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娯楽映画研究所ダイアリー 2021年11月29日(月)〜12月5日(日)

11月29日(月) 【佐藤利明の娯楽映画研究所】「砂の上の植物群」〜蘇る幻の映画〜

11月29日(月)「実相寺昭雄メモリアルコンサート3」

代々木上原ムジカーザ。実相寺昭雄メモリアルコンサート3。寺田農さんの軽快なトーク、監督ゆかりの作品の音楽の演奏会。客席には、何十年来の知人も多く、楽しいひと時を過ごした。

11月30日(火)『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2021年・東宝・田中亮)・『ザ・ビートルズ:Get Back』PART 3(2021年・ピーター・ジャクソン)

 『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2021年・東宝・田中亮)を東宝試写室で。映画版第三弾は、マルタ島を舞台に、騙し騙され、さらなる騙しの128分。予測しながら、クラクラするほどひっくり返される。お話を楽しむだけで充分満足度は高い。長澤まさみさんが色々エスカレート。もはやクレージー映画の域に^_^

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、ようやく『ザ・ビートルズ:Get Back』PART 3だけど、夜観てるから第三夜^_^ いよいよラストウィーク。ルーフトップコンサートが迫るなか、アルバム曲が、デッサンから次第に形になっていく。しかも急ピッチで。妥協できないポール、真剣勝負のジョン。ソロアルバムをやりたいジョージ。マイペースのリンゴ。僕らは完成したアルバムから逆送して観て、モノを考えてるけど、彼らはあの日の現在を生きている。ルーフトップコンサートの前日、本当に屋上でやるのか?やらないのか?アルバムを完成させるのが目的ななか?映画を撮ることの意味は? ポールとジョンの真剣な対話に、心揺さぶられる。二人とも、ビートルズであり、個人であり、アーティストであり、親友。ギリギリのところまで議論して。で、ヨーコの「やるの?」「やるよ」「やるだろう、きっと」となる。吹っ切れた瞬間の空気がいいね。妥協ではなく、選択、ビートルズとしての使命。ああ、そうだったんだ。そうだよね。と観ながら、何度もうなづいて、泣けてきた。そして、ドタバタの当日。ルーフトップコンサートのドキュメントを、マルチ画面で見せてくれ、こっちは、もう「アベンジャーズ/エンドゲーム」のタイムスリップ作戦に参加してるような気分に。

ことの顛末は、わかっているのだけど、スリリング。ビートルズとして、結果的に最後となった四人のライブでの「ゲットバック」に、涙ナミダ。で、最終日の「レット・イット・ビー」の風景の編集がまたイイのよ。

ピーター・ジャクソン!良くやってくれた!ありがとう!

12月1日(水)『エターナルズ』(2021年・クロエ・ジャオ)・「ホークアイ」(第三話)・た『運命の暦』(1948年1月27日・大映・島耕二)

 1ヶ月ぶりに『エターナルズ』IMAX版をTOHOシネマズ日比谷で、やはり素晴らしい。ヴィジュアル、展開、キャラクター、いずれも僕にとっては最高。スキーター・ディビスの「この世の果て」が流れるシーンは、何度見てもゾクゾクする。

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、敗戦後ほどなく作られた『運命の暦』(1948年1月27日・大映・島耕二)。声楽家・相馬千恵子さんがリサイタル中に倒れる。

伯父の医師・河原侃二さんの依頼で、若き脳外科医・小林桂樹さんがメスを執るが脳腫瘍が進行していて手遅れ。しかし小林桂樹さんは、余命一年の彼女を愛して、最後の日々と共に過ごそうと求婚。それから一年の日々を綴ったメロドラマ。相馬千恵子さんの妹に三條美紀さん。とにかく可愛い。

島耕二監督は、モンタージュを多用して、限られた時間を楽しく過ごす二人の四季を描いている。冬から春、そして夏… 発作の発症もないまま過ぎて行くが… 忍び寄るその時、なるべく刺激を与えていけないからと、小林桂樹さんが「ピアノ」「胡椒」「コーヒー」を妻に与えないようにする。それがサスペンスというか、相馬千恵子さんが自分の病に気づくきっかけになるのだけど。

胡椒やコーヒー。のあたりは、あれれ、なんだけど。それもまあ、昭和23年ということで、受容してしまう。タイトル前から、延々と、相馬千恵子さんがステージで「魔笛」を唄うシーンは、芸術に飢えていた観客には、なによりのご馳走だったろう。敗戦からわずか2年、ということに思いを馳せながら楽しんだ。

ラストはふた通り用意されていて、悲劇バージョンとハッピーエンドバージョンが展開される。ハリウッド映画を意識してのモダンなメロドラマを目指している。成功しているかはともかく・・・。

12月2日(木)『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』(2019年・ジョン・ワッツ)

 久しぶりにMCU「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」(2019年・ジョン・ワッツ)を娯楽映画研究所シアターでスクリーン投影。「エンドゲーム」後、トニー・スタークのいない現実に、打ちひしがれ、スーパーヒーローとしてのプレッシャーに苦しむピーター・パーカー(トム・ホランド)。元シールド長官・ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)からの再三の着信(非通知)をスルーして、ヨーロッパへの修学旅行へ。しかしベニスで、運河のなかから、エレメンタルズの水の怪物に襲われてしまう。そこへ現れた謎のヒーロー、クエンティン・ベック=ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)がとんだ食わせ者で…

