娯楽映画研究所ダイアリー 2021年8月9日(月)〜8月15日(日)
8月9日(月)『夢は夜ひらく』(1967年・日活)・『OK牧場の決斗』(1957年・パラマウント)
横浜キネマ倶楽部「渡哲也さん追悼 『夢は夜ひらく』上映、佐藤利明講演」In 神奈川県立音楽堂。沢山のご来場ありがとうございました。「渡哲也の映画史」としてデビューから石原プロ入社までのエピソードをお話しました。今日の会場は『赤いハンカチ』(1964年・日活)の聖地「神奈川県立図書館」と同じ建物続きの「神奈川県立音楽堂」。この階段を裕次郎さんが駆け上がった時は雨でしたが、僕が着いた時も突然の天気雨でした!
友人のご好意で、先日、CSムービープラスで放映された、木曜洋画劇場・日本語吹き替え版『OK牧場の決斗』(1957年・パラマウント・ジョン・スタージェス)を娯楽映画研究所シアターのスクリーン投影。僕が、この映画を最初に観た東京12チャンネル「木曜洋画劇場」(1975年4月3日)で、2時間半枠で放映されたヴァージョン。バート・ランカスター(久保松夫)、カーク・ダグラス(宮部昭夫)、ロンダ・フレミング(武藤礼子)の吹替は、とにかく懐かしく、小学6年生になる直前、映画チラシ小僧だった少年時代が蘇った。
8月10日(火)『ガンヒルの決斗』(1959年・パラマウント)・『虹男』(1949年・大映)
今日は阿佐ヶ谷ネオ書房で「佐藤利明の娯楽映画研究所」収録
ジョン・スタージェス監督『ガンヒルの決斗』(1959年・パラマウント)を久々に堪能。ディミトリ・ティオムキンの音楽のカッコ良さ!
『ガンヒルの決斗』は任侠映画的なドラマ。女房を死に至らしめた仇が、なんと親友の息子で、その親友は息子を溺愛するために主人公を、自分の配下総がかりで倒そうとする。満身創痍のカーク・ダグラスと、メンツのために非道になるアンソニー・クイン。なかなか面白い映画!
続きましては、牛原虚彦監督『虹男』(1949年・大映)の出だしのモンタージュにクラクラ^_^ ある意味、すごい実験映画! 伊福部昭サウンドも素晴らしい緊迫! 小林桂樹さん、若い!
8月11日(水)『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1966年・湯浅憲明)・『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年・田中重雄)・『風ふたたび』(1952年2月14日・東宝)
今朝は待望の『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』! 昼から『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』を角川シネマ有楽町で! スクリーンで観るのは1980年代以来だから、40年ぶりかも? やっぱりスクリーンで観ると大興奮!妖怪・特撮映画祭で『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』最高! これぞ怪獣映画! サービス精神の塊! 本当に素晴らしい。
続いて『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年・田中重雄)。スクリーンで味わうのは格別。大人のドラマと言われるけど、大映東京らしい悪党たちの欲にまみれた活劇。藤山浩二さんの悪いこと、手がつけられない。悪魔の虹のバルゴン退治の自衛隊司令官は「虹男」の摩耶博士・見明凡太朗さん❗️
角川シネマ有楽町「妖怪・特撮映画祭」のガメラ・デーで、『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年・湯浅憲明)と『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年4月14日・大映東京・田中重雄)を堪能。
スクリーンで観るのは1980年代初頭以来なので40年ぶり。大きなスクリーンで、ガメラを観ると、幼児の頃の映画館体験を思い出す。ぼくは『ガメラ対ギャオス』が封切り初体験。なので『ガメラ対バルゴン』は、1970年代のテレビ放映が初見である。「ウルトラQ」放映により、空前の怪獣ブームが吹き荒れた昭和41(1966)年4月14日に、大映京都の『大魔神』(安田公義)と二本立て公開され、ブームはさらにヒートアップ。
ディズニー+ マーベルの新シリーズ「ホワット・イフ…?」第一話からいきなり面白い。MCUの「もしものコーナー」^_^ もしも、スティーブ・ロジャースではなくペギー・カーターが超人血清を射っていたら?バッキーも、ハワード・スタークも大活躍。アニメだけど実写みたいで楽しい!
