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『ブラック・ウィドウ』(2021年・MCU・ケイト・ショートランド)

 昨夜の娯楽映画研究所シアターは、ディズニー+MCU IMAX Enhancedで、この7月に観たばかりの『ブラック・ウィドウ』(2021年・ケイト・ショートランド)をなんちゃってIMAXでスクリーン投影。

 ナターシャ・ロマノフ=ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)が初めてMCUに登場したのは、『アイアンマン2』(2010年・ジョン・ファヴロー)だからもう11年も、ナターシャをスクリーンで観てきたのか。幼くしてロシアのKGBのスパイ養成プログラム「レッド・ルーム」で育成された敏腕スパイ。最初はクリント・バートン=ホークアイ(ジェレミー・レナー)の暗殺のターゲットとなるが、その才能を評価されて“S.H.I.E.L.D.”のエージェントに転職。

 アベンジャーズの一員として、頼もしき姐さんとして大活躍、『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019年・ルッソ兄弟)では、惑星・ヴォーミアで、ソウルストーンと引き換えにその生命が奪われた。その喪失を補完する意味もあり、シリーズに貢献してきたスカーレット・ヨハンソンへのご褒美もあって企画された単独作品。のだけど、劇場と配信を同時公開したことでスカーレット・ヨハンソンがディズニーを訴えたりして色々揉めている。

 さて、ブラック・ウィドウは、他のスーパーヒーローと違って超人ではなく、あくまでも有能なエージェントなので、スパイ映画として作られる。しかも自分を生み出した組織「レッド・ルーム」を壊滅させ、ボス、ドレイコフ(レイ・ウィンストン)を倒すのが目的。なので007=ジェームズ・ボンドが、スペクターの首領・ブロフェルドを倒すような「スーパー・スパイ映画」として作られている。

 しかも1995年、ナターシャの少女時代、ロシアのスーパー・ソルジャー、アレクセイ=レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)を父親役に、メリーナ・ヴォストコフ(レイチェル・ワイズ)を母親役に、幼きエレーナ・ベロワを妹役に擬似家族として暮らしていた。“S.H.I.E.L.D.”に追われたこの擬似家族は、キューバへと逃げるが、そこで一家は解散。

 ナターシャ、エレーナはそれぞれ「レッド・ルーム」で訓練を受けて、殺人マシーン=ウイドゥとなった。という「過去」が描かれる。で、ナターシャは、エレーナ(フローレンス・ビュー)と再会、反目しあいながらも「姉妹」の絆を取り戻し「レッド・ルーム」壊滅のため、アレクセイ、メリーナと再会。リユニオンして共闘する。

 スーパーヒーローの家族、といえばディズニー=ピクサーの「インクレディブル・ファミリー」シリーズだが、まさしくその「手」で擬似家族が精神的な絆を取り戻すまでを、派手なアクションで描いていく。なので、いつものMCUのような宇宙人や地球壊滅をもたらすヴィランとのスーパーバトルではなく、あくまでもジェームズ・ボンドのような活躍なのである。というわけで劇中、ナターシャが『007/ ムーンレイカー』(1979年・ルイス・ギルバート)をお気に入り映画として観ているシーンがある。しかもセリフをロシア語で暗唱している。

 IMAXバージョンでは、前段のブダペスト(ダと濁音で・笑)でのナターシャ&エレーナVSタスクマスター(オルガ・キュリレンコ)のチェイスシーン、中盤の刑務所からアレクセイを脱獄させるアクション、そしてクライマックス「レッド・ルーム」壊滅シークエンスが、フル画角で楽しめる。
ボンド映画は生身のスタントマンがスカイアクションを演じていたが、こちらはCGなので迫力がない。という意見もあるが、ぼくはこれはこれで楽しかった。

 ヴィランのタスクマスターは、ドレイコフの娘・アントニア(オルガ・キュリレンコ)。彼女はボンドガール出身。ダニエル・クレイグの二作目『007 /慰めの報酬』(2008年)のヒロインだった美人だが、今回はナターシャが少女時代に暗殺のターゲットにして瀕死の重傷を追わせたために・・・という設定なので、顔も負傷していて、無表情の殺人マシーンとして登場。

 MCUの時系列では『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年・ルッソ兄弟)の中盤のドイツでの空港決戦でのアベンジャーズ分裂の直後から始まり、同作のラストの捉えられたキャプテンアメリカたちを刑務所から脱獄させる直前の物語。

 なのでパズルのピースを埋める楽しさがある。なぜナターシャは、分裂したアベンジャーズの絆を取り戻すために、あれだけ頑張ったのか?『アベンジャーズ/インフィニティウォー』(2018年・ルッソ兄弟)では、アベンジャーズ一家で、頼もしきおっかさん的に取りまとめをしていたが、そこに至る「ナターシャの成長」が本作のドラマの要となっている。

 ま、MCUというのはそうやって観ながら「補完」していく楽しさが身上なので、これはこれでアリ。と楽しく再見した。なんたって「IMAX」を自宅で観る(なんちゃって)気分は最高ですから!

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。