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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年4月11日(月)〜4月17日(日)

4月11日(月)『四十二番街』(1933年・ワーナー・ロイド・ベーコン)・『無責任遊侠伝』(1964年・東宝・杉江敏男)

シネ・ミュージカル史縦断。原点回帰として『四十二番街』(1933年)を久しぶりに堪能! ハリウッド・ミュージカルのクラシックス!バズビー・バークレイの万華鏡的ナンバーに酔いしれる! アマプラで見れますよ!

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月11日(月曜日)は、『無責任遊侠伝』(1964年7月11日・杉江敏男)。こちらのDVDのコメンタリーでは、淡路恵子さんとじっくり対談をさせて頂きました。本編とは関係なく、淡路さんの映画人生をタップリと伺って、他にはないインタビューとなりました。その収録以来の鑑賞となりました。『香港〜』と2本撮りでマカオロケをしたと、犬塚弘さん、谷啓さんから伺いました。

ロケは冬、セットは初夏の撮影なので、植木さんの服装が冬服だったり夏服だったり。博打好きの「スーダラ男」植木さんと、会社の専務・ハナ肇さんが大好きな博才を生かしての大作戦。これも杉江監督の丁寧な演出で、マカオに行くまでの日本パートが「サラリーマン喜劇」のバリエーションとしてなかなか楽しい。植木さんの同僚役で、われらが古谷敏さんも出演! 

で、巨悪は平田昭彦さん、その手下の怪しげな中国人に天本英世さん。インチキブローカーにジョージ・ルイカーさん。もうそれだけで楽しい。改めて観ると本作の上田等のキャラは『クレージー黄金作戦』(1967年)の町田心乱のプロトタイプだったことに気づく(笑)

トップシーンの「馬鹿は死んでも直らない」の替え歌「バクチは死んでもやめられない」と劇中の「無責任数え歌」は、プロモーションビデオみたいでかっこいい。後者は、なんと『君も出世ができる』(1964年5月30日・須川栄三)「アメリカでは」のセットを流用している。唄う植木さんの隣には加藤茂雄さんの姿も!

「君も出世ができる」と同じセットデザイン!

4月12日(火)『スパークス・ブラザース』(2021年・エドガー・ライト)・『踊る三十七年』(1936年・ワーナー・ロイド・ベーコン)・『ホラ吹き太閤記』(1964年・東宝・古澤憲吾)

TOHOシネマズシャンテで、エドガー・ライト監督『スパークス・ブラザース』を堪能。150分のドキュメンタリーに、彼らと僕たちが生きてきた半世紀が凝縮されている。スーパースターになることなく、だけど「気になるグループ」として1980年代から、なんとなく聞いてきたスパークス兄弟の創作、ヒストリー、キャラクター、脳みその中身を、多彩な証言者たちが「語る、語る、また語る」。なんとも心地よい、そしてクレイジーで、だけども大切な大切な時間。面白すぎる。彼らのアイデア、音楽によるレオス・カラックスの『アネット』と梯子して観ることができるなんて!これはオススメです。寅さんファンも必見。スパークスの二人が柴又駅前の寅さん像とパチリ。そして帝釈天参道を歩き、上海軒の前の踏切にたたずむ!
我らが岸野雄一さんも登場!

デイリー・スポーツの北村泰介さんから、クレイジーキャッツについてのインタビューを受けました。

シネ・ミュージカル縦断研究。『踊る三十七年』(1936年・ワーナー・ロイド・ベーコン)。バズビー・バークレイのセンス爆発!ゴールドディガーズ・シリーズ第5作!

