商社マンの転職市場における市場価値の実態について④ ~自らの経験を基に~

子会社出向経験が外部で評価されると思っている商社マンが実に多い一方で、実際のところはそう甘くはないとのくだりで前回終えました。続きです。

外部の労働市場で評価されるのは大手商社が100%出資していない関係会社でのCXO経験です。逆に、「100%子会社でのCXO経験」は期待しているほど評価されません。

それは、100%子会社の場合、親会社(大手商社)の看板だけで仕事をするからです。最も評価されるのは、大手商社の出資比率が50%未満の持分法適用会社、或いは更に出資比率が低いケースです。
この場合は出資先の経営に及ぶ大手商社の影響が比較的限定的である為、他の株主などの事業パートナーに対して、その会社を代表して対峙することが求められるからです。そうなると、大手商社の看板で仕事は出来ませんし、自ずと人間力が磨かれます。

この様に、キャリア形成の観点からは大手商社がマイノリティ出資(50%未満)である先への出向経験が望ましいわけですが、マジョリティ出資(50%超)先への若手時代の出向も経験としては貴重です。一昔前の出向と言えば、定年前の社員が片道キップで送り込まれるなど、出世の道を断たれた最後の墓場というのが実態でした。

しかし今は、20代後半から30代後半にかけての出向先での事業経営の経験は、包丁一本持ってキャリアを練り歩く寿司職人のように、将来出向元の商社を離れてもビジネスマンとして自立していく為の極上の経験だと思います。

本体にいては経験できない多種多様な経験を積むことができます。これは海外駐在も同様のことが言えますが、100%の庇護を受ける先であっても、そこでの自分の立ち位置は上がりますし、より多くのスタッフを抱え、責任範囲も広がり、経営に与える自らの影響は明確に拡大します。

労働市場での評価という意味では片手落ちの部分もありますが、本体に居続けるよりも内面の成長は加速するというのが自分の考えです。

若手は本社に座って事務作業をする時間を減らし、関係会社や現場に出向く時間を増やし、泥臭い経営実務の現場経験をもっと増やすべきだと思います(当人が望んで簡単に実現するものでもありませんし、その順番が回ってこないが為に商社を去る若手が大勢いることもまた事実なのですが・・・)。

本社(或いはリモートワーク先)での事務処理の為の残業時間ほど、人生という貴重な時間を無駄に費やしているものはないと思います

次回に続きます。

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