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娯楽映画研究所ダイアリー 2021 4月2日(金)〜29日(木)

4月2日(金)

 原稿を書くために、久しぶりに「独立機関銃隊未だ射撃中」(1963年・谷口千吉)。昭和20年8月、ソ満国境のトーチカでソ連軍の侵攻のなか孤軍奮闘する、三橋達也さん、佐藤允さん、堺左千夫さん、太刀川寛さんたち。そこにやってくる17歳の現地徴用の二等兵。「スタートレック」全話視聴後に観ると、今まで気づかない感動が。この若き二等兵を演じた寺田誠さんは、のちのピカード艦長、つまり麦人さんの若き日の姿だったのであります。

 これも、久しぶりの「狙撃」(1968年・堀川弘通)。永原秀一さん脚本による傑作。加山雄三さんが孤独なスナイパーを好演。若大将、実は暗い顔つきなんですよね。ニコリともしない加山さんと、浅丘ルリ子さんの初顔合わせがまたいい。ルリ子さんの、生活感のなさが、殺し屋の世界にピッタリ。岸田森さんの銃砲店のマスターがまたカッコいい!

4月3日(土)

 田中邦衛さんの初期作品ということで、東宝アクション「情無用の罠」(1961年・福田純)。佐藤允さんのトラック運転手が殺人犯の汚名を着せられ窮地に。中谷一郎さんの刑事の執拗な追及。一見、好人物の勤務先社長・平田昭彦さん。事件の鍵を握るヒロイン水野久美さん。そして組織のボスの腹心で凶悪な田中邦衛さん。中丸忠雄さん、浜美枝さん、田村まゆみさんと、鯛焼きの餡子みたいに、お馴染みの東宝俳優陣が出演。田中邦衛さん、冷血で不気味な殺し屋の雰囲気が最高! 青大将直前、まだ「得体の知れない」印象的な役を演じていた頃。

 zoomでの3時間に及ぶ「シン・エヴァ」語る会を終えて、源氏鶏太原作、島耕二監督「定年退職」(1963年)。58年前にタイムスリップ!

4月5日(日)

 「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」試写。今年も笑ったわらっ^_^ 斎藤寅次郎監督のアチャラカ喜劇は、こんな風にみんな笑ってたんだろうなぁと。いやいや、最高の喜劇映画でした!

4月10日(土)

 ちょいと髑髏島へ、行ってきました。 ニック・フューリーと、ロキとキャプテン・マーベルに遭いましたよ。「ゴジラVSコング」前に、おさらいで「キングクコング 髑髏島の巨神」「ゴジラ(2014)」を観直したんだけど、ニック・フューリー、ロキ、キャプテン・マーベル、ワンダ・マキシモフとMCUとキャストが被っている。なので指パッチン後に観ると不思議な感慨がある。今夜は「キングオブ〜」を(笑) 面白いのは、やたらと怪獣がいっぱい出てくる。その怪獣と闘いながらのコングの島の半生。それがとても良い。しかも人間たちを結果的に守っている。最初、あ、島だけの話?と思ったんだけど「ゴジラVSコング」のために取っておいたんだ。予告のコング輸送作戦に痺れる!

4月11日(日)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、昨夜に引き続き「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」2019を観て、いよいよ、モンスターズ・バースの原点にして頂点^_^ 「キングコング対ゴジラ」(1962年・本多猪四郎)を!

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019年)吹替版をNetflix、100インチプロジェクターでヘッドフォンで観た(初公開以来)。映画としてはうーん、だけど怪獣が出てくるだけで楽しい。ゴジラとギドラのガチンコ対決とか、ろくろ首みたいに絡むところとか。同時に観た「キンゴジ4K」は完璧な怪獣喜劇!

4月12日(月)

 一足お先に「ゴジラvsコング」(2021年)観ました。いやー、凄い! ちょっぴり詩情もあるし、バトル、バトル、バトル。殴る、蹴る、投げ飛ばす。あれよあれよと驚いているうちに、なんと!えー! ラストのあと口も怪獣映画。IMAXで観ることをオススメします。具体的なことは公開後に。とにかく圧倒されました。

今宵の娯楽映画研究所シアターは「キングコングの逆襲」(1967年・本多猪四郎)。多分、予習に最適な作品かと^_^

4月13日(火)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは萩原遼監督「清水次郎長」(1938年・東宝)。こちらもエピソードゼロ。次郎長(大河内伝次郎)とお蝶(千葉早智子)と出会い、やくざに憧れて奉公先の金を遣い込んだ森の石松(大村千吉)のために堅気の米屋になる^_^ でも、お蝶を大店のバカ息子に取り持とうとする保下久六(鳥羽陽之助)に怒り心頭!ふたたびやくざになる次郎長の活躍! ども安には、小杉義男! なかなか楽しかった!

4月14日(水)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、久々の「緯度0大作戦」(1969年・本多猪四郎)。プロジェクター鑑賞は初めて! パノラミックな画面に釘付け! ジョセフ・コットンに、シーザー・ロメロ! ああ、楽しい! ミニチュア特撮の美学!

