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『大学祭り』(1937年10月4日・ワーナー・ウィリアム・ケイリー)

ハリウッドのシネ・ミュージカル縦断研究。バズビー・バークレイがプロダクション・ナンバーを手がけた1930年代のワーナー作品を連続鑑賞。昨夜は、ディック・パウエル主演のカレッジ・ミュージカル”Varsity Show”『大学祭り』(1937年10月4日・ワーナー・ウィリアム・ケイリー)を、米盤DVDでスクリーン投影。

アメリカ盤DVDジャケット

クライマックスのブロードウェイでのショー場面のプロダクション・ナンバー”Have You Got Any Castles, Baby?”(作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー)を、バズビー・バークレイが演出。名伯楽のジョージ・バーンズがキャメラを担当している。

ジョージ・バーンズはサイレント時代から活躍していた名キャメラマンで『フットライト・パレード』(1933年)でバークレイのミュージカル・ナンバーを手がけ、『泥酔夢』(1934年)、『ゴールドディガーズ36年』(1935年)、『カリアンテ』(1935年)などでコンビを組んでいる。いわばバークレイの万華鏡的ルックに貢献したキャメラマンである。

今回は大学を舞台に学園祭”Varsity Show”で上演するミュージカルの演出を、学生たちがOBのブロードウェイの演出家・ディック・パウエルに依頼するも好事魔多し。状況が二転三転して、果たして成功するのか? というシンプルなストーリー。1937年10月4日に全米で公開された時は上映時間が121分あったが、1942年のリバイバル時に、40分も大幅にカットされて80分で上映された。現在観ることができるのは、80分バージョン。なので予告編にあるカレッジ・ミュージカルの場面などが欠落しているのが残念。

レイン・シスターズ

ヒロインにレイン・シスターズのローズマリー・レイン。ディック・パウエルとは『大学祭り』『聖林ホテル』(1937年)、『夜は巴里で』(1938年)で連続してカップルを演じることになる。そして可憐なキャンパス・ガールでダンスの名手に、ローズマリーの妹・プリシラ・レイン。レイン・シスターズの三女と四女が出演している。

ローズマリー・レイン、ディック・パウエル

またディック・パウエルの学生時代の親友で、大学でビッグバンドを結成している教員には、フレッド・ウェアリング。そのバンドにフレッド・ウェアリング&ペンシルヴェニアンズ。カレッジ・パーティやクライマックスのプロダクション・ナンバーでご機嫌な演奏を聞かせてくれる。

バンドのトランペッターでヴォーカルも担当する学生に『聖林ホテル』でもディック・パウエルの親友を演じたジョニー・デイヴィス。コメディ・リリーフにお馴染み、チャーミングなメイベル・トッドが大活躍。ここでも漫画のようなキャラクターを好演している。また若き日のスターリング・ホロウェイがメインの学生役で出演。

バック&バブルス

また、黒人タップダンサーのレジェンド、バック&バブルスが登場。華麗なタップを劇中、そしてクライマックスに披露してくれる。ディック・パウエルのブロードウェイでの相棒、マネージャーにテッド・ヒーリー。皮肉屋の業界人だが、メイベル・トッドに惚れられて追いかけまわされるのがおかしい。

音楽はレイ・ハンドルフ、ハインツ・ローメルド(いずれもノンクレジット)が担当。劇中のナンバーは、作曲・リチャード・A・ホイッティイング、作詞・ジョニー・マーサーがほとんど手がけている。

ポスター・ヴィジュアル

ウィンフィールド・カレッジの学生たちは、定期的に開催される”Varsity Show”の準備に余念がない。自分たちの好きなサウンド、振り付けで自由なショーを目指している。しかし石頭のシルヴェスター・ビドル教授(ウォルター・カトレット)は、1900年代初頭のスタイルを頑なに守ろうとして、生徒たちと衝突。そこでスコッティ(スコッティ・ベイツ)、ベティ・ブラッドリー(プリシラ・レイン)、バズ・ボルトン(ジョニー・ディヴィス)、トラウト(スターリング・ホロウェイ)たちは、ニューヨークへ。カレッジの先輩で、ブロードウェイの演出家として活躍しているチャールズ・ダリー(ディック・パウエル)に演出を依頼するためだった。

後輩たちが大成功していると信じているチャールズは、実はここのところ三作品のショーが大失敗。借金まみれで首が回らないことを知らない。アパートに直撃してきた学生たちの頼みを断るチャールズ。しかし相棒のマネージャー、ウイリアム・ウイリアムズ(テッド・ヒーリー)は、学生が提示した1000ドルのギャラに惹かれて、無理矢理引き受けてしまう。

