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田植え機操作、思い出すのに時間がかかるなぁ~

今から約35年前、私は東京~富山への通いの百姓をしていた。
農業用トラクターの操作の面白み等は、すでに「農業用トラクターは楽しの1部から4部で著したが、今回はこれに続く田植え機のことを述べてみたい。

■トラクターで、バン田 → 水田(みずた)→ 代かきと、3度に亘り田耕し作業をして来たのは、田植えの為の準備だ。

そこでようやく、最後の仕上げの田植え作業となる。
昔は地域の人が総出で、苗を手で植えていた。これは大変な作業で、腰が痛くなる。

今は、田植え機でおこなうが、それにしても、よくこの複雑な機能を持たせた田植え機を開発したものだと感心する。我が家の田植え機では、当時で約60万円だった。
兎に角、この田植え機の登場で、田植え作業は格段に楽になった。

さあ、それで田植え機を納屋から引っ張りだし、動かすのだが、これが少々大変なのである。
何が大変か? それは1年ぶりで動かすからだ。課題は2つある。

■一つ目は、機械そのもののメンテナンスである。
タイヤの空気は抜けているから空気を入れ、各部を点検し、潤滑油を指し、燃料を入れ、エンジン始動。そして各部の作動を確認する。不具合があるとすぐに農機具屋さんに電話するが、部品がすぐにあるとは限らない。だから実際に使う日よりも、1週間ほど前にメンテナンスをしておく必要がある。
これにだいたい3時間位かかる。
毎年、「頼むから、正常に動いてくれ」との祈りを込めて、このメンテナンス作業をしている。

■もう一つは、操作する私自身の操作感覚の呼び戻しである。
何しろ1年ぶりだと、「あれ? このレバーは何だっけ?」と、すぐには思い出せない。操作レバーは左右に沢山ついているから、そうなるのである。
しばらくすると「あぁ~ そうか、」と思い出す。
そして、ゆっくりと動かし、徐々に感覚を呼び戻す必要がある。
まあこれにも3時間ほどかかる。

それでもようやく基本操作を思い出す程度だから、あとは実際の作業で、徐々にコツを思い出すしかない。
最初に田圃に入って、通常よりもゆっくりしたペースで作業を開始。半日くらい経つとほぼ昨年の感覚が蘇り、丸一日作業すると調子が出てくる。

ここまでくると、しめたもので機械は自分の手足のようになる。すると今度は田植え作業全体に気がいき、「さあ、明日はどの田を田植えするのか・・・」となる。

当時は、姉と義兄が中心になり農作業をしていたから、その指示を仰ぐ。私は「季節的な助っ人」だから、滞在約10日の間に全て終わらせなくてはならない。

すると、夜明けの5時くらいから、陽が完全に落ちる午後7時頃までフルに作業をしなくては間に合わない。

田植えは、空は青空でも風が強いと出来ない。それは土にわずかに差し込んだ状態の苗が、風で流されてしまうからだ。

「風よ吹くな」と願いながら、雨が降れば合羽を着て、畔の上でおにぎりを食べ、夜明けから日没まで田植え作業に明け暮れた。すべての田の田植えが終わると、「やったぜ!!」という達成感がこみあげてくる。

だが、なんでもそうだが「準備8割」で、苗に毎日水をやるとか、肥料をやるとか、そこまでの細かいした作業の方が実は大変なのである。
そのことがよく分かった。

田植え作業で思い出すのは、下の田圃に目をやると蛇行することだ。最初の頃はチョット何かあるとすぐに地面を見た。すると植えた苗の列も蛇行した状態になる。

そうならないようにするためには、遠くの動かない「地上の物標」にから目を離さないのが私のコツだった。
「地上の物標」という言葉は、海をヨットで走るときに覚えたものだ。

するとヨットも田植え機も、操作する人間の見ているところへ直線的に進む。
そのようにすると、田植え機は真っすぐ走り、苗を植えた列も、直線で綺麗になる。
すると、稲刈りも楽になるのである。

今では良き思い出である。


立山連峰を見ながらの田植え。

#田植え #農作業 #田植え機

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