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DXとIT化。似て非なる2つのデジタル活用

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が取り上げられる前には、IT化の取り組みが推奨されてきた。2000年に「IT革命」という用語が始めて用いられて以降、デジタル活用と言えば、IT化だった。今は、DXということ?。
 DXとIT化は、どちらもデジタルを活用することで企業をいいものに変えていこうとする取り組みです。目指すべき姿や達成させるものが違うと考えています。

 以下に、DXとIT化の違い、留意点や取り組みの考え方を記載したいと思います。

DXとIT化の定義

 DXとIT化について、納得できた一文がある。日経ビジネスの2020年3月30日号の特集記事「経営改革の最終兵器 DXって何に?」に次の記載がある。

「ビジネスの世界におけるDXの本質は、企業がデジタル技術を駆使して劇的な変化を主体的に起こそうとすることだ。デジタルツールを使って業務の効率化や生産性向上を目指す従来の経営改革の考え方とは次元が違う。」
日経ビジネス2020年3月30日号29頁

 前半部分がDX、後半部分がIT化。当記述によれば、明らかに、DXとIT化は、違うものと言えます。

DXとIT化の違い

 DXとIT化の違いを纏めたものを図に示します。

図1 DXとIT化の違い

 両者の決定的な違いは、目標・目的にあります。DXは、商品・サービスやビジネスモデルの変革によって、競争上の優位性を確保すること。一方、IT化は、コスト削減や生産性向上など既存業務プロセスの効率化や高度化によって、売上・利益などの企業業績の向上を達成させることが目的です。
 そもそも、両者の違いを議論しても意味がないと思っています。それぞれが目指すものが異なり、優劣をつけるものではない。敢えて言うなら、平時のIT化、有事のDXというところかと思います。
 DXとIT化で、活用するデジタル技術は、基本的に同じものです。違いはデジタル技術を手段して業務の効率化や高度化などを実現するのがIT化。IT化によって実現される効率化や高度化を手段として、ビジネスにおける変革を実現するのがDXと考えます。
 DXとIT化の関係をイメージ図にしてみます。

図2 DXとIT化の関係イメージ

 デジタル活用に取り組む場合は、両者の違いを理解することが重要です。例えば、業務効率化のための仕組みを導入して、DXに取り組む場合は、作業時間短縮などの業務効率化を目標とするだけではなく、効率化によって生み出された余力時間などの成果を用いて達成させることを目標と定めることで、取組内容が明確になると考えます。DXによって成果を上げている企業は、DXで目指す目標設定が正しく行われているのだと思います。

 問題なのは、単なるIT化をDXと称して取り組むことだと思います。以前の記事で取り上げた真の成果を達成している企業は、2割にも満たず、5割の企業がある程度の成果という現状は、DXとIT化の違いを理解していないところに要因があるのではないかと考えています。

DXレポート2でのDXの定義

 DXへの取り組みが不十分であると指摘した経済産業省「DXレポート2」では、DXの定義が「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」に3分割された
 DXレポート2が示した図は、以下です。

経済産業省「DXレポート2」34頁
図5-8 DXの構造

 デジタイゼーション、デジタライゼーションは、従来のIT化と考えられます。何故、IT化もDXの範疇に加えられたのか?DXに取り組めと言ったものの、蓋を開けてみたらIT化すらできていない。まずIT化を進めよということだと考えています。まったくデジタル化されていなければ、デジタイゼーション、ある程度、進んでいれば、デジタライゼーションから始めるということだと思います。

 「当社の状況からしたら、DXなんて無理!」と最初から諦めている企業が、「まず、今のアナログ的な業務を段階的にデジタル化し、最終的にDXに繋げる」と考えられるようになります。IT化できていない企業は多数あり、IT化していないからDXはできないと考えなくでいいということです。

DX定義の曖昧さ

 但し、この定義は、間違った認識を生む可能性があると思っています。DXで真の成果を出すためには、デジタルトランスフォーメーションまで実施する必要があるが、単なるIT化もDXの範疇になったことから、IT化の達成でDXを実施したと考えてしまうことです。
 例えば、デジタルツールを導入する場合、導入後にDXを検討するという計画で進めることが多い。ツール導入で何からの成果は必ずあり、満足して次に進まないということは往々にしてあると思われます。結果、ツール導入だけで終わり、DXで目指すべき成果は達成されないということです。
 つまり、デジタイゼーションやデジタライゼーションという言葉により、デジタルトランスフォーメーションの推進が曖昧になるのではないかと危惧を持っています。

 よってデジタル活用計画を立案する場合は、IT化を先に進めるとしても、最終的なDX推進も考慮にいれる。または、IT化とDXを連続して推進することを考えるべきです。特にDXで達成させる姿を明確にして取り組むことが、重要です。

まとめ

●DXは競争優位の確保、IT化は企業業績の向上を目的とする。
●DXとIT化は、活用するデジタル技術は同じだが、目的・目標が違う。そもそも優劣はない。
●IT化によって生み出された効率化をDXにどう活かすかの視点が重要。
●IT化を実施できていない企業が多い。よって、DXの定義が変更された。
●デジタル活用に取り組む場合、DXで達成させる姿を明確にして取り組むことが重要である。

 DXとIT化について、書いてきた後で、記載するのもおかしな話であるが、DXとIT化を明確に区分けする必要もないし、IT化よりDXの方が上で、何がなんでもDXをしないといけないものでもないも思っています。但し、DXという言葉が、独り歩きしているなかで、DXであれ、IT化であれ定義に捉われず、デジタル活用によって目指す姿を明確にして、取り組んでいく必要があると考えています。

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