懐かしのウィンフィールド大学を久々に訪れたチャールズは、新入生の気分でキャンパスをウイリアムと歩く。そこでパイプを吸ったことで、学生の風紀係のバーバラ・スチュワート(ローズマリー・レイン)に叱られる。ここでヒロインと出会う。このシーンでディック・パウエルとテッド・ヒーリーがキャンパスを歩きながら唄う”We're Working Our Way Through College”(作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー)が楽しい。いつしか学生たちがついてきて、コーラスの大合唱になる。

学生たちの話を聞いて、一度は演出を断ろうとするチャールズだったが、大学時代の仲間で学生バンドのリーダーをしているアーニー・メイソン(フレッド・ウェアリング)と、バーバラに説得されて、その夜の歓迎ダンスパーティに顔を出す。ここでフレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズが、ジョニー・ディヴィスのヴォーカルで演奏する”Old King Cole”(ホイッティング&マーサー)がなかなか楽しい。『聖林ホテル』でもベニー・グッドマン楽団のヴォーカリストを演じていたジョニー・ディヴィスのパフォーマンスはまさにノヴェルティの楽しさ!

このダンス・パーティのシークエンスでは、”I'm Dependable”(作曲:トム・ワーニング 作詞:ドン・レイ)、ローズマリー・レインのヴォーカルで”On with the Dance”(ホイッティング&マーサー)が演奏されるが、前者は再公開版ではカットされている。

このパーティの後、キャンパスを散歩したチャールズとバーバラが、大学創始者の銅像の前のベンチに座り「ここで恋をささやくと結ばれる」とキスする。ここでディック・パウエルとローズマリー・レインがデュエットするタブソング”You've Got Something There”(ホイッティング&マーサー)は、ラストのプロダクション・ナンバーで、バック&バブルスのダンスでリプライズされる。

ロビーカード

”Varsity Show”の演出を引き受けたチャールズだったが、シルヴェスター・ビドル教授は、1937年の最新の音楽やダンスを否定して受け付けずに、チャールズと衝突。学生たちは授業をボイコットして実力行使に出るが、結局、チャールズは諦めて「ハリウッドで仕事をする」とバーバラに告げて、ウイリアムズと共に大学を去ることに。しかしハリウッドの仕事はすでにキャンセルされていて、債権者が待ち受けるブロードウェイへ逆戻り。

このままでは”Varsity Show”の上演も危ぶまれる。そこでバンドリーダーのアーニーが妙案を思いつく。「ブロードウェイへ押しかけて、チャールズの新作として”Varsity Show”を上演しよう!」と驚くべきアイデアを提案。学生たちもノリノリで、ニューヨークへ!

しかしチャールズの新作を上演予定の劇場のオーナーは、頑なで「借金を返さなければ舞台は貸さない」と取り付く島もない。そこで学生たちはまたしても実力行使の座りこみを始める。無茶苦茶な展開だが、ここでは学生たちが正義なので(笑)学生たちの計画を知ったチャールズとウイリアムズも喜んで劇場へ向かって、リハーサル開始。ところが劇場主は頑なで、チャールズと学生たちを立ち退かせて欲しいと警察に相談。警察トップがパトカーを先導して劇場へ、ところが警察のトップが、ウィンフィールド・カレッジの卒業生で、学生たちが唄う寮歌に感激、部下たちを劇場の椅子に座らせてリハーサル見物と相成る。このおかしさ。

ならばと劇場のオーナーは、市長に相談、軍隊を出動させることに。武装した兵隊たちが劇場に駆け込んでくると、今度は”Pack Up Your Troubles in Your Old Kit Bag and Smile, Smile, Smile!”(作曲:フェリックス・パウエル 作詞:ジョージ・アーサフ)をバンドが演奏。第一次大戦の兵隊たちに流行したヒットソングを、兵隊、警官、学生たちが大合唱。客席は警官、軍人で満席となる。

かくしてチャールズの新作レビュー”Varsity Show”の幕が開く。ここからバズビー・バークレイ演出によるプロダクション・ナンバー”Have You Got Any Castles, Baby?”が展開される。

まずはバック&バブルスが登場、”You've Got Something There”で華麗なタップダンスを披露してくれる。

やがて、美脚を競うビューティーズのダンス、そしてカレッジ・スタイルの男女によるマスゲーム。フットボールの応援合戦のスタイルで、次々と一文字で、ウィンフィールド・カレッジのアイコンが表現される。”Boola Boola””On, Wisconsin!””Fight On””The Notre Dame Victory March”””Come Join the Band””On, Brave Old Army Team”といったフットボールの応援歌が次々とメドレーで演奏されるなか、バークレイならではのマス・ゲームが展開していく。そして、ディック・パウエル、ローズマリー・レイン、メイベル・トッド、テッド・ヒーリー、プリシラ・レインたちがラインナップして、大団円! 返す返すも、完全版が残っていれば、と思う。

