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NZから世界情勢を俯瞰する

 この世でニュージーランドほど世界の喧騒からかけ離れた場所もないだろう。世界各地で起こる紛争や政治的緊張がまるで他人事に思えてしまうくらい、ニュージーランドは世界から隔絶している。

 どういう訳か、そんな南半球の絶海の孤島にやってきてしまったが、私はこれでも一応政治学科卒業、世界情勢に関するニュースはどうしても気になってしまうため、割と頻繁にチェックはしている。

 という訳で、平和溢れるニュージーランドから世界情勢を見つめて思ったことを、取り留めもなく記しておこうと思った。深いことは考えず、何のファクトにも基づかず、ただ思ったように文字を打っている。詳しいことはWikipedia君に聞いてほしい。あくまでも政治学科卒のNZ在住日本人が思ったことを書いているだけである。


ウクライナとNATOの接近

 ウクライナ戦争の本質を理解するには、はるか昔の「キエフ大公国」や「タタールのくびき」から始める必要があるように思う。大学受験時は日本史選択でロシア史もちんぷんかんぷんではあるが、ロシアというこの世の現象を理解するには、少なくともそこまで遡る必要があるだろう。

 帝国主義や共産主義という、その時代の一過的なブームを抜きして、凡そ各文化集団には固有のリズムがあるというのが私の常々思うところ。ロシアのそれは「征服と被征服」そして「ヨーロッパの中のアジア」なのではないかと思う。ロシアは他人の土地を征服することで領土を拡張してきたが、それは常に外敵の脅威に晒されていることと同意である。また、モンゴル帝国の支配を経てヨーロッパ社会とは完全に異なるアイデンティティを有するようになり、ヨーロッパの本流に対してある種の劣等感を抱いているのも事実だろう。

 ウクライナというかつて自国の領域であった「兄弟」がNATOと手を組み反旗を翻すというのは、まさに自国が新たに征服されるという疑念と、いつまで経っても自分たちはヨーロッパではないという劣等感をロシアに再確認させるには十分過ぎたのではなかろうか。

 NATOの本質は抑止力であり、本格的な全面戦争をするための同盟ではないというのが私の理解するところ。ウクライナがNATOに加盟する動きを見せたことでロシアはウクライナへの侵攻を踏み切った訳で、ウクライナが実際にNATOに加盟したら、それはロシアにさらなる戦線拡大の口実を与える結果にしかならないと思う。

 もちろんNATOもそのことはよく分かっていて、今はロシアに戦争拡大の大義名分を与えないギリギリで最大限の軍事的支援を行なっているなあと日頃から思う。平和な世が長く続いたこともあるので、各国はウクライナの戦場であらゆる兵器を試す良い機会を得たと見て、またロシアの戦力の程度を測る絶好の機会を得たと見て、ちょうどいい塩梅の武器供与を続けているのだろう。ウクライナに勝たせる気もロシアを打ち負かす気もないのだろうと内心思う。

 このままトランプが大統領になりNATOがウクライナから徐々に手を引いたら一体どうなるのか。かつて欧州ではミュンヘン会談でナチスドイツに譲歩した英仏がその後更なる軍事拡張を続けたナチスドイツとの戦争に突入した過去があるが、似たような状況になるのではないかと思ってしまう。そう言った意味でも、ロシアには最大限の警告を与え、一方でロシアの事情も理解した上でウクライナにはある程度の譲歩を迫るしか世界がこれからも平和であり続ける道はないように思う。

 抑止力は抑止力としての役目を全うすべきだが、それが張子の虎だと暴露された瞬間が一番危うい。ある意味、今は瀬戸際である。


イスラエルという欺瞞

 イスラエルは侵略者なのであろうか。私はパレスチナとイスラエルどちらも訪れたことがあるが、確かにイスラエルは気味悪い土地であるように感じた。中東とアフリカの一連の流れの中に、陸続きであんな国があるのは明らかにおかしい。

 そもそも、聖書や宗教といった空想に基づいて「そこ昔住んでたねん!大切な祖先の土地やねん!」で国家を建設できるはずがない。前提がそもそもおかしいのだ。では、どうしてそんなことが現実となり、今日の中東にイスラエルという国家が存在しているのか。

 それは、欧州人が未だにユダヤ人とは共存したくないからなのではなかろうか。時代は変われど、人間の本質なんてこれっぽっちも変わらないものである。欧州人は、かつて差別をして自分たちから遠ざけてきたユダヤ人を、今でも遠ざけておきたいと心の中では思っているのではなかろうか。そう思うと、何かと合点がいく。

