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もし自分が日産のCMOだったら?/#17マーケティングトレース

さて今回の #マーケティングトレース を何にしようか?と考えていた時に、Googleニュースをみていたら目に飛び込んできた「ヤバすぎる」日産---11年ぶり赤字転落、期末は無配当の記事を見て、「財務分析も取り入れていきたいから日産にしよう」ということで選定。

何がヤバイねん!という興味本位もあります。

自動車市場

まずは自動車市場の動きから。
自動車市場はリーマンショック後にやや持ち直したが、微減傾向にある。
(背景には若年層の車離れはカーシェア市場の伸びがあるでしょう)

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自動車市場の中でも日産自動車のシェアはどうなっているのでしょう?

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2年前のデータですが、厳しい状況ですね。

会社概要:日産自動車について知る

会社名 :日産自動車株式会社
代表  :内田 誠
所在地 :神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
会社設立:1933年12月26日
事業内容:自動車の製造、販売および関連事業
資本金 :6,058億

日産自動車の事業について
日産は主に以下3つのブランドを展開している。
(金融事業もあります)

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財務状況整理

それでは財務状況の整理から始めます。

業績から。

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年度推移でみても2017年をピークに経常利益率が落ち込んでいます。この辺りから売上もやや不安定ですね。
では、問題の2020年度第三四半期をみてみましょう。
(今回のニュースで取り上げられていたところですね)

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売上原価が昨年度83%に対して今年度は86%と3%の違いが生じている。

仮に売上原価率を昨年度と同じ数値にしてみると。。。

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第三四半期決算資料として地域別売上/営業利益内訳の資料を拝見すると、今期は北米メインで売上が大きく落ち込んでいます。

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しかし、営業利益で見ると、日本の落ち込みが-68%なので国内が影響している。アジアセグメントでも大きく落ち込んでいる。
有価証券報告書によると

主な減益要因は、購買コスト削減による増益はあったものの、販売台数の減少によるものである。

とあるので、販売の落ち込みが減益に大きく影響しているとのこと。
USより営業利益の落ち幅が大きいのがきになるところですが、コスト構造(販管費)に違いがあるのでしょうか?

車の販売台数はどうだろうか?

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販売台数はUSの減少分が大きいので、販売台数云々ではなさそう。

決算報告説明資料(9ヶ月累計)では為替、規制対応、原材料高騰によるコスト増の影響と販売不振による影響が今回の営業粗利率に影響しているとのことです。

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今回ニュースで取り上げられた赤字260億は営業利益の大幅減少が大きく影響しています。また、特別損失(減損損失が特に)が昨対比で100億円増加していることが最終的に赤字の原因でした。

では、マーケットシェア圧倒的No1のトヨタと比較してみましょう。

トヨタの業績推移

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リーマンショック後の3年間は苦しい状況でしたが、その後大きく回復しています。

2019年度の第三四半期連結損益計算書の累計比較を行います。

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※両社ともに金融事業込み。
※トヨタは金融事業も収益が大きいため原価率が低く見えていますが自動車に絞ると83%の原価率になります。
※自動車事業で絞らないのは日産が分けて出していないから。

連結では原価率と販管費の差が大きいですね。

トヨタは原価を下げる努力を行なっていることも影響していそうです。

TPSと原価低減の浸透を図りつつ、稼ぐ力を高めていきたいということで全社一丸となって頑張ってまいりました。とくに意識してきたのは、予算やコストを一律でカットするということではなく、相場観やベンチマーク、あるいはお客さまが望む原価といったところをしっかり見極め、共有をした上でその原価に向かって作り込んでいく、そこに向かって全員で知恵を絞っていくという姿勢やプロセス、なによりそういったことができる原価低減のプロ人材を育成することに重きを置いて活動してきました」
※トヨタ決算説明会より

販管費はどうでしょう?
以下は日産の販管費内訳。

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人件費の高さに加えて気になる販売諸費の比率。この中には販売奨励金と呼ばれる「値引き用の費用」が嵩んでいる可能性が高い。

