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消費者・顧客にとって「ブランド」はどのようなメリットをもたらすのか?

本題に入る前に。

この10数年は、書籍をはじめ執筆をいろいろしてきましたが、執筆にとって最もスムーズな環境は、私の場合、好みの音楽を聞くということが分かっています。
今日は『QueenⅡ』のアルバムを聞きながら、この記事も書いています。
映画ボヘミアン・ラブソディが2年前に流行り、Queenが見直されましたが、私の場合は、40年以上前の中学生の時からのファンです。
※Queenは初期のハードで挑戦している音が特に好きです。
当時のQueenファンは、日本では女子中高生ばかり。中学男子としては、ファンであることを公言できませんでした。ファンであることは、同年代の男子からみたら女々しいことだったのです。逆に今は、古くからのファンであることが自慢できるほどになりました。
でも、Queenの話しをする時は、ドヤ顔になるようなので注意が必要な今日この頃です。


さて、本題に入ります。

今回から「ブランドの定義」から一歩踏み込んで、そもそも、ブランドは「消費者・顧客」と「企業」で、それぞれどのようなメリットがあるのかを双方の視点で見ていきたいと思います。

まず今回は「消費者・顧客」の視点でのブランドがもたらすメリットを見ていきます。


消費者・顧客は、ブランドを頼りに識別することで、自身が欲しい製品・サービスと、その他のものを区別し、内容を判断してから手に入れることができます。ブランドが消費者・顧客に対する価値提供が維持されているとき、ブランドのメリットは、さらに価値あるものへと膨らみます。

そのメリットとは、次のように4つあります。

① 探索コストの低減
② 価値の獲得
③ 自己イメージの投影
④ リスク回避

1つ1つ見ていきましょう。

① 探索コストの低減

ブランドは、消費者・顧客が商品・サービスを選ぶ際に、調査や検討する労力を下げる役割があります。ブランドの最も基本的な役割は「競合との識別」ですので、消費者・顧客がブランドを認知し、そのブランドがどのような効用をもたらすかを知っているのであれば、あれこれ悩んだり、検討する必要がなくなるのです。

今はコロナ禍なので、しばらく出張していませんが、以前は、出張で知らない町に行く際、移動で何があるか分からないので、余裕を持っていくわけですが、ほとんどの場合、電車は時間通りに着くので、必ずといっていいほど時間が余ります。
このような時に、カフェ(喫茶店と言いたい)で時間をつぶそうとするわけですが、スターバックス、ドトール、コメダなど知っているカフェを必ず選ぶことになります。名の知らぬカフェ(ここでは絶対に喫茶店と言いたい)には、まず入ることはありません。なぜかは明白ですよね。
認知しているブランドであれぱ、コーヒーの味、店の雰囲気、客層などオーバーに言えば五感の全てがある程度約束されています。価格帯までもです。
このようにブランドは、あれこれ悩んだりすることが必要なく、検討する労力を下げてくれるというメリットを一消費者である私に与えてくれるのです。

② 価値の獲得

消費者・顧客が、ブランドから得られる価値は、次のように大きく2種類に分けられます。

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【機能的価値】
製品から変更・削除しても、製品そのものの機能に影響がないもの(例 掃除機の色)

【情緒的価値】
製品から変更・削除すると、製品そのものの機能に影響があるもの(例 掃除機の吸引)

機能的価値とは、製品・サービスの基本的な機能や品質であり、掃除機を例にすると、色やデザインということなります。

情緒的価値とは、広告やデザインなど、製品・サービスの周辺に付加されている情報やイメージ、情緒的な側面のことであり、基本的な機能以外の価値ということで、掃除機を例にすると、吸引力ということになります。

ダイソンの掃除機が、デザイン性にも優れ、吸引力にも優れているからこそ、当初より強いブランドでいたのではないでしょうか。

成熟社会においては、製品・サービスを機能的価値のみで差別化することは困難です。どのラーメン屋さんに行っても、まずいラーメンってほとんどないでしょうし、どのシャツを買っても、すぐにほどけてしまうなんてことはほとんどなく、一定期間は丈夫に着ることができます。

