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2024年8月実施 第2回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【生物】


全体概観:標準

神経系、植物の機能、動物の発生に関してそれぞれ問われました。全体を通して中問により難易度の差が大きく、得点すべきところで確実に点を取り、考察すべきところで考察するという時間の使い方がいつもにまして重要なセットになっています。夏が終わり、これまで得てきた知識を頭の中でまとめていつでも取り出せるようにすること、長期記憶として定着させることを目的にしていく良い機会となったでしょう。

第1問

Ⅰ:標準

神経系の構造がテーマであり、細胞内輸送とシグナル伝達の両方に関して問われました。興奮の伝達を流れとして押さえておきましょう。
A:神経系に関して、各器官のつながりと併せてしっかり覚えておきましょう。
B:漢字6文字で、という条件が特徴的でした。これを機に進化に関しても復習したいです。
C:細胞内輸送に関する問題です。レールとなる細胞骨格およびそれと相互作用するモータータンパク質を、セットで確認しておきましょう。神経細胞の軸索の中では、シナプス末端へ向かう輸送をキネシンが、細胞体へ向かう輸送をダイニンが担っています。
D:実験結果のグラフを読み取ることができれば容易に解答できます。
E:実験2と3の結果から推察することが求められているので、シナプス後電位とグルタミン酸受容体に注目しましょう。シナプスによる興奮の伝達の仕組みを頭に入れておくことが重要です。
F:興奮性のシナプスの代表例であるグルタミン酸について、それが神経伝達物質として用いられる流れを把握できていることが必要です。今回は長期記憶の形成であることを踏まえ、ニューロンの変化を考察しましょう。

Ⅱ:やや易

マウスの記憶に関する実験データが示され、それを考察していく問題です。状況を理解さえできれば、迷うことなく正しい答えを導き出せるでしょう。
G:グラフを見た際、5日目から7日目にかけて大きくプラットホームに辿り着くまでの時間が伸びているという点が目を引くでしょう。長いリード文もポイントに注目することでわかりやすく理解できます。
H:実行機能の説明が伏線になっていたといえるでしょう。「滞在時間」という尺度は不自然なようにも思えますが、神経科学の研究でも一般的に使用されているので、今のうちに慣れておきたいです。

第2問

Ⅰ:やや難

植物に関する知識及びそれをもとにした実験結果の考察が求められています。忘れてしまいそうなポイントも多く、もどかしい思いをした人もいるでしょう。表で覚えたいような項目が並んでいます、今一度確認しておきましょう。
A:植物の光受容体として押さえておきたいフィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンの3つについて基本的な知識を問う問題でした。思い出せなかった人は復習しておきましょう。
B:植物の伸長成長、肥大成長についてそれぞれ自分で説明できるようになっておきたいです。用語をヒントとして使いながら組み立てていきましょう。
C:植物ホルモンに関する正誤問題といえます。細かな注意を必要としますが、一度覚えてしまうと安定して得点できる形式なので大事にしていきたいです。
D:リード文、特に各転写因子に関して説明されている部分を押さえ、転写因子同士の相互作用をつかみましょう。
E:緑化に関連する因子を把握しましょう。転写因子Cが鍵となります。
F:実験の内容と直接的な関係はない、植物の機能の意義を問う問題です。Eで詰まってしまった場合も無関係に解答することができますし、内容としても難しくはありませんでした。

Ⅱ:易

Ⅰに引き続き植物に関する問題ですが、Ⅰと異なり、この中問では実験を正確に分析できれば答えに直結します。基本的な知識のみが要求されるタイプですので、確実に点を重ねにいきましょう。
G:実験3と実験4のみの結果から考えなければならないので、気孔に注目する可能性が極めて高いでしょう。シンプルに考えることで、葉から取り込まれているという結論に達することができました。
H:Gと同様に、実験4と実験5のみについて考えることで正解に辿り着くことができます。変異体Cが「転写因子Cの発現を抑制した」変異体であることを見落としてしまうと全く逆の結論が導かれてしまうので、十分注意しましょう。
I:転写因子Cの問題点が示され、代替策を考察する問題です。小問G、Hの丁寧な誘導に従って導入する遺伝子を考えましょう。

第3問

動物の発生過程の理解を問う問題です。試験時間中にはウルトラバイソラックス遺伝子に圧倒されそうですが、その後には答えやすい問題もあるので落ち着いて答えたいです。
A:構造決定の因子について名称と働きを押さえましょう。ホックス遺伝子群はホメオティック遺伝子群と相同の遺伝子グループであり、遺伝子の並びが似ているだけでなく実際に体で発現する場所もよく似ていることが知られています。
B:ウルトラバイソラックス遺伝子は翅形成の制御に関わり、Ubx変異では平均棍が翅に置き換わって翅が4枚になります。専門的な知識ですが、押さえておきたいです。
C:図3−2、図3−3を見ることで、背側から腹側にかけてどのように分化しているのかまとめられます。
D:Cに続き、図3−3の内容を説明する問題です。翅原基、近位部の脚原基、遠位部の脚原基に関してそれぞれ述べられると良いでしょう。
E:遺伝子A〜Dについてそれぞれの発現領域をまとめ、相互作用を発現領域から推測しましょう。パズルのようなイメージです。
F:Eに続き各遺伝子についてまとめる問題です。ステージ2における分化と比較しなければならないという点で難易度は高いといえるでしょう。
G:進化の道筋を辿る方法に関する問題です。生物の形態学的特徴からの分類、ゲノム比較による分類のそれぞれについてもう一度確認しましょう。
H:収束進化、相似器官についてはよく注目されるトピックです。例とともに確認しておくと役に立つ時が来るかもしれません。

Ⅱ:やや難

系統分類や濃度勾配に関する、高度な思考を要請する中問でした。最後の設問ということもあり、じっくり取り組めなかった人が多いかもしれません。復習の際に一度腰を据えて考えてみてほしいと思います。
I:類縁関係と系統に関する問題です。基本的な考え方そのものについて問われているので、難しく考えすぎなければすぐに答えられたでしょう。
J:濃度勾配の形成がポイントとなります。発生学の分野となり、苦手にしている方も多いかもしれませんが、今回の例に基づいて考えてみましょう。
K:変異体と濃度勾配の関係を正確に把握しないと正答できない問題でした。難易度は高く、遺伝子発現について慎重に分析することが求められます。正しく答えられた人は自信を持っていいでしょう。

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