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月12日(火曜日)は、『ホラ吹き太閤記』(1964年10月31日・古澤憲吾)。クレイジー初、古澤憲吾初の時代劇スペクタクル。脚本は笠原良三さん。『日本一のホラ吹き男』の主人公のキャラクターを、そのまま木下藤吉郎に置き換えたら? という発想の痛快時代劇。なのでフォーマット的には、実は「日本一の男」シリーズ。

冒頭、戦国時代のモンタージュに芥川隆行さんの名調子のナレーションが、時代劇きぶを高めてくれる。そして希代の名曲「だまって俺について来い」を快調に歌う植木さん!歌い終わると、ひたすら走って画面の彼方へ。どうかしている古澤演出! それゆえに勢いが違う!

で、蜂須賀小六(東野英治郎)との出会い。大風呂敷を敷いて、将来は家臣にすると宣言するのもホラ吹き男。織田信長(ハナ肇)に取り入り、三段出世して、ねね(浜美枝)を娶るまでの痛快さ。もはや無責任男の片鱗はなく、高度成長を邁進するスーパーサラリーマンの鑑のようなホラ吹き藤吉郎の爽快さ!

桶狭間の戦いまで、一気呵成に展開していくパワフルなスーパー時代劇。コクはないけど、エネルギーの塊のような娯楽映画。ある意味、日本一シリーズの早過ぎた集大成。年に一度は見るべき日本映画の至宝!

地方版ポスター

4月13日(水)『夜は巴里で』(1938年・ワーナー・レイ・エンライト)・『花のお江戸の無責任』(1964年・東宝・山本嘉次郎)

シリーズ第25作『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(監督・満仲勧  脚本・大倉 崇裕)は4月15日公開。シリーズでもダントツの傑作!今年も、劇場パンフレットの取材、執筆をしました。先程、刷り上がり見本が届きました。恒例仕事とはいえ、これでようやく春がきた!という気持ちになります。

シネ・ミュージカル縦断研究。『夜は巴里で』(1938年・ワーナー・レイ・エンライト)。ゴールドディガーズ・シリーズ第6作にして、ゴールドディガーズ、パリへ行く‼️ バズビー・バークレイのセンス爆発‼️

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月13日(水曜日)は、クレイジー時代劇第2作『花のお江戸の無責任』(1964年12月20日・山本嘉次郎)『エノケン青春酔虎傳』(1934年・PCL)はじめ、戦前エノケン映画をものしたヤマカジ監督が、現代のエノケンとしてクレージー映画を撮る、という藤本真澄ならではの企画。発想はアナクロだが、歌舞伎の『助六所縁江戸櫻』をベースに植木等の助六、『極付幡随長兵衛』の幡随長兵衛をハナ肇、『浮世柄比翼稲妻』の白井権八を谷啓が演じる本歌取りコメディ。

原案は歌舞伎評論家、劇作家の戸板康二。脚本は田波靖男とヤマカジ監督。バランスの良い時代劇コメディになっている。

助六(植木等)は、髭の意休に殺され父の仇を討つべく江戸表へ。母役を吉川満子さんが演じているのは『日本一のホラ吹き男』の飯田蝶子さん、坂本武さんとセット感があって嬉し! その心は松竹蒲田調!!

しかも揚巻太夫はあんぱんのヘソ!団令子さん!その朋輩に池内淳子さん! 助六物は、曽我兄弟の仇討ちバリエーションなので、クライマックスの勝負が見せ場だが、それを野球拳にしてしまう!ヤマカジイズム! そのシーンの「じゃんけん節」でひときわ甲高いのが、幇間・大泉滉さん!
主題歌「無責任数え唄」大江戸バージョンが楽しい!

エノケン映画のヤマカジ監督!

4月14日(木)『聖林ホテル』(1937年・ワーナー・バズビー・バークレイ)・『日本一のゴマすり男』(1965年・東宝・古澤憲吾)

シネ・ミュージカル史縦断。『聖林ホテル』(1937年・ワーナー・バズビー・バークレイ)。バズビー・バークレイとベニー・グッドマンの幸福な出会い! 名曲「ハリウッド万歳!」をご機嫌に演奏するベニー・グッドマン楽団! これぞシネ・ミュージカルの楽しさ!

