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最高傑作のファインダーを持つX-Pro2を改めて

私は光学ファインダーとブライトフレームで写真を撮っていくのが好きで、それ故にフジフイルムのX-Proシリーズを愛用している。最近光学ファインダーで撮るということの意味を考えることが多かったのだが、そこでふと思ったのが

それならX-Pro3よりX-Pro2の方が良いんじゃないか?

ということ。


X-Pro2


X-Pro2とは、2016年に発売されたX-Proシリーズの二代目となる機種。X-Pro3の方が新しい機種で積んでいるセンサーもプロセッサーも新しい訳なのだが、そんな最新のX-Pro3を差し置いて「X-Pro2こそX-Proシリーズの最高傑作だ」と言う意見は実はちょくちょく写真家さんなどの記事でも見かける。
なぜそう言われるかと言えば理由は大きく二つで「Hidden LCDはいらなかった」という意見と「なんでファインダーを簡素化してしまったんだ」というもので、今回のテーマでもあるように私は後者の方でX-Pro2の方が優れていると思っている。(ちなみにHidden LCDも肯定はし切れない)

そもそもX-Proシリーズは「ハイブリッドビューファインダー」というフジフイルム独自のファインダー機構を搭載している。普通ミラーレスカメラというのはファインダーを覗くと、EVFという液晶や有機ELなどのパネルがあってそこに撮影する画像が表示される。EVFのいい所は明るさ、色味、ボケなど全てが反映された状態、要は仕上げるイメージのままで景色を見る事が出来るという所。
一方X-Proシリーズがモデルにしているレンジファインダーカメラは、素通しのガラスにレンズの画角に応じたフレームが浮かんでいるというファインダーで(OVF)、そのままの景色を見ながら写真として変換していくといった撮影になる。OVFのいい所はラグが一切ない事や、フレームの外の動きも見えるので先読みをしながら写真を撮れるという事。
そしてこのEVFとOVF両方を一つのファインダーの中で切り替えられるという、何とも良いとこ取りの革新的なカメラがX-Proシリーズなのだ。

しかも、その中でもX-Pro2のファインダーは「アドバンスド・ハイブリッド・マルチ・ビューファインダー」という、名前通り様々な機能が載ったファインダーを持つ。


それぞれ
アドバンスド→OVFの時に右下に小さいEVFを表示してピントや露出確認が出来る機能(エレクトリックレンジファインダー・ERF)
ハイブリッド→OVFとEVF二つ使える機能
マルチ→OVFの倍率を変更出来る機能
という意味がある。

X-Pro1はERFの機能がまだ生まれていなかったので「ハイブリッド・マルチ・ビューファインダー」
X-Pro2は全部盛りとなり「アドバンスド・ハイブリッド・マルチ・ビューファインダー」
そしてX-Pro3は「アドバンスド・ハイブリッド・ビューファインダー」

…あれ、Pro3…「マルチ」は?

そう、X-Pro3でまさかの機能が一つ減ったのである。
公式サイトにはOVFは「ハイブリッドファインダー」と短く表記され紹介もEVFの事ばかりでOVFには短く触れるのみ…。何と…
しかもここで減らされた倍率変更は個人的にとても素晴らしい機能だと思っていたので、かなり残念だった。これがある事でファインダー倍率を広角用と標準〜中望遠用に切り替えられ、様々な画角でOVF撮影を行う事が出来た。広角が18mmから使えるのも素晴らしいし、普通フレームが小さくなって使いにくくなる中望遠の画角でも広くファインダーを使える。本家のLEICAにもない素晴らしい機能だった。
これがX-Pro3で倍率は固定式、しかも広角は23mmから!ある意味本家のLEICAよろしく中望遠は小さいフレームで切り取るロマンを感じられると言えばそうなのだが、それなら本家よろしく18mmレンズ(28mmの画角)から使えるようにしてくれて良かった気がする。(35mmが多少小さくなっても構わない!)

