『追いつめる』(1972年2月23日・松竹大船・舛田利雄)
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『追いつめる』(1972年2月23日・松竹大船・舛田利雄)

ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で、舛田利雄監督、田宮二郎さん、渡哲也さん主演『追いつめる』(1972年2月23日・松竹大船)を、ピカピカのプリントで堪能した。

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舛田利雄監督と渡哲也さんのコンビ作としては、前年の『さらば掟』(1971年)に続く松竹映画でありながら「日活アクション」の香りがするアクション篇。今回は田宮二郎さんをフィーチャーして、渡哲也さんとのダブル主演。のちの石原プロモーション制作テレビ映画第一弾「大都会―闘いの日々ー」(1976年)に繋がる、捜査四課のはみ出し刑事・田宮二郎さん(後半、本当に警察からはみ出してしまうが・笑)による組織暴力団一掃のための戦いを描く。そこに、組織に裏切られたやくざ・渡哲也さんの復讐を絡めていく。つまり、のちの「大都会」と、かつての「無頼」シリーズを融合させたような、アクション映画。

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昭和40(1965)年、神奈川県警、捜査第四課の部長刑事・志田司郎(田宮二郎)が、横浜を牛耳る浜崎組と関西の暴力団の抗争のさなか、浜崎組の武上次郎(渡哲也)を傷害致死で逮捕する。志田刑事としては、関西の組織の勝又稔(深江章喜)殺害の実行犯で、次郎の兄貴分・青谷功(睦五郎)、幹部・奥田正紀(佐藤慶)浜崎組組長・浜崎義雄(永田靖)も挙げたかったが、次郎が口を割らず、次郎のみが送検された。

昭和47(1967)年、関西の組織が手を引き、浜崎組は横浜一帯に縄張りを拡大、企業舎弟として表と裏のシノギで強大な組織なっていた。そこへ次郎が出所してくるが、すでに次郎の居場所はなく、浜崎組は実質的に奥田が仕切り、青谷は顔役になっていた。しかも次郎の愛人だった喜多子(倍賞美津子)は、青谷のものになり、トルコ風呂(現在のソープランド)のマダムに。志田部長刑事は、身の置き所のない次郎に近づいて・・・

寡黙な渡哲也さんのカッコ良さ。浜崎組壊滅のためならダーティなことも厭わない田宮二郎さんのカッコ良さ。日活「無頼」シリーズと、大映の「犬」シリーズを観てきたファンにはたまらない。まさに両雄あい並ぶ、である。

生島治郎さんの原作は、舛田監督が日活時代、水の江滝子さんのプロデュースで、小林旭さん主演でシナリオの準備を進めていたもの。日活ムードアクションの代表作『夜霧よ今夜も有難う』(1967年・日活)の野上龍雄さんが、かつてのプロットをシナリオにリライト。神奈川県警の元刑事が、過去を取り戻すための現在の戦いを続ける、裕次郎さんのムードアクション『赤いハンカチ』(1964年)を傑作にした舛田監督が、今回も日活アクションの聖地・港町横浜を舞台に、安心して見ていられるクオリティのアクションに仕上がっている。

松竹大船のスタッフはアクション映画に慣れていなくて、撮影は苦労したと舛田監督から伺った。技斗には、日活出身の渡井嘉久雄さんを起用。キャストも、冒頭で殺される関西の組織の幹部・勝又役に深江章喜さん、志田部長刑事の部下・乗松刑事役に藤竜也さん。そして、浜崎組のレンタカー・オフィスに勤めながら志田に情報を売るチンピラ・松岡役に“マンボ”こと柳瀬志郎さん。

昨年11月、「蔵出し!日活レアもの祭」で7年ぶりに、ラピュタ阿佐ヶ谷でトークをご一緒した後に急逝された柳瀬志郎さんのことを思い出しながら、ラピュタのスクリーンで柳瀬さんの姿を観て、胸が熱くなった。しかも柳瀬さんの登場シーンは、本作のハイライト!外車の助手席で志田が運転するワイルドスピードなレンタカーの暴走にビビりまくるシーンは最高。赤レンガ倉庫での片足走行は、この映画の2ヶ月前に公開された『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971年・ガイ・ハミルトン)のムスタングのカーアクションにインスパイアされたもの。あまりの危険な撮影を強行する舛田監督に、松竹大船のスタッフが怖がって大変だったと、これも舛田監督談(笑)

田宮二郎さんの妻・燎子役に生田悦子さん、後半、植物人間になってしまう藤竜也さんの妻・泰子役に吉行和子さん。二人のタイプの違う刑事の女房の対比。それぞれ夫の仕事を理解しながらも、あまりの苛烈さに耐えられなくなっていく女性を好演している。

ベテラン・鈴木瑞穂さんが、志田刑事の上司・草柳捜査四課長を演じているが、流石にうまい。志田刑事の暴走を容認しながら、時にはブレーキをかける。捜査中に、乗松刑事(藤竜也)さんを誤射したことの責任を負って辞職した志田刑事に、一匹狼として浜崎組壊滅の尖兵に仕立てるなど、なかなかのタヌキである。

クライマックス、浜崎組壊滅という目的が合致した、次郎と志田がそれぞれ動いて、全ての元凶である青谷を追い詰めていく。次郎が志田をサポートする形になるが、それがラストの葬式のシーンで覆り、次郎が新たな脅威となっていく。やくざ映画というよりは、フィルムノワールの味わい。田宮二郎さんと渡哲也さん、脂の乗り切った二人を眺めているだけでも楽しい。

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