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2024年1月20日、21日実施 最終東大本番レベル模試 スタッフによる所感【物理】


全体概観:やや易

受験学年の方:


問題の難易度としては近年の東大のレベル感と比べても易しめだと思います。受験学年の方としては時間制限がない状態では、どの問題も回答したいところです。とはいえ、共通テスト明けのこの時期に75分弱で処理するべき問題セットとしてはそう簡単なものではなかったと思います。特に第2問第3問など、問題の状況設定の読み取りに時間がかかったり、状況設定がコロコロと変わったりする問題に対して、短時間で状況を把握して的確に正確な処理をするという”処理力”が要求されるという点では、なかなか難しい問題セットだったのではないでしょうか。共通テスト明けということで時間配分の感覚が鈍っていたり文字式の処理速度が落ちていたりするなどが原因で、計算ミスでの失点や時間不足で点数が伸び悩んだ方も少なくないのではないでしょうか。①今回思うように得点できなかった方は、まずは落ち着いて時間無制限で解きなおしてみて、②処理力や時間制限の面で失敗してしまった分は、過去問などの演習を通しての実践演習を繰り返すことで、本番までに理科を仕上げていきましょう。あと一ヶ月ほど演習を重ねれば、必ず今回の試験よりも本番では点数は伸びるはずです。ラストスパート、頑張ってください!!

高2生以下の方:


最終東大本番レベル模試ということで、原子分野からの出題や円運動、ダイオード、交流など未修分野からの出題もあったかもしれません。若干知識が要求される問題も多かったので点数が伸び悩んだかもしれませんが、未修分野ゆえの失点に関してはこの時期はまだそれほど気にする必要はないでしょう。それ以上に、習ったはずだけど落としてしまった問題に関しては、なぜ間違ってしまったのか、まだ基礎に抜けがあったのか、などを丁寧に確認して基礎固めをしていく作業が大切です。まだ1年ほど時間がありますので、焦らず丁寧に理科については勉強を進めましょう。焦らずとも高3で必ず実力は伸びます、コツコツと頑張ってください!

第1問:やや易


典型的な円運動、中心力問題です。状況設定の把握も他の大問と比較すると容易でしょう。力学に習熟している方ならば確実に得点したい大問でした。一部文字式処理が煩雑だったので、式の構造を見たり次元解析をしたりしながら間違いなく式変形をできたかどうかが鍵となったのではないでしょうか。
I やや易
(1)(2)これは受験生ならば落とせません。丁寧に回転系での遠心力を含めた釣り合いの式、もしくは実験室系での運動方程式を立式するだけです。
(3)前小問での式から丁寧にMの条件を求めましょう。Mとmの比で条件を書くと見やすそうだという感覚は持っておきたいです。
II標準
(1)丁寧に回転系での釣り合いを記述するだけです。取りたい問題です。
(2)加速度に関しては張力が顕に現れない、A, B一体系の運動方程式で見るのが早いでしょう。張力はBの運動方程式から決定するのが楽そうです。
(3)やるべきことは円錐面から離れる時の速度の水平方向成分と面積速度を立式することだけです。得られる式は煩雑なので、このような時は次元解析も行い、明らかな間違いがないことをチェックすることが重要です。
(4)最高点の条件は、回転系での速度の糸方向の成分が0となることです。これからエネルギー保存則と面積速度保存の関係式を連立するだけです。これまた式が煩雑なので次元解析などを丁寧に行い、ミスを減らしましょう。
(5)グラフから定性的に状況を読み取る問題であり、(2)(3)が正解できなかった方も取りたい問題でした。どこまで答えるかが少し分かりづらい問題だったかもしれませんが、読み取るべき現象も比較的シンプルなものであり、本番ならば落としたくない問題です。

第2問:標準


 ダイオードの非線形抵抗が問題となっており、あまり見慣れない設定だったかもしれません。とはいえ問われているのは回路の基礎事項であり問題の難易度としてはやや易しめか標準的かといったところです。問題の誘導をうまく理解することがやや難しく、処理量も多いため試験会場では圧倒された人もいるかもしれませんが、問われているのはいずれも基礎事項です。できなかった方は今一度取り組み直したいところです。

Iやや易
(1)これは受験生ならば落とせません。丁寧に回路の方程式を書くだけです。
(3)ダイオードや原子分野に関する知識事項が問われています。共通テスト明けの方ならば、このような基礎事項は抑えられていた方も多いのかもしれませんが、2次試験で出題されると思わぬ失点を招く場合もあるので、最後もう一度この辺りの知識事項も抑えておきましょう。p型n型はキャリアの電荷のpositive, negativeに対応していると覚えましょう。ウ以降はモデル化をうまく捉えることが重要でした。いわゆる処理力の問題にもなってきますので、二次試験までの残り時間で演習を重ね処理力を伸ばしましょう。
II標準
興味深い現実上の工夫の話です。試験時間中十分に考えることができなかった方も、落ち着いて家で考え直していただきたい問題です・
(1)問題の意図がわかれば単純に立式するだけの話です。光強度が等しいので流れる電流が等しいことを見抜きたいです。
(2)D1, D4の配線部分での電圧効果を丁寧に立式するだけです。
(3)少し考察が必要な問題だったかもしれません。悩むようなら試験中は飛ばしても良い問題だったのではないでしょうか。破損しにくいということは、どのダイオードにも同じオーダーの電流が流れると読み替えることがポイントでした。
III標準
丁寧に回路の式と光強度の式を連立し考察する問題でした。カは知識問題です。IIでの誘導から、立ち上がり電圧は放出光のエネルギーと対応していることを踏まえることがポイントでした。キ、クは定量的に光強度を電圧の関数として解析するだけです。試験中は時間などの都合で取り組めなかった人も落ち着いて考え直してみてください。
IV標準
交流やダイオードが並列された回路でその見た目に圧倒された方も多いかもしれませんが、問われていることや起こる現象は見掛け倒しです。交流電源の起電力が(所定の向きで)正になるときはD5のみ、負になるときはD6 D7 D8のみに電流が流れうることを抑えると、後は起電力の大きさと立ち上がり電圧の大きさを評価する問題に帰着します。試験中焦らず処理できたかがポイントでした。
(1)(2) 回路の式を丁寧に書き考察しましょう。
(3)回路の式から電流を時間の関数として求めて、後は光強度を足し上げるだけですね。最大値を丁寧に考察しましょう。

第3問:やや易


水素原子中の電子状態を古典力学的な描像と量子化条件から考察する問題です。解答解説に詳しく記述されておりますが、物理学的には色々と深い意義のある問題なのですが、大学受験のための試験としては誘導に正しく従い運動方程式などを立式して丁寧に処理をすれば得点することは比較的容易だったのではないでしょうか。試験中には焦ってしまったなどの理由で得点が伸びなかった方も、もう一度ゆっくりと取り組み直していただきたいです。
I やや易
万有引力問題など、中心力問題の基礎事項が問われています。エネルギー保存則と角運動量保存則を丁寧に立式して処理をするだけです。次元解析や文字指定に注意して計算ミスも抑えたいですね。
II 易
電子の波動性に基づき運動量からde Broglie波長を求め後は幾何学的な関係を用いるだけですね。受験生ならば落とせません。
III 標準
見慣れない設定だったかもしれませんが、誘導が丁寧に与えられているのでスムーズにそれに乗れたか否かで命運が分かれたのではないでしょうか。
(1)(3)は指定された文字を用いて書き直すだけなので取りたいところです。(2)(4)は一周期の時間平均という意味が捉えにくかったかもしれませんが、その意味が捉えられたならば後は丁寧に計算を進めるだけでした。

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