X-Pro3のファインダーは代わりにEVFが強化された。今までの液晶パネルから有機ELに変わった事により高精細、高輝度、低遅延を実現している。これにはユーザー調査を行った所、「X-Proシリーズを使う人のほとんどがEVFを常用していた」という(個人的に大変残念な)結果から決まった方向性らしい。しかもX-Pro3は外装にチタンを使用するなどおそらくコストが諸々掛かっているのが想像出来、X-Pro2の全部乗せファインダーもまた相当お金を掛けていることが想像出来たので、その辺の事情もあったのかもしれない。

とまぁこのあたりの話は延々と続いてしまうのでそろそろ話を進めると
「画質やカメラ全体としてのクオリティは当然X-Pro3の方が上、でも今の価値観や考え方でならX-Pro2をメインにするのでもありなのでは?」
と思い、久しぶりにX-Pro2のみを持ってガッツリ写真を撮りに出てみたのが今回の話。


※2024年ポートフォリオをまとめる際に Lightroomで写真を全て現像し直し、江田島での写真はクラシッククロームとベルヴィアに変更した。その為文章と写真が一致しないのだが、その時の考えを優先したいと思いそのままにしている。


カメラバッグにレンズと予備バッテリーを入れ、XF23mm F1.4をX-Pro2に取り付ける。いつもならX-Pro3を持つ手が今日はX-Pro2を持つのが不思議だ。X-Pro3はドライボックスの中でお留守番となる。彼はこんな経験は初めてだろう。

向かうのは以前から行ってみたいと思っていた江田島。
島の自然を活かしたレジャー、サイクリングなどで訪れる方も多く、広島湾の中でも大きな島。

江田島に向かうフェリーに乗り込み、落ち着いたところで改めてX-Pro2を眺めてみる。マグネシウムボディにブラックのペイント。X-Pro3はDRブラックというボディカラーでサラサラとした手触りなのだが、やはり艶のあるブラックのペイントはかっこいいなぁと思う。使い込んでいるので角などは塗装が禿げている。ペイントの艶もおそらく最初はこんな感じではなかったはずだし、ダイヤルやボディに彫り込まれている白文字は褪せて白色ではなくなっている。全体的にボロボロだ。だが、今までの歴史が詰まっている。




レンズはXF14mm F2.8, XF23mm F1.4, SIGMA 30mm F1.4, SIGMA 56mm F1.4の4本で、X-Pro2のファインダーだと14mm~30mmが広角側のファインダーになり、56mmのみ標準〜中望遠のファインダーに切り替わる。
地味に感動したのが、XF14mmを付けるとブライトフレームは当然出ないがファインダーの全部を使えばOVFで撮影は出来るということ。持っている方はわかると思うが、画角が足りないレンズをつけた場合黄色い線と矢印が端に表示されて対応出来ない事を知らせてくれるのだが、XF14mmを付けてもそうならず、端っこに白いカッコのようなものが出るだけだった。これはひょっとしてファインダーいっぱい使えばぎりぎり画角が収まるという事か?と思って感動。ファインダー端から端までいっぺんに見るのはメガネを掛けてる私にとっては結局難しく端の方の構図などはかなりアバウトになるのだが、それでも世界をまるっと写し込むという体験は面白かった。



そして56mmを使った時にはX-Pro3よりも表示倍率が上がる分、ブライトフレームも広くなって撮りやすいのも嬉しかった。56mmは「ここ」と決まって集中して撮る時に使うことが多い分、ファインダーを広く使えるのはありがたい。



AFなどの挙動に関しては、X-Pro3で慣れてしまっていた分その動きの無駄の多さに少し慣れが必要だった。ピント位置を探すウォブリングが多く、SIGMAはステッピングモーターなので音は気にならないがフジノンレンズは二つともシャカシャカ音を立てながらピントを探していた。鈍重という訳ではないが、毎回シャカシャカやっているのを見ると少し古い機種だなということを実感してしまう。こうしてみると第4世代のセンサーのAF性能は素晴らしいと改めて思う。

今回は色々試すのが目的の一つだったので全てRAWで撮っていた。とりあえずのシミュレーションはACROSにしておく。今でこそお馴染みのシミュレーションだがX-Pro2を手に入れて最初に思ったのが「これでACROSが使える!!」というぐらい思い入れのあるシミュレーション。X-Pro1を使っていた時既にX-Pro2は発売されていたのだが、「ACROSって凄く良いんだろうな。モノクロの表現が広がるんだろうな」と作例などを見ながら憧れていた。X-Pro2を手に入れた時は本当に嬉しかった。