【ミュージカル・ナンバー】

♪オールド・キング・コール Old King Cole(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
*演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ
*唄:ジョニー・ディヴィス
*ダンス(リプライズ):プリシア・レイン、リー・ディクソン
*唄(リプライズ):ジョニー・ディヴィス(フィナーレ)

♪カレッジを歩けば We're Working Our Way Through College(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
*唄:ディック・パウエル、テッド・ヒーリー、コーラス

♪アイム・デペンダブル
I'm Dependable(1937)

作曲:トム・ウェアリング 作詞:ドン・レイ
*演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(ダンスパーティ)
*唄・ダンス:フレッド・ウェアリング、プリシラ・レイン

♪ダンスを一緒に On with the Dance(1937)

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
*演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(ダンスパーティ)、唄:ローズマリー・レイン
*唄・ダンス(リプライズ):フォード・ワシントン・リー(劇場)、キャスト(フィナーレ)

♪ユーブ・ゴット・サムシンング・ゼア You've Got Something There(1937)

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
*唄:ディック・パウエル、ローズマリー・レイン
*ピアノ:フォード・ワシントン・リー、ダンス:ジョン・W・バブルス(劇場)
*リプライズ:キャスト(フィナーレ)

♪ハブ・ユー・ゴット・エニー・キャッスルズ・ベビー?Have You Got Any Castles, Baby?(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
唄:プリシラ・レイン、コーラス(劇場)
唄・ダンス(リプライズ):キャスト(フィナーレ)

♪スマイル、スマイル、スマイルPack Up Your Troubles in Your Old Kit Bag and Smile, Smile, Smile!(1915) 

作曲:フェリックス・パウエル 作詞:ジョージ・アサーフ
*演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ、ナショナル・ガード

♪今宵の愛はオンエアー Love Is on the Air Tonight(1937)
作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー
唄・ダンス:キャスト(フィナーレ)

♪ボーラ・ボーラ 
Boola Boola(1900) 

作曲:アラン・M・ヒルシュ” "La Hoola Boola" (1898)
編曲:ボブ・コール、ビリー・ジョンソン
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪オン・ウィスコンシン On, Wisconsin!(1909)

作曲:ウィリアム・T・パーディ、カール・B・ベック
作詞:JS・フーバード、チャールズ・D・ロサ
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪ファイト・オン Fight On(1922) 

作詞・作曲:マイロ・スイート 作詞:グレン・グラント 
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪ノートルダム・ビクトリー・マーチ The Notre Dame Victory March(1908) 

作曲:マイケル・J・シー 作詞:ジョン・F・シー
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪スタイン・ソング The Maine Stein Song(1902)

作曲:アルバート・スプラーグ 作詞:リンカーン・コルコード
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪カム・ジョイン・ザ・バンド Come Join the Band

作曲:不明
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)(The Stanford Fight Song)

♪オン・ブレーブ・オールド・アーミー・チームOn, Brave Old Army Team(1910) 

作曲:フィリップ・アンガー
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪錨を上げて Anchors Aweigh(1906) 

作曲:チャールズ・A.・ジンマーマン 作詞:アルフレッド・ハート・マイルズ、R・ラブル
*唄・演奏:フレッド・ウェアリング&ペンシルヴァニアンズ(フィナーレのフットボール・ソング・メドレー)

♪Opie(1902) 

作曲:E.A. ・フェンスタッド

♪トースト・トゥ・ミシガン A Toast to Michigan(1903) 

作曲:リチャード・R・カーク

♪Sing, You Son of a Gun(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング
*ビドル教授がジムに現れるシーン。ローズマリー・レインがハミングする。

♪Far Above Cayuga's Waters(1857)aka "Alma Mater"

(カーネル大学の校歌)
作曲:H.S. ・トンプソン
*バック&バブルスがダンスを踊る前、ピアノで弾く。

【再編集時にカットされたナンバー】

♪Moonlight on the Campus(1937)

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー

♪When Your College Days Are Gone(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー

♪Let That Be a Lesson to You(1937) 

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー

♪Gasoline Gypsies(1937)

作曲:リチャード・A・ホイッティング 作詞:ジョニー・マーサー

♪Little Fraternity Pin(1936)

作曲:ロイ・リングウォルド、ポール・ギボンズ、フランク・パーキンス

♪Give Us a Drink(1937) 

作曲:パット・バラード、チャールズ・ヘンダーソン、トム・ワリング


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。