4月15日(木)

 明日、高橋恵子さんとNHKラジオ「ごごカフェ」でご一緒するので「太陽にほえろ!」第111話「ジーパン・シンコ その愛と死」(1974年)を久々に。

4月16日(金)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、若杉光夫監督「真昼の誘拐」(1966年日活)。高橋英樹さん、中尾彬さんたちが、退屈を持て余し、小遣い稼ぎに金持ちのお嬢ちゃんを連れ出して、礼金をせしめようとするが、元警視総監の令嬢で後戻りが出来なくなる。さらに山内明さんのヤクザが、横槍を入れて身代金の営利誘拐に発展。ビックリの展開だけど、若杉演出で、俳優たちの可能性を引き出して、なかなかの見ものでありました!

 ショウブラザースの大特撮映画「北京原人の逆襲」(1977年・香港)。色んな意味でスゴイ映画。前半のペキンマン捜索シーンの猛獣バイオレンス。欲に目が眩んだ男たち。やたらと露出度の高い金髪美女サマンサ。なんといっても、よく出来ているけど、あまり愛嬌のないペキンマン^_^ 「キングコング」のパターンを踏襲しながら、いろんな意味で香港映画。クライマックスの香港大暴れは、ミニチュア特撮の醍醐味!

4月17日(土)

 小田基義「透明人間」(1954年)は、円谷英二特撮もさることながら、東京ロケがご馳走。築地川にかかる三吉橋から、スターホテルが見える。ここは「如何なる星の下で」で森繁久彌さんが泊まっていた。土屋嘉男さんの後ろは中央区役所であります。

4月19日(月)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康のデビュー作にして公開は2作目の「狙われた男」(1956年)。才気の塊のような、小品ミステリー。トップシーンの銀座のヴィジュアルに胸ときめく!

4月20日(火)

 久しぶりの「ガメラ3  邪神覚醒」(1999年・金子修介)を丸の内ピカデリーのドルビーシネマで。いやぁ、やっぱり凄い映画だ。色んな意味で怪獣映画の進化系だ。もはやガメラは座頭市から大魔神のような荒ぶる神に。でも人間を信じようとしている。「ファルコン&ウインターソルジャー」に通じる、被害者側の復讐譚でもあり。良くぞ作ってくれたと、22年越しに感心と感謝!

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康監督「殺したのは誰だ」(1957年・日活)。銀座並木通りのカメラ店「さくら堂」の向かいは、懐かしや「銀座並木座」! その隣の喫茶「千里軒」から電話するのは西村晃。で.なんとマイトガイ前夜の小林旭!

4月21日(水)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「街燈」(1957年・日活)。監督作詞による旗輝夫さんが歌う主題歌は裕次郎さんが「風速40米」で歌うことになる。靴磨きの少女・刈谷ヒデ子ちゃんは「ジャズ娘誕生」の江利チエミさんの妹と同じキャラ。フランス映画のような洗練されたタッチの恋と浮気のコメディ。並木通りのレストランアラスカは、加山雄三さんと藤本真澄さん、笠原良三さん、田波靖男さんが打ち合わせをした「若大将」誕生の店^_^ 嗚呼、楽しき哉! 草薙幸二郎さんの与太者が最高におかしい! 格闘場面で、急にドイツ表現主義になったり^_^

 続いて、原研吉監督「春の若草」(1954年・松竹)。韓流要らずの松竹メロドラマの極端な展開の味わい。一言では言い切れない、目まぐるしき運命の流転。キャラクターの性格がシークエンスに応じてコロコロ変わるのがスゴイ。ある意味、これが松竹大船メロドラマのデフォルトだったわけで、驚くこたぁないんだけど、やっぱり驚きっぱなしの106分^_^

4月22日(木)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「美徳のよろめき」(1957年・日活)。三島由紀夫原作、よろめきドラマの語源^_^ 月丘夢路さんのマダムが葉山良二さんに文字通りよろめく。背徳というほどじゃないが、このドキドキだけで映画が成立した時代のモラル! 安部徹さんは、宮城千賀子さんの有閑マダムが弄んでるプロレスラー^_^

 俗物の夫・三國連太郎さんが、テレビを観てゲタゲタ笑っているのは、なんと「内海桂子好江」師匠の漫才! 人に歴史あり! 音声のみなのが残念! で、歌謡曲好きのお手伝い・高友子さんとクリーニング屋・草薙幸二郎さん!

