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パズルアクションとライティングの妙 「INSIDE」レビュー

2021年ゲームレビュー 11 
4.6時間。実績コンプまで。
2016年に発表されたPlaydeadの超有名作品。すべてが謎に包まれているが考察の余地はあるというリアルでの謎解きが魅力で、死に覚えのアクションも心地よい難易度。何より画面が美しい。
以下ネタバレ。

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大人や警察犬(軍用犬?)など、何かの組織に追われているだろう男の子を操作して、右へ右へと進んでいく2Dアクションゲーム。世界に奥行きはあるが男の子は道を外れることはできず、まるで決まったレールの上を歩いているかのよう。

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男の子は失敗するとすぐに死んでしまうが、アクションや謎解き自体は難しくない。トラップは必ず回避できるように作られているし、男の子ができることははしごやロープの昇降、ジャンプ、物の押し引きなど直感的な物が多く、その場でできそうなことを試してみれば答えはすぐに見つかるだろう。またミスした後の復帰も速いのでストレスを感じにくい。

本作に言葉は出てこず、かろうじて看板や矢印がある程度。文字や言葉による説明は無い。男の子の名前すら不明。それでも背景にある研究所や人々の様子などから一端を想像することができる。

おそらくこの世界は一度戦争などで崩壊したのだと思われる。根拠は水中に沈んだ研究施設や壊れたまま放置されている車などだ。おそらく社会規模は極端に小さくなり、国民は支配者と奴隷とに分断されたのではないか。男の子は奴隷検査場に忍び込み、さらなる深淵に足を踏み入れることになる。

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水没した研究施設で水中呼吸能力を身に着け、謎の衝撃波が襲ってくるエリアを越えた男の子は、水中に浮かぶ人の集合体のような肉塊(ハドル)と出会う。男の子が研究者に促されてハドルの中に入ると、ハドルは自ら動き出し、ガラスを突き破って研究者に襲いかかる。いや、実際は移動しているだけなんだけど。

ハドルは研究所の壁を突き破って外に出るが、ダメージが大きすぎたのか転がった先で動かなくなってしまい、ゲームはそこでエンディングを迎える。果たしてハドルは何だったのか。ここは本当に研究所の外なのか。ゲームタイトル「INSIDE」の意味は。ヒントは今まで通ってきた道のりにあるものの、明確な答えはどこにも無い。

このような拠点を持たずに進み続ける形式のゲームはあまりプレイしたことがなかったので、古いゲームながら筆者にとっては新鮮だった。最後までノンストップなので、プレイ中に男の子の体力が心配になってくる。というか、この男の子めっちゃ身体能力が高いよね。たぶんSASUKEを完全制覇できる。

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男の子のアクションは非常に細かく、同じジャンプでも場所や状況によって異なる動きを見せてくれる。物の押し方も、何をどこから押すかで全部違うし、ミスで死んでしまうバリエーションも豊か。

また本作のライティングは特に注目するべきだ。真っ暗ではないが常に薄暗く、屋外でも太陽の光は弱々しい。蛍光灯やサーチライトの人工的な雰囲気はステレオタイプなディストピアを感じさせる。炎によってできる影のゆらめきなども見事なものだと思う。影を使った謎解きなどもあり、その美しさを堪能できた。

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