 今回のヴィランは、マルチバースの「アース616」から、家族の復讐のため、エレメンタルズ退治にやってきた、という触れ込みのベック。実は、スターク・インダストリーの社員だった男で、トニー・スタークへの私怨を抱く、かつての同僚たちとともに、VFXを駆使して、エレメンタルズとミステリオの闘いをプロジェクター投影していたフェイク野郎^_^

 つまり、「オズの魔法使」のオズの大魔王=ドクター・マーヴェル!(フランク・モーガン)でもあるわけで。ヨーロッパという「オズの国」で、ピーターはMJとネッド、ニック・フューリー、マリア・ヒルとともに大冒険。ハリウッドの冒険譚は、かなりの頻度で「オズの魔法使」のパターンなのだけど、対サノス戦のあとだけに、楽しくて、面白い。

 ベニス→プラハ→ロンドンでのアドベンチャーはヴィジュアル的にも楽しい。MCUでは初期からのレギュラー、ハロルド・“ハッピー”・ホーガン(ジョン・ファヴロー)が、危なっかしくも、頼もしく、シリーズものならではの楽しさ満載。僕らの世代では、ミステリオといえば、少年マガジン連載、池上遼一先生の「スパイダーマン」に登場していたので、馴染み深いヴィラン。

12月3日(金)『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年・アンディ・サーキス)・『レット・イット・ビー』(1970年・マイケル=リンゼイ・ホォッグ)

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』。アンディ・サーキスの演出がキビキビしていて、良かった!前作の面白さを軽々と超えた快作! しかもキリリと引き締まった98分! IMAXフル画角で堪能。コメディとしても、怪奇映画としても、アクションとしても最高! 早く次の闘いが観たい!

『フランケンシュタインの花嫁』の昔から、ドラキュラ、コングとシリーズ化されると「花嫁もの」になるという故事に倣ってのゴシックホラー的クライマックス。これから「スパイダーマン」とマルチバースで繋がっていく世界になるんだろうなぁと^_^

 カーネイジの触手がするする伸びてくるのだけど、どうしても「ガメラ3」のイリスを思い出してしまう。しかし、ヴェノムとエディの「仲良くけんかしな」が楽しくてしょうがない。ビング・クロスビーとボブ・ホープみたいで。ヴェノムが、朝食を作りながら、ガーシュインのLet's Call the Whole Thing Off を唄うシーンが最高!

 「ザ・ビートルズ Get Back」7時間45分を観た後に、改めて、マイケル・リンゼイ=ホッグ「レット・イット・ビー」(1970年)1時間23分を観る。全く別の映画に見えてくる。行間が読めるというか、ゲット・バック・セッションにタイムスリップしてきた後だけに。なので益々、この映画が好きになった。

12月4日(土)『馬賊芸者』(1954年・島耕二)

娯楽映画研究所シアターで、京マチ子さん主演、火野葦平原作『馬賊芸者』(1954年・島耕二)。大正時代、九州博多で「馬賊芸者」として慣らした鉄火芸者たちの心意気を描いた作品。「花と龍」「新遊侠伝」など映画化作品が多い、火野葦平が「小説新潮」に掲載した原作を、島耕二監督が脚色・演出。とにかく京マチ子さんがいい。

単行本「佐藤利明の娯楽映画研究所」シリーズを刊行します。出版社からではなくオンデマンド。AmazonKindleペーパーバックで、第一弾は「番匠義彰・映画大全」(仮)。これまで執筆してきた全作レビューに、書き下ろしを加えて。この数日間で原稿をまとめています。note原稿の書籍化ですが、映画本の企画が通りにくい昨今、ならば自分で出してしまおうと考えております。編集者がいないので、まとめる作業、割り付けが大変ですが、どなたか編集のサポートしてくださる方があれば! 嬉しいです。

12月5日(日)『シャンチー・テンリングスの伝説』(2021年・デスティン・ダニエル・クレットン)

 気の置けない方々と、四谷メビウスでエレキ・バンドBCVのライブへ。二年ぶりぐらいかもしれない。その後、久ぶりに軽く一杯。音楽家の川井憲次さんに二十年ぶりにお目にかかり、大好きな「葉問」DVDにサインを頂き、ドニー・イェン師とのエピソードを伺いながら、楽しいひととき。

 帰宅後、ディズニー+でIMAX版『シャンチー・テンリングスの伝説』(2021年・デスティン・ダニエル・クレットン)を娯楽映画研究所スクリーン投影。全編フル画角。『アベンジャーズ/エンドゲーム』後のMCUとしては、肩の凝らない武侠ファンタジー。アクション・シーンは流石に楽しい。前半のサンフランシスコでのバスでの、シャン・チー(シム・リウ)のペンダントを狙うレザー・フィスト(フロリアン・ムンテアヌ)たちの襲撃シーン。「バス男」アクションはやっぱり楽しい。ヒロインのケイティを演じたオークワフィナは、人気ラッパーで、女優としても「オーシャンズ8」(2018年)、「ジュマンジ/ネクスト・レベル」(2019年)などに出演。後半の大活躍がなかなか。全体的にはかつての香港映画へのリスペクトに溢れていて、今後のシリーズ展開も楽しみ。ファラ・チャン演じる、シャンチーとシャリーン(メンガー・チャン)の母・イン・リーが美しく、シュー・ウェンウー(トニー・レオン)が妄執に取り憑かれてしまうのもよくわかる。クライマックスのドラゴンVSソウルイーターズの親玉ドウェラー・イン・ダークネスの戦いは、怪獣映画としても楽しい。



よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。