4月23日(金)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「四季の愛欲」(1958年・日活)。丹羽文雄原作の文芸メロドラマ。山田五十鈴の奔放な母、息子で作家の安井昌ニの妻でモデルの楠侑子は山田五十鈴の愛人・永井智雄と出来てしまい、長女・桂木洋子は夫の従兄弟・小高雄二に弄ばれる。つまり、ドロドロの愛欲が展開。しかし中平康の演出は、流麗でフランス映画の如しで、酷い話を楽しく観れてしまう^_^

4月24日(土)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「その壁を砕け」(1959年・日活)。小高雄二さんが3年間休まずに自動車整備工場で働いて20万円で自動車を購入。新潟で待つ恋人・芦川いづみさんに会うためにクルマを飛ばすが、なんと強殺犯人の嫌疑をかけられて逮捕されてしまう。長門裕之さんの巡査のフライング、西村晃さんの刑事の強引な捜査で冤罪になる小高雄二さんの悲劇… ヒッチコックの「間違えられた男」を意識したヘビーなサスペンス。伊福部昭サウンドが主人公の絶望感、ヒロインの純愛を見事に表現!

 前半は、昔録画したDVDで観ていたが、アマプラにあることに気付き、高画質配信に切り替え。ちょうど映画が転調する、佐渡のシークエンスから。
この映画、後半、長門裕之さんが刑事に昇進してから、真犯人を突き止める「動」の展開がいいのです!

 娯楽映画研究所シアター、続いては、中平康「才女気質」(1959年・日活)。京都の老舗表具屋の女将・轟夕起子さん、その亭主・大坂志郎さん、息子・長門裕之さん、娘・中原早苗さんたちが織りなす、賑やかなホームドラマ。大坂志郎さんが息抜きに出掛けるのが、イノダコーヒ。近江大介さんがウエイター! 京都の町家の土間を俯瞰から撮るなど、なかなかカメラワークも楽しい。

4月25日(日)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「猟人日記」(1964年・日活)。戸川昌子さんの原作の映画化。性の不毛からターゲットにした女性を次々と獲物にしていく仲谷昇さんの心の砂漠。乾いているけど艶かしい中平康美学! 稲野和子さん、高須賀夫至子さん、関係を持った女性が次々と亡くなっていく。怖い怖いサスペンス。戸川昌子センセが主人公の妻で出演。
江東楽天地! 娯楽のデパートとある。ああ、これが僕の好きなフレーズの刷り込みだったのか!
 
 続いて、中平康「密会」(1959年・日活)。桂木洋子さんが夫・宮口精二さんの教え子・伊藤孝雄(新人)と不倫。逢瀬の最中、タクシー運転手強殺事件を目撃したことから、運命の歯車が狂い出す。ヒッチコック好きの中平康らしい小品サスペンスの佳作!

4月26日(月)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康「地図のない町」(1960年・日活)。石原裕次郎さんを想定して、橋本忍先生が船山馨原作を脚色。会社の反対で葉山良二さん主演に。葉山さんの妹・吉行和子さんを凌辱したヤクザの組の親分・滝沢修さんは、市会議員として街を牛耳る悪い奴。葉山さんは、復讐のために立ち上がるが…。社会派だか裕次郎映画に相応しい骨太の構成。葉山さんが窓からヤクザを監視するために通う映画館の次週上映作はジーン・ケリーの「ブリガドーン」。しかも裕次郎さんがサプライズ登場する! 映画館のスクリーンでは、中平康監督「狂った果実」上映! 南田洋子さんは葉山さんの幼なじみで、父・浜村純さんの借金のカタに、滝沢修さんの愛人となる。

4月27日(火)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、谷口千吉監督「魔の黄金」(1950年・大映)。戦前から13年間、北海道の山に籠って砂金を掘り当てた山師・森雅之さんが、小樽にやって来て大金を手にして、さまざまな人間の欲望を垣間みる、ダイナミックな重喜劇。やはり谷口千吉監督は、日本のジョン・ヒューストンだ! 伊福部昭サウンドで、森雅之さんがゴジラの如く迫力ある山男に!

4月28日(水)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康監督「牛乳屋フランキー」(1956年・日活)。長州から上京してきたフランキー堺さんが「宮城」遥拝に、間違って後楽園「球場」へ。最高なのは、太陽族映画のセルフパロディ。八ツ橋大学の学生・石山金太郎(市村俊幸)は、センセーショナルな小説「狂った太陽」で太陽文学賞を狙っている。ボディビルに専念し、障子を拳で突き破る^_^ 頭は慎太郎刈りならぬ金太郎刈り! スッキリ顔の宍戸錠sさん、なかなかの男前!

4月29日(木)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、中平康監督「当たりや大将」(1962年・日活)。大阪、釜ヶ崎を舞台に、当たり屋の大将(長門裕之)の破天荒な行状を描く。轟夕起子さんのホルモン鍋の女将、その息子・頭師佳孝さん、刑事・浜村純さんが織りなすヘビーでエネルギッシュな悲喜劇ならぬ喜悲劇。太陽族以上にヒドい大将のやらかすことは、かなりキツイが、後半、中平康監督というか新藤兼人脚本は、黒澤明「生きる」と似た再生の物語へ。頭師ぼんと大将の連携で、ガラス屋で一儲けする下りはチャップリンの「キッド」のリフレイン。昭和37年の大阪風景が楽しめる。

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。