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娯楽映画研究所ダイアリー 2021年10月4日(月)〜10月10日(日)

2021年10月4日(月) 佐藤利明の娯楽映画研究所 日活アクション AGAIN! ギャング・ワンダーランドへようこそ!

10月4日(月) 『赤ひげ』(1965年・東宝・黒澤明)・『地球最后の日』(1951年・パラマウント・ルドルフ・マテ)・『空気の無くなる日』(1949年・日本映画社・伊東寿恵男)

 早起きして、TOHOシネマズ錦糸町で『赤ひげ』(1965年・東宝・黒澤明)を午前10時の映画祭で。東宝クロサワ映画の到達点。理想、テーマ、シナリオ、作劇、演技、演出全てが最高のクオリティ。ある意味、立派過ぎるのが難点かもしれないが「貧困と無知」が生む庶民の悲劇に、心底怒る赤ひげ(三船敏郎)に共感。新政権に爪の垢でも煎じて服ませたい!

 ある意味エピソード集なのだけど、構成が見事で、ガッシリした演出でひとつひとつの物語が胸に迫る。藤原釜足さん、山崎努さん、それぞれの物語だけで映画一本分の手ごたえがある。とくに桑野みゆきさんと山崎努さんの愛の物語は、クロサワ流江戸落語というか。ヘビーだけどイイ。

 『地球最后の日』(1951年・パラマウント・ルドルフ・マテ)。岸田内閣最初の日に観たのは、子供の頃愛読していた「地球爆発」の映画化!空想科学映画の楽しさ! Facebookにアップしたものに1000文字ほど加筆しました。

 明治42年ハレー彗星の接近で、5分間だけ「空気が無くなってしまう」との噂を、真に受けてしまった、北陸地方のとある村の騒動を描いた『空気の無くなる日』(1949年・日本映画社・伊東寿恵男)を久々に観た。原作は岩倉政治が1947年に発表した児童文学。「地球爆発」とともに、小学校の図書室で読んだ。というかパニックSFとして愛読書だった。パニックSFとして映画版も、小学校の視聴覚教室で16ミリで上映されて観た。おそらく、最初に観た昭和20年代の映画だろう。

10月5日(火) 『宇宙戦争』(1953年・パラマウント・バイロン・ハスキン)


 子供の頃、ジョージ・パルという名前は特別だった。雑誌「スクリーン」で双葉十三郎先生が紹介していて、アメリカ(チェコ出身だけど)の円谷英二監督みたいな存在と、それなりに認識していた。

 先日アップした『地球最后の日』(1951年・パラマウント)を最初に見たのが、小学四年生のとき、1974年3月29日、フジテレビの「ゴールデン洋画劇場」で放映されたバージョンであることを、とり・みきさんにご教示頂いた。その年、小学五年生の夏休みにジョージ・パル製作、バイロン・ハスキン監督『宇宙戦争』(1953年・パラマウント)がオンエアされていることも教えて頂き、ああ、僕が最初に観たのは、このときだったと感無量に。そこでAmazonプライムビデオで1953年版『宇宙戦争』を久々に、娯楽映画研究所のスクリーンに投影。

10月6日(水) 『赤垣源蔵』(1938年・日活京都・池田富保)

 阪東妻三郎さん主演『赤垣源蔵』(1938年・日活京都・池田富保)の、戦後改題再上映版『忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜』(1954年)を、アマプラで、娯楽映画研究所シアターのスクリーン上映。

 「忠臣蔵」で、堀部安兵衛、不破数右衛門と並ぶ、サムライ・ドランカー、呑んだくれヒーロー・赤垣源蔵を、我らがバンツマさんが豪快に演じたサイドストーリー。講談でお馴染み「赤垣源蔵徳利の別れ」をメインにしたスピンオフもの。演出は「忠臣蔵」ならお手のものの池田富保監督。


10月7日(木) 『くちづけ』(1957年7月21日・大映東京・増村保造)・『薄桜記』(1959年・大映京都・森一生)

 久しぶりに神保町シアター「恋する映画」特集で堪能。何度見ても素晴らしい青春恋愛映画の佳作! 藤巻潤さんと江波杏子さんが、バイクシーンの吹き替えをされたそうです。と、藤巻潤さんに伺いました。

 ここのところ、三船プロの「大忠臣蔵」を視聴しながら、歴代「忠臣蔵映画」、スピンオフ作品を平行で観ている。この面白さ、のめり込みは、何かに似ていると思ったら「MCU」「スターウォーズ」の楽しみ方と同じであることに気づいた(笑)

 今日、昼間、本所松坂町の吉良邸の前を通った時に、観ようと決めた、カツライスの傑作『薄桜記』(1959年・大映・森一生)は、「討ち入り」「デススター爆破」とするなら、「忠臣蔵シネマティック・ユニバース=CCU(笑)」における『ローグ・ワン』ということに。

10月8日(金) 『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年・英・マーティン・キャンベル)・『堀部安兵衛』(1936年12月17日・日活=太秦発生・益田晴夫)