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月14日(木曜日)は、日本一シリーズ第3作『日本一のゴマすり男』(1965年5月29日・東宝・古澤憲吾)。笠原良三脚本によるスーパーサラリーマン映画の極北。大学を無事卒業して、時代の花形自動車ディラー「後藤又自動車」に就職した中等(なか・ひとし 植木等)が、徹底的に上司にゴマをすりまくって大出世を果たす。『ニッポン無責任時代』の反骨精神よ何処へ?なのだけど、植木等のパワーをさらに加速させる古澤憲吾演出で、この上なく楽しい娯楽映画になっている。

主人公の限りない妄想が、究極のミュージカル・シーンに発展する「ゴマスリ行進曲」(作詞・青島幸男 作曲・萩原哲晶)のインパクト。チープなセットだけどMGMミュージカルのような華やかさがある。これぞクレージー映画。

「ゴマをすってすって擦り当てろ!」。出世と無縁のサラリーマン生活を過ごした父(中村是好)の教えに従い、人見明→犬塚弘→有島一郎→高田稔→東野英治郎に取り入り、三段出世を果たす主人公の言動の痛快、爽快さ!
植木等が唄えば、橋幸夫の「恋をするなら」もクレイジーソングに昇華されてしまう!挿入歌の数々の楽しさ! 浜美枝の見事なツンデレぶり! 何度観ても、圧倒的なバイタリティーコメディ!

学生服が似合う40歳!

4月15日(金)NHK文化センター青山「クレイジーキャッツの音楽史」第一回・「スタートレック:ピカード」S2第7話

今日からの「クレイジーキャッツの音楽史」講座第一回目は11曲ほど紹介予定(クレイジー以外も)。ラジオでも放送されるので構成も思案橋。久しぶりに「ゴリガン男」ばりに脳みそフル回転(笑)。全4回なので神曲ばかりを投入すると後半戦とのバランスもあるので果たして?

NHK文化センター青山「クレイジーキャッツの音楽史」第1回、ご参加の皆様ありがとうございました! 結成の頃、ジャズ喫茶時代、テレビの黄金時代、クレージー映画、大瀧詠一さん、星野源さんによるリスペクトをたどりました。次回は5月6日「ジャズブームと7人の猫たち」です!各回のみ参加もOKです。

今夜は帰宅が遅く「スタートレック:ピカード」S2第7話「モンスター」を観て就寝。タイムスリップものからインナースペースものに。というか、ピカードの隠している過去を探る脳内ダイブするのだけど、展開がホロデッキ・ネタのようで「スタートレック」を観ている気分がマシマシ(笑)

「スタートレック:ピカード」シーズン2は、セブン・オブ・ナイン(ジェリー・ライアン)大活躍で、セブン・ファンはたまらない。ボーグ・インプラントが取れて、人間として、アニカ・ハンセンとして、21世紀の地球で生き生きとしている姿に胸が熱くなる。ジェリー・ライアンが程よい感じに歳を重ねているし!

で、ミュージカル映画もクレイジー映画もお休みしてしまった。なので今夜はバスビー・バークレイの『大学祭り』(1937年・ワーナー)と古澤憲吾の『大冒険』(1965年・東宝)を観る!と心に決めている(笑)いずれも「どうかしてる監督」「どうかしている映画」。共通するのは「大」がつくこと(笑)

4月16日(土)『大学祭り』(1937年・ワーナー・ウィリアム・ケイリー)・『大冒険』(1965年・東宝・古澤憲吾)

ハリウッド・ミュージカル縦断。ワーナー・ブラザースの1930年代は、バズビー・バークレイのプロダクション・ナンバーが百花繚乱! 1937年の『大学祭り』をプロジェクター投影。クライマックスのマスゲームが圧巻!のカレッジ・コメディ。