今宵の娯楽映画研究所シアターは、原節子さんと池部良さん、そして山村聰さん主演のメロドラマ、豊田四郎監督『風ふたたび』(1952年2月14日・東宝)。戦後、小津安二郎監督作品に出演して、円熟の輝きを放っていた原節子さんのための文芸女性映画。朝日新聞連載の永井龍男さんの同名小説を、黒澤明監督の盟友・植草圭之助さんが脚色。原節子さんの実兄・会田吉男さんがキャメラを担当。
8月12日(木)『地獄の波止場』(1956年・日活)・『怪獣総進撃』(1968年・本多猪四郎)
今宵の娯楽映画研究所シアターは、日活アクション前夜のダイナミックなヴィジュアルによる犯罪映画、小杉勇監督『地獄の波止場』(1956年3月4日・日活)。これは初見だった。シンプルなストーリーだが心理描写がうまく、見応えがある。
『怪獣総進撃』(1968年・本多猪四郎)4K(2Kダウンコンバート版)をプロジェクター投影。いろいろ豪華な、1968年型近未来怪獣映画。パリに現れた地底怪獣! 別なシーンでアナウンサー氏がバラゴンと呼んでます。つまり、バラゴン役を演じるゴロザウルス^_^
8月13日(金)『スターダスト』(2019・英)・『唄の世の中』(1936年・P.C.L.・伏水修)
ガブリエル・レンジ監督『スターダスト』(2019・英)イマジカ第1試写室。デヴィッド・ボウイ(ジョニー・フリン)が「世界を売った男」のプロモで渡米。マーキュリーのプロモーター(マーク・マロン)と各地を回るも、知名度ゼロ。苦悩するボウイが「ジギースターダスト」を産み出すまでの苦悩を描く。
1971年のアメリカの音楽業界、ジャーナリストたちの描写が興味深い。なぜ異星人ジギースターダストなのか? ボウイが被った仮面の下の素顔に迫る。スペクトラムで入院している兄とのドラマ、デヴィッドのトラウマ、妻との葛藤などなど見応えありの音楽映画!10月8日公開。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、「ザッツ・ニッポン・ミュージカル」研究、アーちゃんこと岸井明さん主演の和製ミュージカルの最重要作品『唄の世の中』(1936年8月11日・P.C.L.・伏水修)。P.C.L.きっての音楽映画監督となる伏水修監督にとっては、エンタツ・アチャコの『あきれた連中』(1月15日)、古川緑波&徳山璉コンビの『歌ふ弥次喜多』(3月26日)に続く、この年デビューにして三作目。モダニストの本領発揮、ピカピカのアールデコ時代の流線型音楽喜劇となっている。
8月14日(土)『ザ・スーサイド・スクワッド』(2021年・ワーナー)・『新婚うらおもて』(1936年日・P.C.L.)・『うそ倶楽部』(1937年・P.C.L)
『ザ・スーサイド・スクワッド』(2021年・ワーナー)。ジェームズ・ガン監督、最高! オレが観たい娯楽映画を作ってくれた。マーゴット・ロビーのハーレイ・クインのキュートさ、さらに光輝いて、カッコいいったらありゃしない。それにスタローンも! 悪党たちのキャラが、それぞれ良くて、構成、展開、ヴィジュアル、選曲、どれも満点!ジェームズ・ガンの振り切り方が素晴らしい。グロだけど美しい! 何もかも、最高! だって、こういう映画なんだから!いろいろ「妖怪・特撮映画祭」とリンクしてます。特にクライマックス! 東宝怪獣映画というより、大映特撮映画的な。ならず者部隊の戦争アクションがお好きな方にもオススメします。前作を観てなくても、大丈夫! 兎に角、娯楽映画としての構成もなかなかで、楽しいったらありゃしない!
今宵の娯楽映画研究所シアターは、じゃがだらコンビ(岸井明・藤原釜足)の『新婚うらおもて』(1936年・P.C.L.・山本嘉次郎)。『唄の世の中』(8月11日)でニッポン・ミュージカルの先端を行った、岸井明さんと藤原釜足さんが、ゲスト出演した『東京ラプソディ』(1936年12月1日)に続いて出演したサラリーマン家庭劇。監督の山本嘉次郎さんは『エノケンの青春酔虎傳』(1934年)からP.C.L.の都会派コメディを牽引してきた人。『新婚うらおもて』は、京橋の玩具会社に務める若きサラリーマン・藤原釜足さんと恋女房・神田千鶴子さんの新婚夫婦の元へ旦那と大喧嘩して転がり込んできた妾・竹久千恵子さんと、その愛人・岸井明さんの四人の喜劇。お互い、相手を想うあまりに、どんどんボタンを掛け違えて、大騒動となる。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、岸井明のモダン喜劇研究その3。岡田敬監督『うそ倶楽部』(1937年3月1日・P.C.L)。もちろん、じゃがだらコンビの相棒・藤原釜足との共演作。主演はもうひとり、活動弁士から映画俳優となった文化人・徳川夢声さんである。もともとこの映画の企画は、古川緑波さんのアイデアによるもの。東京日日新聞・大阪毎日新聞に連載されていた「うそ倶楽部」に材をとって、「人は何気なくうそをついているもの」「うそは生活の潤いにもなるが、時にはトラブルの原因にもなる」という視点で「映画にしたら面白かろう」とP.C.L.のプロデューサー・伊馬鵜平氏に提案して映画化されたもの。
8月15日(日)『八月十五日の動乱』(1962年・東映東京)・『牛づれ超特急』(1937年・P.C.L.)
今宵は、先日、日本映画専門チャンネルで放映された、小林恒夫監督『八月十五日の動乱』(1962年8月22日・東映東京)。恥ずかしながら、これが初見となる。
半藤一利さん(刊行当時は大宅壮一編だが、大宅氏は一行も読んでいなかったという)「日本のいちばん長い日」の初版が刊行されたのは昭和40(1965)年だから、それより三年前の夏に封切られた「敗戦秘話」の映画化。
岸井明さんと藤原釜足さんの「じゃがだらコムビ」による牧歌的なローカル喜劇『牛づれ超特急』(1937年11月18日・P.C.L.・大谷俊夫)を娯楽映画研究所シアターのスクリーンに投影。まだこの映画を観ることが出来なかった二十数年前、ムック時代の映画秘宝に、どんな映画だろうという期待を込めて、近江俊郎センセイの『カックン超特急』(1959年・新東宝)、水野晴郎センセイの『シベリア超特急』(1996年)と並ぶ、未見の“脱力系”作品として紹介したことがある。その期待に違わぬ「どこが超特急?」ののどかなP.C.L.喜劇だった。
よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。