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[みらいけんアドベントカレンダー 12/24] 2022年に読んで良かった本

 原としです。みらいけんの後藤さんにお誘いいただき、アドベントカレンダーの1日を頂きました。ありがとうございます。2022年に読んで良かった本を紹介します。

 2022年を振り返って、私にとっては2022年は思い通りにいかないことの多かった一年でした。そんな年もありますよ。そんな中、2022年はコミックを除いてちょうど100冊を読了。2019年度までの読了ペースが復活しました。振り返ってみると例年以上にフィクションが多めだったような気もします。読書で現実逃避していた自分がいました。

2022年に読んで良かった49冊

 2022年に読んだコミック以外の本のうち、雑誌を除いて★5つ(最高の1冊!)が9タイトル、★4つ(また読みたい)が40タイトルでした。例年に比べて読了はフィクションが多いのですが、★5な本はノンフィクションなんですよね。良かった本の多くは読書サークルで紹介してもらった本でした。紹介いただいたみなさまに感謝。

 以下、なんとなくの分類に分けて並べました。私が★5つと評価したものは、タイトルの後ろに「★5」と記載しています。無記載は★4を表します。★3以下はリストから外しました。

1 集団に潜む真理(9冊)

 2022年は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いた一年でした。他にも台湾をめぐるアメリカと中国のやりとりをはじめとして、国際情勢が転機を迎えた印象があります。関連した本をいくつか読みましたが、国際情勢を「したり顔」で解説している本よりも、国や民族や仲間や家族といった、集団に潜む真理のようなものを描いた本の方が印象に残りました。

  1. 米原万里『ロシアは今日も荒れ模様』講談社文庫,2001(ロシア)

  2. 堀田善衛『インドで考えたこと』岩波新書,1957(インド)

  3. ナタリア・ギンズブルグ(著),須賀敦子(訳)『ある家族の会話』白水社,1992(イタリア)

  4. 竹岡 健『ブッククラブと民族主義』九州大学出版会,2017(ドイツ)

  5. エーリヒ・ケストナー 著,池内紀 訳『飛ぶ教室』新潮文庫,2014(ドイツ)

  6. 内村鑑三(著),鈴木範久(訳)『代表的日本人』岩波書店,1995(日本)

  7. 上橋菜穂子『獣の奏者 1闘蛇編』講談社,2010(フィクション)

  8. 上橋菜穂子『獣の奏者 2王獣編』講談社,2010(フィクション)

  9. 上橋菜穂子『獣の奏者 3探求編』講談社,2012(フィクション)

 ちなみに『獣の奏者』シリーズは現在も読み進めているところ。フィクションだからこそ実験的に、状況における集団行動をシミュレーションできる気がします。最終兵器に頼りたくなる国家の脆さと、決定を迫られる権力者の弱さ。

2 『人間の条件』を思い浮かべつつ(8冊)

 単に作業をしただけでは「仕事した」とは言えないわけで。何かしら目に見える作品であったり成果であったりを世に問うてこそ「仕事」と言えるのです。ハンナ・アーレントの『人間の条件』では、労働と仕事と活動の3つに分けて論じています。「仕事」が思うように捗らず悶々とした時に、『人間の条件』を思い浮かべて読んだ本がありました。

  1. 宇田智子『那覇の市場で古本屋』ボーダーインク,2013(労働)

  2. 野崎まど『タイタン』講談社,2020(労働と仕事)

  3. 上田秋成 原著,市村正ニ 訳註『全訳 雨月物語』福音館書店,1956(労働と仕事と活動)

  4. オマール・アボッシュ,ポール・ヌーンズ,ラリー・ダウンズ『ピボット・ストラテジー』東洋経済新報社,2019(仕事)

  5. 原田マハ『リボルバー』幻冬社,2021(仕事)

  6. セネカ 著,茂手木元蔵 訳『人生の短さについて 他二篇』岩波書店,1982(活動)

  7. ニール・スティーブンスン 著,日暮雅通 訳『スノウ・クラッシュ〔新版〕上』早川書房,2022(労働と仕事と活動)

  8. ニール・スティーブンスン 著,日暮雅通 訳『スノウ・クラッシュ〔新版〕下』早川書房,2022(労働と仕事と活動)

 上記以外の番外編として、コミックですが幸村誠『プラネテス』が心に響きました。「一人で生きて、一人で死ぬ」と強がってみても、実際には多くの人に支えられて今日があるわけで。悶々としている時も、感謝の気持ちは忘れないように。

3 作品を味わうスキル(8冊)

 良い作品を「良い」と味わえる眼を持つこと。成果に対して解像度高く理解すること。見るべきものが見えるようになると、人生は豊かになります。この領域は積読解消に心がけたのですが、2022年も良い本に出会えました。「読まずに積んでおいた後悔」は脇において「このタイミングで読めた幸せ」を感じることにします。

  1. 末永幸歩『「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考』ダイヤモンド社,2020★5

  2. ロバート・M・パーシグ『禅とオートバイ修理技術 上巻』早川書房,2008★5

  3. ロバート・M・パーシグ『禅とオートバイ修理技術 下巻』早川書房,2008★5

  4. 大竹伸朗『既にそこにあるもの』ちくま文庫,2005★5

  5. 北村紗衣『批評の教室』筑摩書房,2021

  6. 丸谷才一『文学のレッスン』新潮社,2013

  7. 井上ひさし『本の運命』文藝春秋,2000

  8. 向井和美『読書会という幸福』岩波書店,2022

 末永幸歩さんが述べる「アート思考」を強く感じたのが『禅とオートバイ修理技術』と『既にそこにあるもの』でした。《クオリティ》をめぐる冒険。書くこと・作品作りが自分との対話になっていました。書くことがアート思考の実践となっている他の例として、スティーブン・キングの『書くことについて』を挙げます。この本は他の文章読本と一線を画すと思っていましたが、その理由が分かった気がしました。