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月16日(土曜日)は、”クレージィ.キャッツ"結成10周年記念作品『大冒険』(1965年10月31日・古澤憲吾)をスクリーン投影。これまでのスーパーサラリーマンもの「日本一シリーズ」や、クレイジー七人組が起業する「クレージー作戦」パターンとは違う、文字通りの冒険アクション。フィリップ・ド・ブロカ監督のフランス映画『リオの男』(1964年)のようなアクション映画を目指している。

しかも円谷英二監督の特撮をふんだんに盛り込んでのスーパー植木等さんの体技を駆使した痛快篇。森繁社長ならぬ総理、越路吹雪さんの悪役。しかも敵はナチスの残党、国際的偽札偽造団!! 古澤憲吾演出は、ある意味ムチャクチャというか、勢いだけで、多少の矛盾をぶっ飛ばして行くのがイイ。しかも直線的な構成なので、もたつかずにクライマックスまで一気に突き進んでいくのが気持ちいい。

ラストの敵の秘密基地を日米連合軍がミサイル攻撃してしまう、トンデモ展開の乱暴さすら、気にしない気にしない、と言わんばかりの古澤演出。
エンディングの「大冒険マーチ」観たさに、何度でも観たくなる究極のクレージー映画。最後のハナ肇さんの掛け声が「突っ込め!」だし。どうかしてる傑作!!

007をイメージしたデザイン

4月17日(日)『泥酔夢』(1934年・ワーナー・レイ・エンライト)・『無責任清水港』(1966年・東宝・坪島孝)

昨日は、阿佐ヶ谷ネオ書房「キジムナーkids」刊行記念・小中和哉監督と切通理作さんのトーク。知られざる上原正三さんに触れる充実の2時間。桜井浩子さん、田中敦子さん「ウルトラQ」時代からの上原さん所縁のレジェンドもご参加。まさに夢幻空間でもありました。

シネ・ミュージカル横断研究。バズビー・バークレイの極め付けにして、異常なセンスが大爆発!これぞ人間万華鏡!『泥酔夢』(1934年・ワーナー・レイ・エントライト)の目眩く世界!

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。4月17日(日曜日)は、坪島孝監督としては2作目のクレージー映画にして、初の時代劇『無責任清水港』(1966年1月3日)。前年の正月映画『花のお江戸の無責任』(1964年・山本嘉次郎)に続いての大作。お馴染み次郎長一家の物語だが、ベテランの小国英雄脚本は、あくまでも「植木等=フリーランスの無責任男」のキャラを守っているので、次郎長一家という組織と、追分三五郎(植木等)の距離感を弁えている。それがいい。

だから追分三五郎はあくまでも、次郎長(ハナ肇)には草鞋を脱がずに、牢屋で意気投合した森の石松(谷啓)の食客(いそうろう)に徹している。アンチ組織、アンチ義理人情のドライな一匹狼のやくざなのである。

心優しき、坪島監督の演出は明るく、ホンワカしているので、パワフルな無責任男には見えないけど。三五郎は無銭飲食を重ね、イカサマバクチをして荒稼ぎをする。ただし、そのやり方が鮮やかなので「処世術」であり「ポリシー」であるので、いやらしくない。

植木さんのキャラは、徹頭徹尾明るく元気で、テレビのコントやクレイジー舞台公演でのノリ。古澤作品の常軌を逸したキャラを基準にすると物足りないと感じるけど、かなり面白い。

クレージー映画を順番に見てくると、谷啓さんのキャラが本作から、本格的に立ってきている。時代劇の前作『花のお江戸の無責任』の白井権八もかなりウエイトがあったが、本作では、完全に植木等さんと並列。三五郎と石松コンビがメインなので、大政(平田昭彦)、大瀬の半五郎(土屋嘉男)などの豪華キャストの次郎長一家が少しもったいないけど。少年時代にエノケン映画が大好きだったという坪島孝監督ならではのテイストは、昭和40年代のクレージー映画の「もう一つの柱」となっていくのも納得。

坪島孝監督のテイストが楽しい


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。