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DX推進に必要なデジタル知識と他社事例活用

 前の記事で、中小企業がDXを推進し、成功させるためには、デジタル技術活用によって目指す姿を明確にする必要があると記載しました。具体的にどのように明確化するのかが課題になると思われます。
 以下に、目指す姿を考える上で、必要となるデジタル知識と目指す姿検討に有用な他社事例活用について、記載します。

目指す姿明確化のために必要なデジタル知識

 デジタル技術活用によって目指す姿の検討は、①「競争優位を確保するために実施すべき課題の把握」、②「課題をデジタル技術で解決する方法の検討」の2ステップと考えます。検討を行うためには、会社の業務に対する知識を有し、かつ、デジタル技術による課題解決方法を考えられるデジタル知識が必要になります。 会社の業務に対する知識は、当然、有していると考えますので、問題になるのはデジタル知識です。
 但し、デジタル知識は、技術に関する詳細な内容を知る必要はないと考えます。必要なのは、幅広いデジタルに関する知識です。具体的には、技術の名称と活用方法の概要程度です。
 例えば、 人工知能(AI)というデジタル技術があります。 最近では、ChatGPTがニュースなどに取り上げられていますが、「人工知能(AI)は、従来、人が実施することを前提としていた業務を置き換えることができる」というような知識で十分と思われます。
 知識習得のために特別なことは必要ないと思います。新聞やビジネス雑誌などで取り上げられているデジタル用語のイメージを理解できれば十分と考えます。

デジタル活用による目指す姿の検討方法

 デジタル技術活用によって目指す姿は、自社の強みや弱み、従業員・自社設備の状況などの内部要因、顧客・社会の要求内容の変化などの外部要因から会社にとって最良な姿を検討する必要があり、各会社で異なると考えます。当然、教科書的な答えはなく、よって、自ら考える必要があります
 例えば、「自社製品の目視検査において、判断にバラツキが生じ、不良品の出荷事象が発生している」という場合に、精度が高い検査をバラツキなく行うために「製品の画像情報をAIで判断させて合否判定を行う」という発想ができるかどうかです。発想できれば、AIに知見があるITベンダーに実現性や難易度などを確認すればいいと考えます。
 以上のような「こんな感じでデジタル技術を活用すれば、課題解決できる」という経営課題とデジタル技術を結びつける発想、ひらめきが重要だと考えています。「発想やひらめき」を、自分の持っている知識で考えられるかどうかです。考えられない場合は、以下に記載する他社のデジタル技術導入事例の活用が近道ではないかと考えます。

目指す姿の検討における他社導入事例の活用

 知識や経験がないことに取り組む場合、どのように対応するかが課題になります。答えの一つとして、歴史に学ぶことが考えられます。
 では、歴史とは何かと言うと他社のデジタル技術導入事例です。具体的には、他社の事例から活用内容を把握し、自社の課題解決に結びつけて、目指す姿を考えることだと考えます。
 事例は、新聞・ビジネス雑誌・WEB上のデジタル情報サイトなどを活用して収集できます。私がよく参考にするサイトは、以下のようなものです。

日経クロステック
日本経済新聞電子版
ITmedia
MONOist
IT Leaders

 例えば、人が行う業務をAIに置き換えて、効率化を図ろうと取り組んでいるを事例として、以下に7例を示します。いずれも2022年にデジタル情報サイトなどに掲載されたものです。

①配管の表面腐食状況の点検業務(三菱ガス化学)
②養豚場での豚の発情状況の確認業務(日本ハム)
③列車ダイヤ・車両運用計画の作成業務(多摩都市モノレール)
④新商品開発時の類似形状図面の探索業務(ニコン)
⑤駅構内にいる人の監視・警備の業務(東急電鉄)
⑥顧客からの問い合わせ対応業務(JCB)
⑦銀行の顧客への融資判断業務(八十二銀行)

 以上は、従来、人がルールや経験に基づいて判断していた業務をAIに置き換えるものです。個々の事例は、直接当てはまらないと思いますが、人手での実施が常識の業務をAIで置き換えるということが出来ているという他社の事例から、自社でもAIに置換えて効率化できる業務がないかという視点で見ることで、新しい発想が生まれる可能性があると考えます。
 AIに限らず様々なデジタル技術導入事例の目的や背景、進め方が類似している他社の事例内容を自社に置き換えて、類似のことができないかを考えることで、目指す姿を考えていくことができると考えています。
 イメージを図示します。上記②「養豚場での豚の発情状況の確認業務」の事例を製品の目視検査に置き換えて考えるというイメージを作成しました。

図-1 事例活用イメージ

 なお、ITべンダーからの提案を参考にするという進め方も考えられますが、すべて依存するのではなく、提案内容を参考として最後は自社で判断して決めるということが重要です。また、ITべンダーの提案で、本当に課題が解決されるかの判断も自社で検証する必要もあります。

まとめ

●デジタル知識は、技術の詳細内容は不要。幅広いデジタルに関する知識が必要。
●新聞やビジネス雑誌などで取り上げられているデジタル用語のイメージを理解できれば十分。
●経営課題とデジタル技術を結びつける発想、ひらめきが重要。
●発想やひらめきを考えられない場合は、他社導入事例の活用が近道。
●他社の事例内容を自社に置き換えて、考えることが重要。

 以上、デジタル技術活用によって目指す姿について記載しました。私は、経営者が「こんな会社にしたい」「こんな会社にしたら皆んなが誇りをもって働いてくれる」というような想いで、目指す姿を決めることが、大切なのではないかと思っています。

参考WEBサイト
日本ハムとNTTデータなど、豚のAI発情検知サービス「PIG LABO Breeding Master」をテスト販売開始 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
国内初 豚のAI発情検知サービス「PIG LABOⓇ Breeding Master」のテスト販売開始~人手の発情確認作業を最大79%削減し、労働環境改善・生産性向上により、養豚業の活性化を支援~ | 日本ハム株式会社 (nipponham.co.jp)

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