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何のためにブランディングをするのか?

本題に入る前に。

「エプロン」のことを「まえかけ」、「ハンガー」のことを「えもんかけ」と今でもたまに使っていることに、妻からくすくす笑われながらも、なぜかあまり抵抗がない今日この頃。


さて、本題に入ります。


何のためにブランディングをするのか?

いわゆる、そもそもなぜブランディングが必要なのでしょう?

この問いに対してさまざまな切り口があるかもしれませんが、私は、18年前に出会った次の定義が、今でもしっくりきています。

価格競争に巻き込まれずに、少しでも高く、少しでも多く、あなたの商品やサービスをお客さまに買ってもらうことで、企業の利益を増やし、長期的に経営を安定させていくため

この定義は、2002年に出版された「ブランド・マネージャー」という書籍に
書かれています。

著書の水野与志朗さんは、味の素ゼネラルフーヅ(現:味の素AGF)、マキシアム・ジャパン(現:レミーコアントロー・ジャパン)、ハーシージャパンでブランド・マネージャーを歴任された方で、当時、私はこの本を手にして、かなり唸ったのを覚えています。

内容にももちろん惹きつけられたのですが、それ以上に、ストレートに「ブランド・マネージャー」というタイトルの本を出す勇気に対して唸りました。

今のようにブランド、ブランディング、ブランド・マネージメントなどの言葉が、中小企業にも降りてきていて、経営層やビジネスパーソンにとって、ある程度認識されている時代ではないのに、サブタイトルではなく、メインタイトルにストレートに「ブランド・マネージャー」と付けて出版されたことの勇気は凄いなぁと思いました。※結局、多くの顧客(ファン)が付いたようです。

それからしばらく水野さんをマークしていて、その数年後に、水野さんが登壇するセミナーに受講してロックオンし、ブランド・マネージャー認定協会の設立の少し前に、協会の理事就任をお願い、ありがたいことにご快諾いただき、協会設立時より理事に就任していただきました。※現在は評議員

話しは戻ります。

先程のブランディングの目的の定義のように、ブランディング(ブランド構築)とは、長期的な経営安定の根幹となるプロセスです。

とりわけ「長期的」というのがとても重要なキーワードとなります。

当たり前の話ですが、会社や事業は、うまくいっているときと、うまくいかないときがあります。

経営者やマネージャーは、うまくいっているときはそのまま施策を継続するので問題ないのですが、うまくいかなくなると、いろいろと変えてみたくなってしまい、本来であれば、変えてはいけないことまで変えてしまいます。

私自身も長年、2つの組織の経営をしているので、身に染みて感じます。

ブランディングの観点からも同じことが言えます。

変えること自体を否定しているわけではなく、「変えても良いこと」「変えてはいけないこと」があるのです。

また、うまくいっている場合でも「飽きる」という心の動きにより、変えたくなることもあります。意外とこの心の動きが一番くせものだったりします。

では、変えてはいけないこととはいったい何なのでしょうか?

それは、顧客や消費者に届けているメッセージの中で「約束していること」です。これを「ブランド・プロミス」といいます。これが変えてはいけません。

「ブランド・プロミス」を変えて既存のブランドをそのまま使うということは、今までの顧客や消費者を無視した行為につながります。

もし変えるのであれば、ほかのブランドを新たに立てる必要があるでしょう。

中小企業でも、これに当てはまる過ちとなった例はたくさんあります。

地域密着型ビジネスの例をいくつか見てみましょう。

スローフードを「約束」していたイタリアンレストランが、商圏にファミリーレストランが増えたため、価格帯を下げ、同じブランドのまま顧客回転数を上げる戦略を選択する。

脱毛専門のエステサロンが、競合が激しくなってきたので、同じブランドのまま癒し系のスパエステに変更する。

耐震専門のリフォーム会社が、「これからの流行は『LOHAS(ロハス)』だ」と考え、同じブランドで耐震とは関係ない自然素材のロハス・リフォームを打ち出す。

これらの例は、全て当社のクライアントが、支援する前に起きていたことでした。

例えば、耐震専門のリフォーム会社が今まで、そこそこ売上を確保していたところ、その会社の社長が「これからの流行は『LOHAS(ロハス)』だ」と言い出し、特にブランドを変えずに、自然素材のロハス・リフォームを打ち出しました。

そのロハス・リフォームは、そこそこ広告・販促しましたが、まったく売れません。

というのも、ブランド・プロミス的には、耐震専門のリフォームの場合は「家族を守る安全な家づくり」であって、自然素材のロハス・リフォームの場合は「地域環境や健康に配慮した家づくり」ということで、顧客に約束することが全く違います。

このように、特に地域密着型のビジネスの場合は、店舗を持つなど、何らかのサービスを提供していること自体がすでにマーケティング活動となるわけですから、不用意に今までの顧客に届けているメッセージを変更することは、「ブランド・プロミス」を破る危険性をはらんでいるのです。

それは最終的に顧客離れにつながりかねません。


今回は「何のためにブランディングするのか?」いわゆるブランディングの目的と、「ブランド・プロミス」というとても重要で、かつ繊細な側面も見てきました。

次回は、このような重要でかつ繊細な要素を含むブランドの役割とは何か? について考えてみたいと思います。

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