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第2回東大本番レベル模試 物理所感

総評:標準

第1問が力学、第2問が電磁気、第3問が熱力学というオーソドックスな構成でした。最初に問題に目を通したときは見慣れない関数のかたちをしたグラフなどが見えて難しそうという印象を持ったかもしれませんが、一問一問解いていく分には基礎がしっかりしている方なら一定の点数を積めたのではないでしょうか。「基礎がしっかりしている方なら」と書きましたが、そうでない方もまだまだ諦める時期ではありません。もう夏の終わり、されどまだ夏の終わりです。学校での未習範囲がある方はそれを着実に身につけていきながら、模試に出題されてきたような既習範囲で弱いところがあれば復習・問題演習などを通して固めていきましょう。復習をするうえで、解答解説冊子の解説はとても充実しているので正解できた問題についても読んでみることをおすすめします。

第1問:標準

Ⅰ:やや易

(1) :力学的エネルギーの保存則です。ここは落とせません。当然保存則を立式するだけなら簡単ですし試験時間中はそれで十分なのですが、せっかくなので復習の際は少し立ち止まって、力学的エネルギー保存が成り立つ条件をこの問題設定が満たしていることも確認してみましょう。この少しの思考の確認が揺るぎない基礎につながるはずです。
(2): 円運動の定番問題です。少し気をつけたいのは「小球が台に及ぼす垂直抗力N」という聞かれ方で混乱しないかというところです。小球の運動について考えたいので「台が小球に及ぼす力」が思考対象でそれは先述の垂直抗力の反作用、つまり中心へ向かう向きの大きさNの力である、と冷静に対応してもらいたいです。
(3) :単純なモーメントの計算です。力を鉛直成分と水平成分に分けるという方法が計算しやすいですが、単純にEから作用線までの距離を幾何で求めてそれにNをかけても当然同じ結果が出てきます。先に思いついた方でさっと計算しましょう。(4)で与えられている三角関数の公式の左辺が登場することで安心したいものです。
(4) :回転しない条件をモーメントの式で立て、角度を動かしてもその不等式が成り立つような条件を求める問題です。こういう数学的処理こそ確実に行いましょう。

Ⅱ:標準

(1): 穴埋めの誘導に従い条件式を立てていく問題です。相対速度や慣性力など立式段階で間違えやすい項目に注意しながら事実を書き並べていきましょう。
(2) :(1)で出した条件式をM=m、u=0で整理する問題です。正確に処理を実行したいものです。
(3) :見慣れないかたちのグラフでとっつきにくいと感じ飛ばした方も一定数いるのではないかと推察します。限られた時間のなかで得点を最大化するためにはそのような瞬時の判断も大事になってくるのは言うまでもないですが、ここまで選択肢の形がばらばらだと、ざっくりとした定性的観察から答えを絞り込むことができるのではないかと活路を見出すことも不可能ではありません。0から始まるか否か、半周期(Bに戻って来るタイミング)で0になるか否か、1/4周期(右端にいるとき)で最大値をとるか否か、のような特徴的で考えやすい“きりのいい”タイミングを見てみるとよいと思います。

第2問:やや難

Ⅰ:標準

(1):  xが絡まない極端な場合の問題です。落ち着いて取るしかありません。
(2):  穴埋めに従って計算式を立てていく問題です。量が多いだけでなく、微少量が絡むことによる近似計算もあり、少し戸惑う方もいたかもしれません。ただ扱っている物理公式自体はコンデンサーの基本的なものしかないので、与えられている指示と近似に従って落ち着いて淡々と手を動かしていけば答えが順に求まっていくはずです。正負の扱いが少し厄介ですが、最後の力Fが正の値に戻ってきて、「キ」が減少という結果に至ったことで安心したいです。