どうやら日産は販売奨励金を使った値引き作戦を過去乱発していた模様で販売シェアを伸ばすための施策として行なっていた。

魅力的な新車が出ていないこともあり、値引きしないと売れない状況に陥っていることも販売不振の要因の1つとも言えそうだ。

次にトヨタの販管費を掲載しようと思いましたが、内訳をどこかでみたものの見当たらずでしたので、割愛。

トヨタの所在地別の営業利益についてみてみると、北米と欧州の「営業面の努力」「諸経費の低減など」による営業利益改善が効いていそうです。
(ここが販管費と関係していそうですね)

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営業面の努力については決算説明動画にて以下の様に解説
・メリハリを付けたインセンティブの効率的な投入
・車種軸の総原価改善活動強化
・工場ごとの生産性改善
・全社一丸となった固定費削減活動

etc…

トヨタは継続的に原価率や販管費を抑える努力をしてきた模様。

一方日産はどうなのでしょう?過去の原価率、販管費比率を見てみましょう。

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直近2年で共に上昇してきていますね。
何が上がってるのでしょうか?

販管費の内訳推移を確認。
気になるところは青色グラデーションでハイライト。

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項目として気になるのは
・広告宣伝費
・販売諸費
・給与及び手当

の3点。
(サービス保証料は必要なものとして捉えました)

 特に気になるのは、2010年以降の広告宣伝費比率の上昇ですね。

気になるとは言え、使いすぎなのか適正なのかが判断出来なかったので、トヨタとの比較でみてみます。

すると、どうでしょう。。。

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なんと日産の方が売上に対する広告宣伝費比率がトヨタよりも1%も多いことが分かりました。これは大きいですね。

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そらびっくりしますよねー。

ここに来るまでに時間がかかりましたが、今までを端的にまとめると

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と言えますね。
(解釈間違ってたら指摘してください、FBがないと合っていると思い込んでしまいます)

では、#マーケティングトレース に入っていきましょう。

PEST分析:外部環境を把握する

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若者の車離れやカーシェアサービスの普及による所有の必要性低下。
ガソリン価格の高騰や消費増税により、保有することによるコストがデメリットと感じるユーザーも多いでしょう。

4P分析:マーケティングミックスの整理

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プロダクトは27車種。
価格帯は車種によってバラつきはあるものの、100万〜1,000万超のものもある。

トヨタと比較すると販売力がない(車種に魅力がない)といった内容もチラホラ見かけましたので、productの比較してみましょう。

カテゴリ別車種数比較

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カテゴリ別車種数で比較すると、どのカテゴリでも日産はトヨタに劣っています。ユーザーからすると選択肢が少ないのが対トヨタとの比較で魅力が劣ってしまうのでしょうか。

次はpromotionをみてみます。
TwitterやInstagramなどSNSアカウントの運用やTVCMなど行っています。
最近のTVCMでは矢沢永吉さんを起用した自動運転訴求のCMです。

他にも新車情報など多くのパターンがリリースされています。日産がどんなプロモーションをしているのか、色々と探してみると面白いものがありましたので掲載しておきます。ProPILOT Park機能を旅館とコラボしたものです。

コネクティッドカーや自動運転が自動車業界のトレンドということもあり、日産も力を入れているのがわかりますね。
その他ギャラリー興味がありましたらこちらから。

トヨタはどんなCMを展開しているのかみてみます。

新車種のイメージに合わせてアスリートを起用し、軽快な走りができるイメージ訴求を行なっています。

子供が親元から離れたあとの夫婦が、昔を思い出すかのようなストーリのCM。ドライブデートを快適に楽しむための車をチョイス。

CMをみていると、日産とトヨタの訴求方法が異なることに気付きました。

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表現として正しいかどうかは別問題ですが、日産は車に搭載されている機能を強く訴求している一方で、トヨタは人生のライフサイクルやイベントのそばに車があることを訴求しています。

似たような「お出かけ」に合わせたCM動画をみてみましょう。
日産

トヨタ

日産は便利な機能やツール、電気自動車の革新的なイメージを訴求しているのに対して、トヨタはイベント時に便利に使えることをさり気なく伝えています。

この伝え方の違いは大きいですね。

次にInstagramについて比較してみます。

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少しテイストが異なっています。
日産は新車情報の中に猫(キャンペーン企画コンテンツ)レゴ(レゴ史上初日本車コラボ)を使ったムービーが混ざっています。
一方でトヨタはYouTuberを使った企画動画がメインになっています。
(直近のコンテンツです)

