選択はわかりにくいであるとか複雑だとか言われる理由です。①、②は進学に高い点数を要求されますので、全科目ムラなく高得点を取らなくてはいけません。つまりここで述べたような前期課程の
過ごし方をしているとダメだと言うわけです。文三から①、②の学部に行った友人は、素直に尊敬します。高得点を取る人の前期課程の過ごし方は、鹿子木さんが体験記を書いていると思いますのでそちらをご覧いただくのがいいかと思います。③は、学科ごとに最低点にムラがありますから、事前に調べるのがいいでしょう。例えば文学部では、毎年定員割
れの学科もあれば、社会心理のような、最低点の高い学科もあります。前者のような学科志望の人は、自分のように点数にはあまりこだわらず、好きな勉強をしている人も多いですね。

 以上、自分の前期課程 2 年間について、皆さんがイメージできるよう(いささかだらしない面も含め)率直に書いてきました。なお、最初に書いたように、これはいささか特殊な例ですので、自分のように初めから進学先を決めているわけでなければ、全科目バランスよく勉強し、点数を取ることを大事にしてください。文三の進学選択は、ギリギリまで進学先に迷う人も多く、文科の中でもシビアです。点数の高さは進学先の多様性に直結しますので、進学先を悩んでいるうちは、できるだけ高い点数を取っておきましょう。
 色々と書いてきましたが、前期教養の 2 年間、そして進学選択という制度は、自分が本当にやりたいことを見つけ、深めるためには有益なものだと思います。このような東大の制度をうまく活用し、いい学び、いい進学ができるよう祈っています。ここまで読んでいただきありがとうございました。


東京大学文学部日本史学専修
小山 大貴(2019 年度入学)

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