4 人の本質を読む(9冊)

 積読の山を少しずつ登るなかで、人の本質に迫っていると思えた本に出会うことができました。科学的なアプローチによるものもあれば、観察によるものも、フィクションもあります。この領域は、フィクションの比率が多くなりました。どうも私は「人間」を描いたフィクションに惹かれるようです。

  1. ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上』早川書房,2014

  2. ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 下』早川書房,2014

  3. カル・ニューポート 著,池田真紀子 訳『デジタル・ミニマリスト』早川書房,2022

  4. 河合隼雄『こころの処方箋』新潮社,1992

  5. 重松清『きみの友だち』新潮社,2005★5

  6. ミヒャエル・エンデ『モモ』岩波書店<再読>

  7. 平野啓一郎『ある男』文藝春秋,2018

  8. 谷崎潤一郎『春琴抄』新潮社,1951

  9. 多和田葉子『献灯使』講談社文庫,2017

 蛇足ですが、『きみの友だち』はフィクションの中で唯一★5と思えた本です。好みが出ますね。例えば、今年読んだ本に『鏡の国のアリス』がありますが、このような知的にポップにドタバタを描く作品は、私の中で評価が上がらず、欄外となりました。

5 「学び」を学ぶ(8冊)

 学びのスキルを上げたいと考えています(楽しみながら)。もしも毎年レベルアップできれば、100歳の時には「レベル100」になっているハズ。良い作品を味わう眼を養い、労働と仕事と活動のバランスが取れた日々を過ごすことができれば、豊かな人生を謳歌できるだろうと。なので「学び」を学び続けようと。

  1. BJフォッグ『習慣超大全』ダイヤモンド社,2021★5

  2. 林勝明『人見知りでもセレンディピティ 身近な奇跡が爆増する20のルール』飛鳥新社,2020

  3. ジョセフ・ヒース 著,栗原百代 訳『啓蒙思想2.0 [新版] 政治・経済・生活を正気に戻すために』早川書房,2022★5

  4. 佐藤彰一『歴史探究のヨーロッパ 修道制を駆逐する啓蒙主義』中央公論新社,2019★5

  5. 木庭顕『クリティック再建のために』講談社,2022

  6. ヨハン・ホイジンガー 著,里見元一郎 訳『ホモ・ルーデンス』講談社学術文庫,2018

  7. 辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』岩波新書,2021

  8. 荒木優太(編著)『在野研究ビギナーズ』明石書店,2019

 そうはいっても、この領域の本は積読になりがちです。「読もう!」と思って読んでいない本がまだまだたくさんあります。焦らずに読んで学んでいこうと思います。だってゆっくり進むほど、人生は長くなっていくものだから。

6 図書館を深く知る(7冊)

 冊数だけで言えば、この領域の本を最も多く読みました。冊数だけは全体の1/4近くと多かったのですが、どうもね「図書館かくあるべき」みたいな評論が多くて、そういうのってグッと来ないんですよね。それよりも実例などを示しながら「誰になんと言おうと、私はこれをやる!」「なんといわれようと、真実はこうなっている!」みたいな真に迫ろうとする本の方が好感が持てました。

  1. アントネッラ・アンニョリ 著,萱野有美 訳,柳与志夫 解説『知の広場 図書館と自由』みすず書房,2011★5

  2. 谷一文子『これからの図書館』平凡社,2019

  3. 猪谷千香『つながる図書館』筑摩書房,2014

  4. マイケル・K・バックランド 著,高山正也 監訳,現代図書館史研究会 訳『イデオロギーと図書館』樹村房,2021

  5. ブリュノ・ガラン 著,大沼太兵衛 訳『アーカイブズ 記録の保存・管理の歴史と実践』文庫クセジュ,白水社,2021

  6. 三輪眞木子『情報行動』勉誠出版,2012<再読>

  7. 上田修一,倉田敬子『図書館情報学第二版』勁草書房,2017<再読>

 以上、2022年に読んで良かった49冊でした。この中からみなさまの興味関心を呼び起こす一冊が見つかれば幸いです。

2023年の計画

 幸せの形は様々ですが、私はヒルティの『幸福論』や幸田露伴の『努力論』に共感を覚える人間でして、来年も幸福を手にするための努力を楽しんでいきたいと思っています。

 読書で言えば、2023年度はもっと骨太のノンフィクションにチャレンジします(そして鬼が笑う)。例年よく読むビジネス本や図書館情報学に関する本に加えて、文章読本や、読書や読書会にまつわる本を読みます。来年100冊読了予定に対して、「次に読む本」として190冊ほどリストアップしています(購入・予約済が160冊程度、未購入ですが買ったら割り込んで読むつもりの本が30冊程度)。加えてまだ見ぬ本との出会いも例年30冊くらいあります。つまり、準備はできています。

 それではみなさま、メリークリスマス!そして、2023年も良い読書ライフを!

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