企業側は、どのような情緒的価値を消費者・顧客に提示できるかが、ブランドの価値を左右すると言えることから、情緒的価値ばかりにフォーカスしがちですが、機能的価値を絶対に疎かにしてはいけません。私はブランド・マネージャー認定協会の代表をしていることもあり、たくさんのブランディング事例を見ていますが、機能的価値を疎かにして、上手くいかなくなる例も少なからず見ています。

いずれにしても、機能的価値と情緒的価値は、どちらも消費者・顧客のニーズと、商品・サービスが強く結びつくことで、大きな価値としてメリットをもたらしてくれるのです。

③ 自己イメージの投影

ブランドは、消費者・顧客が自己イメージを投影する象徴的な役割も果たしています。ある特定のブランドを購入したり,使用・利用するとき、実は、そのブランドに抱いているイメージを自分自身と重ね合わせているのです。
同時に、他者に対して「自分がどのようなタイプの人間なのか?」「どのようなタイプの人間になりたいのか?」を伝達する手段にもなります。

ミネラルウォーターのエビアンのターゲット層は、F1層(20~34歳の女性)と言われていたようですが、たしか20年くらい前に、こんなことを聞いたことがあります。 ※誰から聞いたかは忘れました。

エビアンは、意図的に「ビジネスシーンで自分のデスクにエビアンを置いている自分が好き」という自己イメージの投影する20代後半のOLがターゲットだったと。真相は分かりませんが、そこそこ納得できる話ですよね。
実際に、以前セミナーでこの話しをしたことがありました。終了後名刺交換の際に、受講されたある若い女性から「私、このまんまのOLです」と言われたくらいですから。

また「スタバで『MacBook Air』で仕事をしている自分が好き」という人も多いように思います。自己イメージの投影としては、「都会派でスマートだと感じているし、そのような自分を目指している」からなのでしょう。

「ドヤリング」って知っていますか?
スタバで『MacBook Air』を「ドヤ顔」で使うことを「ドヤリング」と言うようです。SNSでその「ドヤ顔」をアップする人もいるようですが、かなり痛いですよね。(笑)   ※自己投影は、やり過ぎに注意

若干話がずれましたが、「自己イメージの投影」は、②で説明した「情緒的価値」のひとつでもあり、消費者・顧客に対してメリットをもたらしてくれます。

④ リスク回避

ブランドは、消費者・顧客が購買を決定する際のリスクを低減したり、回避させることができます。その前提となるのは、ブランドに対する経験や知識となります。ブランドを利用することで、さまざまなタイプのリスクを低減することができるのです。

購買決定におけるリスクについては、ブランド戦略論の世界的権威のケビン・レーン・ケラー教授が、大著『戦略的ブランド・マネジメント』にて以下のように6つ示しています。

【機能的リスク】
購入した商品が,購入者が期待した機能を果たさない

【身体的リスク】
購入した商品が,使用者や周囲の人々の健康や身体に危害を加える

【金銭的リスク】
購入した商品の提供する価値が,支払った価格に見合わない

【社会的リスク】
購入した商品が,社会的な迷惑をもたらす

【心理的リスク】
購入した商品が,使用者の精神・心理に悪影響を及ぼす

【時間的リスク】
選択の失敗などにより、他商品を探索するという機会費用が発生する


対面でのセミナーを受講する際などに、ありがたいことに、机の上にミネラルウォーターが置いてあることも少なくありません。先程の「エビアン」とか、「南アルプスの天然水」「クリスタルガイザー」など、ペットボトルにラベルが貼っているので、安心して飲むことができます。

これがもし、ペットボトルにラベルが貼っていなかったら飲めるでしょうか?
私は、会場のスタッフに安全性を確認するなどしないと飲めません。
※何が入っているか分からないので
ブランドのラベルが貼っていても、危険性が全くないとも言えませんが、このケースでのリスクの回避は、セミナー主催者のブランドの影響と言えるかもしれません。

このように、水1つにしても、飲む前のリスクを感じるものです。実際にそこそこ高額の費用を支払うケースでは、もっとリスクを感じるので、ブランドは、このような検討する労力を下げてくれるというメリットを私たち消費者・顧客にに与えてくれるのです。

今回は「消費者・顧客」にとって、ブランドがもたらす4つのメリットを見てきました。

次回は、「企業」にとって、ブランドはどのようなメリットをもたらすのかを見ていきたいと思います。

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