比較するとこんな感じでしょうか。
Instagramフォロワー数では約12万人ほどトヨタに差をつけられています。

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4Pで両社を比較してみると以下の様にまとめられます。

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STP分析:ターゲットとポジショニング整理

セグメント、ターゲティングを考えていたら車種を絞り込まないとそもそもターゲット設定できないことに気づきました笑

なので、日産全体で考えると車種によって変わってくるので以下切り口でモデルことに対応させていく必要ありですね。

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ポジショニング
日産としてのポジショニングを考察してみたいと思います。

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両社の販売サイトを見ていると、

日産 :先進技術、先進的なデザイン
トヨタ:安心技術、デザイン性豊富

が特徴的だと読み取りました。
ちなみにこれまで両車種乗ってきた個人的に感じているポジショニングマップはこちらです。

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1台目は日産のスポーツカー、2台目は日産のセダンと乗ってきましたが、
イカツイ、カッコいい、だけど壊れやすい。
3台目トヨタのセダン、4台目トヨタのミニバンと乗ってきましたが、上品、高級、壊れにくい。
(トヨタ車はあと2回ほど乗り換えてます)
といったポジショニングになっています。

ここまでを簡易的にまとめると、以下になりますね。

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もし自分が日産のCMOだったら?

さて、ここから何を打ち手とするか、ですね。
課題は

営業利益率の改善

です。

まずは、営業利益率を圧迫している売上高販管費比率の改善ですね。

中でも売上高に対する広告宣伝費比率がトヨタと比較すると(業界でも1~2%程度)1pt高い2.6%占めているので、ここを2%まで下げる取り組みが必要です。

0.6%改善すると。。。

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改善幅が大きいですね。
何を削るか、は広告宣伝費の構成次第なのでなんとも言えませんが、矢沢永吉さん大坂なおみさんの起用は広告宣伝費用の比率としては大きいと想定しています。

TVCMで訴求したいのは、有名タレントではなく車なので一般人起用しても伝えたいことはユーザーに伝わります。

まずはじめに取り掛かりたいのは

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ですね。

もう一つの課題「売上低迷」でしょうか。販売報奨金がないと売れない様な構造になっているのであれば、そこを改善しないといけません。

新たなユーザーを獲得するのも手ですが、ポテンシャルの高そうなユーザーをターゲットにしたいと思います。

今回ターゲットとしたいユーザーは子離れした親世代に対してアプローチしたい。

そのプロジェクト名は

ReStartプロジェクト

とします。

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のようなキャッチコピーでプロジェクトをスタートしたい。

今50~60代の人が子育てから解放されたと仮定すると、30~40年前のカーライフを思い出してもらいたい。

「もう子供も手離れしたからカーライフを再び楽しもう」と。

当時を思い出してもらうために、50~60代世代が現役で走っていた1980~2000年あたりの日産車を復刻させるのはどうか。

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中には今も現役で続いているモデルはあるが、どこか昔の原型を感じなくなっていることもあり、当時の車種を思い出させるようなもので復刻させるのが面白いと思う。

個人的には1970年代あたりの車がそのまま復刻されると嬉しいなと思っています。

ただ、この打ち手は開発コストが莫大なのでCMOとしての打ち手としては決断が大きすぎるため、ちょっとおまけ程度になります。

もっと現実的な打ち手としては、Promotionのテコ入れを行います。

テコ入れするのは、訴求内容の構成。
これまでは、機能訴求を強く押していたが、50~60代のユーザーに対して、昔を思い出してもらうためにストーリー訴求を行う。

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ストーリーイメージは、以下トヨタのCM

使うメディアは以下。

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50代〜の世代は新聞定期購読やTVCM視聴は多いし、OOHや電車広告は通勤中に見てもらうために実施(電車広告は怪しいが。。。)

YouTubeも若年層と比較すると視聴割合は低いが、十分リーチできると想定。

年代別のYouTube利用割合については以下。

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打ち手をまとめると

・営業利益率改善のため売上広告費比率2.6%から2%へ。
 打ち手:有名タレントの起用をやめる&その他広告宣伝費用見直し
・販売台数増のためのRestart projectの実行
 打ち手①:機能訴求からストーリー訴求へ
 打ち手②:(おまけ)1980年~1990年頃の名車復刻

以上です!

今回はめちゃくちゃ時間がかかってしまいましたが、楽しかったです笑。



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