ウォームトーンにしている以外は撮って出しの状態。シャドウの粘りがACROSの特徴。


そうして歩きながら「カラーはどうしようかな」と考える。現在はクラシックネガがカラーでの常用シミュレーションになっているが、これはX-Pro2にはない。X-Pro2をメインで使っていた時はクラシッククロームがメインだったが、目の前の自然を見ていると今回は素直にプロヴィアで撮ってみようと思った。プロヴィアはフジフイルムのスタンダードと言える基本のシミュレーションだが今まであまり使うことがなかった。だが今回機材を立ち返ったのもあってかスタンダードな色味を改めて知りたいと思ったし、天気も良く綺麗な自然を見ていると鮮やかな色で残したいと素直に思った。

RAWで撮っているので後からシミュレーションを変えることも当然出来るのだが、撮影の時にそのシミュレーションの感覚で撮るというのは大事だと思う。モノクロで撮る時はモノクロ脳になる、というのはごく当たり前の話だが、カラーにおいても私は「クラシックネガの景色だな」「エテルナの景色だな」と目の前の色や光の硬さでシミュレーションを変えることがある。その時の目の前の感覚にマッチしたシミュレーションを選ぶということだ。
なので基本ACROS、時々プロヴィアという感じで撮影し、家に帰ってX-RAW studioで現像する際に多少遊んだりしても基本は撮った時のシミュレーションに落ち着く。
結果、大体はACROSで日中のカラーはPROVIA、寂びた景色はクラシッククローム、夕景はVELVIA、という非常にわかりやすい住み分けで現像を行なった。X-PRo3で使えるクラシックネガは私が表現したい感覚を優先したい時にはとても素晴らしいシミュレーションになるが、記憶を再現したい時にはこれらのシミュレーションがあれば十分だということがわかった。


PROVIAの鮮やかな発色。空のトーンも素晴らしい。こちらもほぼ撮って出し。


久しぶりにX-Pro2だけを手にしっかりと写真を撮ってみて、思ったのは「やっぱりこのファインダーは素晴らしい」ということだった。倍率切り替えのおかげでレンズそれぞれが非常に使いやすい大きさで表示されることに感動したし、XF14mmを付けた際の世界を丸ごと写真に変えるような感覚は多少の無理も相まって普通のデジタルカメラでは味わえない感覚だと思う。



江田島の美しい景色は写真の外側にも広がっているんだ、という事を考えながらブライトフレームを合わせる。



あくまで自分が写真を撮っているのはこの世界の一部なのであって、目の前だけで完結させてしまうのはもったいない。




レンジファインダースタイルのカメラを使うことの意義を再確認させられながら写真を撮り進めていく。

そして、最終的に私はX-Pro2についてどう考えたか?
一日一緒に旅をして非常に楽しかったし、現像やレタッチの腕も上がった今で写真を仕上げると発見もあってよかった。
しかし最終的には「やはり画のクオリティも大事にしたいからX-Pro3を使おう」という結論に至る。
X-Pro2の画も先述のとおりまだ通用するものだと思うが、「十分」ではあるものの新しい世代のセンサーの画質を知るとそこから戻るほどでは無い、というのが正直なところだった。それならいっそX-Pro1にした方が独特な画を出してくれるので面白いと思う。
しかしこのファインダーはやはり最高傑作だと実感し、X-Pro3にこのファインダーが乗っていたらどんなに良かったかと残念に思う。
願わくば、おそらく今年発売されるであろうX-Pro4にはX-Pro2と同じかさらに進化したファインダーが搭載されて欲しい。

ということでX-Pro3を改めて使い続けることに決めた訳だが、今一度X-Pro2の素晴らしさに触れることが出来て良かったと思っているし、ファインダー機能はどうあれ、フジフイルムがレンジファインダースタイルのカメラを作っていることに感謝した。
EVFでセンサーが生み出した画を見るのはそれはそれで楽しい訳だが、しかしOVFでそのままの景色を見据えるというのもまた作品に良い影響を与えるはずだ。特に今回のような自然が多いところでは、ファインダーを覗いた先に景色が広がるというのは気持ちがいい。
そんな体験が出来るのは今のところライカかフジフイルムしかない。
私のような庶民にも手が届く金額で素晴らしい体験が出来ることに感謝し、それを一番楽しめるX-Pro2にも感謝し、X-Pro3には今後もよろしくと伝えることにする。


この時撮影した写真はこちらにてご覧いただくことが可能です。


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