 昨夜は15年ぶりに『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年・英・マーティン・キャンベル)をBlu-rayで堪能。ダニエル・クレイグをボンドに仕立てるための、作り手の創意工夫に痺れる。殺しのライセンスを持つところから、アフリカでの肉体アクション、マイアミ空港での大暴れがあってのモンテネグロのルシッフルとの大勝負。緩急の見せ場の連続。

 ルネ・マティス、フィリックス・ライターの登場。ヴェスパー・リンドへの愛情。そしてヴェニスの惨劇。イアン・フレミング原作のエッセンスを散りばめつつ、ボンドに見えないと散々言われたクレイグの新たなボンド像を創造。

 デヴィッド・アーノルドの音楽は、ヴェスパーとボンドの「愛のテーマ」のイントロに「愛はすべてを越えて」を匂わせるモチーフに。『女王陛下の007』だなぁと。いっそ使えばいいのにと思った。15年経って『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で流れて感涙。148分の長尺もボンド映画らしくて大満足。

 そして、ラストのミスター・ホワイトの脚を撃って「ボンド、ジェームズ・ボンド」と名乗る瞬間! モンティ・ノーマンの「007のテーマ」が流れて、テンションが上がる。今となってはは、ミスター・ホワイトはボンドにとって「マドレーヌの父さん」なので5部作を見届けた後に、不思議な感慨がある。

 だけど主題歌「ユー・ノウ・マイネーム」のイントロを聞くたびに「科学忍者隊ガッチャマン」を連想してしまうのは、変わらなかった。

 今夜の「CCU=忠臣蔵・シネマティック・ユニバース」は、昭和11(1936)年、日活京都作品、黒川弥太郎主演『堀部安兵衛』(1936年12月17日・日活=太秦発生・益田晴夫)を、Amazonプライムビデオで。戦後、大映オールスターの『忠臣蔵』(1958年)で”イイ人”多聞伝八郎を演じた黒川弥太郎さんが、飲んだくれの中山安兵衛から、赤穂藩士・堀部安兵衛となり、討ち入りで大活躍する「忠臣蔵」映画。

10月9日(土)『007/慰めの報酬』(2008年・マーク・フォスター)・『おかる勘平』(1952年3月21日・東宝・マキノ雅弘)

 本当に久しぶりに『007/慰めの報酬』(2008年・マーク・フォスター)を娯楽映画研究所シアターに投影。上映時間が106分とシリーズでは、一番短い。それゆえ、キリッと冷えたビールの小瓶のようなスッキリした味わい。コクがないとか、物語が平板だとか、当時は色々と言われていたが、僕は結構お気に入り。

 三船プロ「大忠臣蔵」の面白さは、ご存知の物語に史実とフィクションと新解釈を交えての展開にある。知ってる話と、そうなのか!とふむふむの連べ打ちが楽しい。すると過去の「忠臣蔵」映画が観たくなり、関連作をたどるうちに、あれ「MCU」みたいに楽しんでるぞ!と「CCU=忠臣蔵・シネマティック・ユニバース」と名付けた次第。堀部安兵衛のあれこれを見ていると、まさに「ホワット・イフ?」の世界(笑)

 今日のCCU=忠臣蔵・シネマティック・ユニバースは、申し合わせたかのように、二組のお軽と勘平の物語。「大忠臣蔵」第25話と26話「悲恋お軽と勘平 その一、その二」では、萱野三平=石坂浩二さん、お軽=山本陽子さん(当初は吉永小百合さんの予定)。マキノ雅弘『おかる勘平』(1952年・東宝)では帝劇ミュージカル「お軽と勘平」のバックステージもので、エノケンさん、越路吹雪さん。どちらも、タップリ、味わった。

10月10日(日) 『007/スカイフォール』(2012年・英・サム・メンデス)・『忠魂義烈 実録忠臣蔵』(1928年3月14日・マキノ・牧野省三)

 Blu-ray発売以来、8年ぶりに『007/スカイフォール』(2012年・英・サム・メンデス)を娯楽映画研究所シアターのスクリーンに投影。142分の上映時間は、長めのボンド映画ではデフォルトなのだけど、前作『慰めの報酬』(2008年)よりも40分近く長いので、タップリ味わったという満腹感がある。まあ、前作の短さもメリハリがあっていいかなと。

 今宵のCCU=忠臣蔵・シネマティック・ユニバースは、昭和3(1928)年に日本映画の父、娯楽映画マスターの牧野省三が、自身の「忠臣蔵映画」集大成、決定版として取り組んだ世紀の大作『忠魂義烈 実録忠臣蔵』(1928年3月14日・マキノ・牧野省三)をスクリーン投影。オリジナルは80分だったが、その後、フィルムが散逸して、昭和43(1968)年に牧野省三40年忌と無声映画鑑賞会十周年を記念として、マツダ映画社の松田春翠が見つけたフィルムに、本作の同時上映作品『間者』(1928年・マキノ正博)の討ち入りシーンを64分に再編集。それが現在観ることの出来るフィルムである。松田春翠先生の名調子の説明も楽しく初期「忠臣蔵映画」として、そのエッセンスをタップリと楽しむことが出来る。



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