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MIX師の選び方をMIX師が語るな

歌ってみた界隈で音声の調整をする担当の人をMIX師といいます。膨大な数のMIX師のなかから自分にあいそうな人を歌い手さんはみずから探さないといけないのです。

その上たいていのMIX師はお金をとります。

歌い手さんとしては、お金を払う以上しっかりとしたMIXをしてもらわないと「このクソ野郎」というドス黒い感情が沸いてしまうのです。

それを見越してか、ここnoteの世界にも「MIX師を選ぶための方法」を説いた記事を多く見かけます。とても素晴らしいことです。しかし、どうも中には自分の都合のいいように誘導する表現が混ざっていることがあるような気がしてならないのです。

MIX師が語る基準はどうもMIX師の都合で話してる

少なくとも、僕が選び方の話をわざわざ記事にするとしたならば、それは自分にメリットがでるように書きます。そうです、自分のところへ依頼が増えるように自分をよく見せるんです。

なので、選択基準は絶対に自分が得するように書きます。

例えば、僕はスマホ録音だろうが、クオリティが低い歌だろうが、どんな音源でもMIXします。しかし、中にはそういった音源ではMIXはしないという人もいるわけです。

僕の基準でいえば、断るなんて何様だよって思うんです。
だから、そういうMIX師に依頼なんかしちゃダメだよ〜心がもたないよ〜
って記事に書くでしょう。

実際には、低クオリティな音源だと歌い手さんが描いてるクオリティに仕上がらないから突き返したりする人がいるってだけの話なんです。そういう人たちは、ここをこう歌うともっと良くなるからリテイクお願いしますって返してるだけのこともあります。

でも、そういったまっとうなやりとりを伏せたまま、自分に都合のいい解釈だけ言葉にするでしょう。決して嘘をかいてるわけではないですから、なんの問題もないのです。

これはすごく極端な例え話ですから、どう解釈するかはあなた次第です。

あくまで責任を歌い手に仕向けようとしている

次に多いのは責任を歌い手に押し付ける書き方です。

MIXの良し悪しについての判断を歌い手に一任させる手法です。

「最終的に歌い手が満足すればOK」というのは合ってるようで、間違ってもいるのです。僕自身も、最終的に依頼をくださった歌い手さんが満足してくれるならそれでいいと思う気持ちはあります。

しかし、正直そこまで正確に判断をくだせるほどすべての歌い手さんは音に対して理解があるのでしょうか?

適当なミックスでも、それっぽい音作りで気持ちいい感じでリバーブでもかけとけばいい音に聞かせることはできます。というか、音量さえ整ってればそれでOKという感じになると思うんですよね。

そんな音源でも、歌い手さんがいいと言ったからOKで本当にいいのでしょうか。

僕は音源には世の中にだして大丈夫と判断するために、最低限クリアしてなきゃいけないクオリティというのは存在していると思います。

MIXの場合、一つの基準としてどんな再生環境でもちゃんと聞こえる音に仕上げることって大事なんじゃないかなと思っています。その部分ついては歌い手さんに判断をゆだねることなんてできない部分なのは間違いありません。

音より演出で勝負できる程度には言葉がたくみだ

ミックスがまとまった段階で歌い手さんに一度確認をもらうというのはどのMIX師もやっていることです。その時に、やたらとこだわりを主張してくる人っていませんか?

ボーカルがしっかりと前に聞こえるように、オケのダイナミクス調整をしてあります。そのため、ミックス前よりもぐっと印象的にボーカルが聞こえてくるようにしあげました!また、ハモリについては左右の広がりを演出できるような設定を施しています。かなり、迫力あるミックスに仕上がったと思っています!
その上で修正などあるようでしたら、お伝えください。

なんて、音聞く前に読んでしまったら、もうそういう音に聞こえてきちゃうんですよね。これが、演出マジック。効果絶大らしいです。

マッサージに行ったことあるならわかるのですが、施術中に説明されながら揉まれるの、無言で揉まれるのでは効果が違うんですよね。

本当にうまい人ならば無言でも体の不調をとりのぞいてくれるのですが、たいていの安いマッサージ店レベルだと説明ありきで受けないと、効果を認識できないんです。

それと同じことを、MIX確認の時にやってるわけです。

でも、上の例文を書くのにも今めちゃくちゃ時間がかかってめんどくさいと思ったくらいなので、僕は使うことないかなと思いました。
こだわりはあるんだけど、簡単に言葉にできる量でも内容でもないので、やるとしたらもう少しライティングスキルが上がってから挑戦してみます!

それに、変に言葉でイメージ固めちゃうと、偏った確認になっちゃうから確認してもらう意味がないんですよね。確認作業で帰ってくる言葉から、その歌い手さんの好みとか読み取れたりするので、できるだけフラットな意見を返してもらいたいと思っています。

その上で僕が考えるMIX師の選び方

もう結論だけ言います。僕に依頼ください。
という特大ブーメラン落ちを最初は考えてたんですが、さすがにそれはないなと思うので真面目に考えました。

やはりミックスのサンプルを聞いて判断して欲しいなというのはあります。
でも、声にフォーカスして聞くと絶対に良し悪しはわかりません。

そこで音全体で2ポイントに絞って聞いてもらいたいところがあります。

一つは声とオケのバランス。声にパワーがあるのと、ただ声が大きいというのは似ているようでまったく異なります。やはり適切なバランスでないと、心地いい音として届けることができなくなります。

もう一つは、音の質感です。どのジャンルでミックスをしたとしてもMIX師の癖というのはでてきたりします。

激しくドンシャリにしあげて歌にフォーカスをあてる人もいれば、全体的にマイルドな音で耳がつかれない音作りをしている人もいます。

それぞれMIX師ごとに大事にしてる部分の違いが音に現れるのです。

その大事にしている部分が、歌い手であるあなたの感性と合うのかどうか。
こればかりは言葉でどうのこうのというよりも、音をきいて直感的に良いと感じるかどうかだと思うので、MIX師ごとの良し悪しではありません。

僕のMIXも聞いてもらえればわかると思うのですが、癖がバリバリにあります。

時期によって狙う音の方向は変えたりしてるのですが、それでも根幹の部分はどうしても変わらないんですよね。

でも、何度も依頼をくださる歌い手さんは直感的にそういう部分を良しと感じてくれてると思うので、無理に変えようとは思いません。
それが個性であり、僕の魅力であると信じて、今日もMIXを頑張るのです。

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