 欧州は中東からの移民が押し寄せているだけでも大変なのに、ユダヤ人国家であるイスラエルはなんとその中東のど真ん中に放り込まれているのである。自分たちは祖先の土地に戻ってこられたと思っているのだろうが、ある意味そこは四方を敵に囲まれたゲットーである。国民皆兵でアイアンドーム?だか何だかを配備して、せっせと入植地を作っているイスラエル君。差別や迫害がなければ、そもそもそんなことをせずに各々の土地でゆっくり過ごせていたのではなかろうか。

 だから、西側諸国はイスラエルの支援をするし、イスラエルという国家を承認する。だって、そうしておけばユダヤ人が勝手に自ら火の中に飛び込んでいってくれるから。民主主義的手続きによってホロコーストを行うような政権が誕生してからまだ100年も経っていないのに、手のひらを返したようにユダヤ人を愛して受け入れる訳がない。というか、前提として聖書というファンタジーに基づいた国家建設なんていう馬鹿げたことを、何の打算もなくできるはずがない。

 もちろん、一番迷惑を被っているのはすでにそこに定住していたアラブ人である。イスラエルが勝手にやってきたせいで定住地を追われ、天井のない監獄に押し込まれてしまった。しかし、当のイスラエル君も実は好んで中東の一角に押し込まれにきているというアイロニー。一方でユダヤ人差別をタブー視し、イスラエルへの連帯を示す裏でほくそ笑む欧州君。そして、アラブの難民は地中海を渡って欧州を目指す。なんだか鬱になりそうな世の中である。

 日本の立ち位置は非常に難しいが、日本にはユダヤ人を迫害してきた歴史もなければユダヤ人と深く関わった歴史もないため、イスラエルに過度な肩入れをする必要はないと思う。むしろ石油の確保の方が数万倍大事なので、いいバランスを取ってアラブ社会との付き合いをより重視していく方がいいと思う。


中国経済の失速

 21世紀の義和団事件が起こるのではないかと巷では囁かれているが、中国政府も馬鹿ではない。百年の計で国家運営をする稀有な政権である、歴史上繰り返し政権に反旗を翻してきた百姓の反乱を封じるために、特別躍起になっているのがよくわかる。

 わかりやすいのがインターネット規制。そしてスマホ1台で何でも完結したり顔認証が即座に導入されているのは、先進的な一面ももちろんあるが、それ以上に中国政府の一般大衆への恐怖心の裏返しという側面が強いであろう。

 近年で一番中国政府が冷や汗をかいたのは、間違いなくコロナ禍の上海のロックダウンであっただろう。意味もなく自宅に閉じ込められ社会から隔離された何千万という上海市民は、ろくな飯にもありつけない有様であったらしい。HDIも非常に高く洗練された上海市民が腹を空かせ、粗食で日々を食い繋ぐしかなかったあの状況は、まさに暴動の一歩手前で政権を揺るがす瀬戸際だったのではないかと思う。中国の政権が転覆する瞬間があるとすれば、古今東西可能性が最も高いのは、一般大衆がロクに美味いものを食えない状況が長引いた時であろう。そのことは中国政府もよくわかっていたとは思うのだが、どうにもこうにもならないメンツがあったらしい。

 という訳で、ここ最近の中国経済の失速は控えめに言ってかなりヤバい。13億の人民がロクに満足する飯にありつけず、不満が爆発して暴走する可能性が大いにあるからだ。この経済状況が立ち直らないとしたら、間違いなく世界は中国人の胃袋によって混乱に包まれるであろう。そして、中国政府は間違いなく手っ取り早く問題を解決する手段として外交カードを切る。愛国無罪で日本にいちゃもんをつけても、腹の中の虫が収まる訳ないのだが。

 中国は基本的に孫氏の兵法に基づき「戦わずして勝つ」ことを主眼に駒を進めてくる。台湾も香港も、本心では軍事侵攻をするつもりはないだろう。軍事力はあくまでお飾りであり、華夷思想の残滓である。急ピッチで建造している空母は実戦では役に立つはずもなく、ただ機動部隊を保有して「どうだ!中国は偉大だろ!!」と言いたいだけのオチであるように思う。しかし、国内の経済状況がどうにもならなくなり、国家百年の計に綻びが生じたその瞬間、何を間違えたかとち狂って台湾か日本を攻撃してくるリスクは大いにあるように思う。

 しかし、こればかりはどうしようもない。中国は国家というより国家の面をした中華文明であって、サイクル的にもう動乱を迎えることなしには立ち直らないのではなかろうか。とにかく、人民がお腹いっぱい食べれていれば問題はないはずである。大豊作を願う以外にどうしようもない気がしてきた。陽出る国から卑弥呼様の助けを借りる時が来たか?

 以上、戯言でした。

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