Ⅱ:やや難~難

(1) :「単振動を続けた」と書いてあるので素直に運動方程式を立てましょう。単振動の鍵となる「金属板から受ける静電気力」については、それとつりあう外力FをⅠで求めていることを理解し把握していればさらっと記述できたと思います。あとは式を整理し、加速度がゼロとなる「単振動の中心」と角振動数を明示するのみです。
(2) :tの関数Iのグラフが与えられその面積を求めよと言われると、理系なら「Iをtの関数で書き表してそれをこの区間で積分するのか?」とついつい思ってしまいますが、それをやろうとすると高等的でかつ時間がかかりすぎるので、別のもっとすっきりした考え方を目指します。Sの意味を考えると、電流を時間で積分したもの、つまりその区間で移動した電荷量であるとわかります(正確には絶対値)。金属板間の電位差はV_0で一定であることを用いると、電気容量の変化量にV_0をかければ電荷の変化量が求まることが分かります。電気容量についてはIの(1)の「ア」の式でxの関数で与えられるので、半周期が経った時刻t=t_0でx=2x_0であることを見抜けば(1)で求めたx_0を用いて答えにたどり着くことができます。
(3) :また電位差V_0が一定であることを用いて、電荷の移動量にV_0をかければ電池のした仕事Wが求まります。電荷の移動量が-Sであることに注意して計算しましょう。Wが負の値を取る意味についても考え理解できれば、今後のミスを減らす一助となることでしょう。

第3問:標準

Ⅰ:易~やや易

(1) :状態方程式と単原子分子の内部エネルギーの式です。これは落とせません。
(2) :問題設定が分かっていれば全く難しくありません。得点を積んでいきましょう。
(3) :仕事については図3-2のPVグラフがあるのでその面積で求めます。焦っているとこのような図を見落として無駄に時間を食う羽目になりがちなので、問題冊子にある情報全部使ってやるんだという心意気で俯瞰的になれたらいいですね。内部エネルギー変化は引き算で求めましょう。
(4) :大気圧と密度の関係式が与えられているので、それを使ってできるだけ項を減らし単純化しましょう。モル比熱が一定ということで、温度変化さえわかれば熱量との単純な式でモル比熱を求めることができます。似たような式が並ぶので、係数で計算ミスしないよう気をつけなければいけませんがそこさえ大丈夫であれば、正答は決して難しくないはずです。

Ⅱ:標準

(1): 拍子抜けするくらいシンプルな問題です。第1問から順番に解いていく方にとってはかなり残り時間が厳しい頃かなと察しますがこういうあっさりした問題も転がっていることも往々にしてあるので拾いきりたいものです。
(2) :Ⅰの(3)と同様面積で求めていきます。状態自体は既に把握しているのであとは図にして根気よく計算するのみです。とはいえこの終盤に細かい計算を地道に実行するのはほとんどの方にとって回避したくなるものだと思います。方針はもう分かっているのだから図だけ書いて一旦計算は飛ばして、もし最後時間が余りそこで何を拾うかという選択に迫られたときにここに帰って来るという戦略をとるというのも、現実的な一手かと私は思います。

Ⅲ:やや難

見慣れない問題かもしれませんし新たな状態5を考えないといけないので少し手をつけづらいかもしれませんが、これも特徴をつかめば選択肢を絞ることができます。圧力が増える、体積が減るというのはイメージすればすぐ把握できると思います。また、熱交換器を作動させないとありこの容器は断熱容器であることから、さらに具体的に「断熱圧縮」であると現象を理解することができます。そうなるともう「ア」か「イ」かに絞られます。あとは、状態1→状態2の過程の最中に落ち着くかそれより圧力が大きくなるかです。状態5は状態1→2の過程と同様の力のつり合いが生じていることを踏まえると「イ」であると導ける。この小問に限らず解答冊子にはさらに踏み込んだ解説が展開されているので、ここまでこの所感に目を通していただいたあなたにはぜひともその解答解説を読んで物理への理解と興味を深めていただきたいと切に願います。

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