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この日がやってきました。

令和4年2月12日ゼロ円ハウス138日目。

朝起きてご飯を作って食べる。今日はパーティー。祥子さんが午前中に来て、道具やらをとりあえずゼロ円ハウス置いて仮の準備をしてから、当日に限って色々忙しいらしく料理の準備をしにすぐに出ていった。

その後、少し整理的な意味で机を動かしたりとか物の移動を中心におこなった。薪ストーブで料理をするみたいなので一応、廃材を更に切って足しておいた。どの程度、薪ストーブを料理に使用するか推測がつかなかったのでビビリの自分は足す方向へ。

少しばかりの整理を終えて、時間が空いた。何かじっとしてるのももどかしくて原付きのガソリン入れるついでに外に出た。1時間程時間がある。ガソリンを入れて、港で適当に腰かけて太陽を浴びた。天気も良かったから散歩してる人もチラホラいた。特に何も考える事も無く、微妙なさじ加減でボーッとしながら時間を過ごす。

良い頃合いなのでゼロ円ハウスに戻る。徐々に時間的な物もあって、ゼロ円ハウス内の雰囲気もパーティーに向けて変化しているように感じた。

程なくしてNHKのKさんも来た。カメラ持ってる...やっぱり取材なんだなとカメラと言う道具を見て少し実感した。

テーブル代わりに合板を使うから屋根裏から降ろしたり、机拭いたりと動いていたら、テキパキ動きますねとKさんに言われてめちゃくちゃ恥ずかしくなった。テキパキとは名ばかりで、きっと動きはドタバタしている。自分的にはやってる感じをなるべく出したくないし、そつなく何事も無いようにやることが正義だと思ってるし、そう言う自分になりたいから恥ずかしくなった。やる気、やってる感じ出ちゃってるじゃん...みたいな。このドタバタ感がおばちゃんと言われる所以だろう。

祥子さんの料理にも使うので薪ストーブをつけ始める。自分なりにコツは掴んだつもりでいたから意気揚々とやっていたら中々火がつかねぇ。こうやって何かを身につけた気になると足下すくわれる事は良くあるよね。人生ですね。それを感じながらユキさんにパスした。少し後に見に来たら見事に火がついていた。

徐々に人も増えてきて、祥子さんも肉を捌き始めた。ついにスタートした。祥子さんが捌きながらイノシシの特徴や部位の説明、どこを捌いているか?メスとオスの違いや、イノシシと自然と人との関係性。それらを要所要所で的確に挟みながら肉はどんどん捌かれていく。そのうちに祥子さんが捌く場を囲むように人が高密度で食い入るように見ていた。自分はそこにあまり入ることが出来ずに距離を置いて、一歩出た所で人と話したりしていた。

さすがにゼロ円ハウス。来る人は濃い人ばかりだ。人数の問題ではない。1人1人の存在感が濃すぎてゼロ円ハウスの許容の濃度を普通に越えていた。マジで息が詰まるとはこの事だ。明らかに境界線があって、その奥とこちらでは空気感が全く違う。

一歩外側でグダグタしてたらNancyが来た!久しぶりに会った気がする。さきちゃんとこうた君、Nancyと初対面。さきちゃんはNancyにFacebookで友達申請を送っていたが多分誰か分からなかったので保留にしていたのだと思う。この初対面の場でNancyが確認して友達になっていた。Nancyに、気が利かないね説明してくれれば良いのにと明るめに怒られた。すみません...

Kさんともお話した。Kさんは大学時代、就職が厳しい時期に就職活動をしていた。80以上の会社を受けて、受かったのが2つだった。それがNHKともう1つだった。もう1つもNHKと同じ業界だった。そして何故NHKになったのか?人事担当が5人中3人がKさんと出身が一緒だった事もあったのかKさん自身は受かるとも思っていなかった事とその巡り合わせとも言える何かに引き寄せられるようにNHKに就職した。恐らく、自身で選んだ感覚も強くないと思う。たまたまと言う他無い物が目の前に現れて、それを掴んだだけ。そんな感じだろうか。

Kさんは大学が外国語専攻?だったので留学したりとかもあったそうだ。しかしあまり英語などが得意ではなくハートで乗り切った所が結構な割合を占める雰囲気が話からして漂っていた笑 Kさんの大学時代のエピソードが面白くてもっと聞きたくなった。詳細は割愛するが、スベらない話並みの内容だったし奇想天外だった。というか大学時代を抜けて社会人の中に飛び込んでも良いエピソードが色々ある感じだった。

面白エピソードだけではなくてKさんの今の状況や状態、考え感じる事を複合して自分から見ると、ゼロ円ハウスに居ても割りと違和感無いなと思える要素もある気がしている。きっと何故、ゼロ円ハウスを取材しようと思ったのかを聞かれても説明がKさんの中では難しいのかもしれない。いつの頃から、積み重なった関係の無さそうな各々の物。それらが多分、最近になって集合して1つの出来事として目の前に現れたのだろう。そしてその出来事を見ると、あれもこれも...そう言うことか...って思う部分もあれば、何がどうなっているのか分からない部分もある。本当は積み重ねの後の出来事1つなのだが自身の中に処理しきれない物が一気に押し寄せて来たように感じているのかもしれない。そうなれば1つが1つに見えていない可能性もあるし、それは大きな混乱を生んでもおかしくはない気がする。でもそれはきっと一気に押し寄せて来たように見えて実は認識無く積み重ねてきた1つ1つがそこで見えるように、感じれるようになってきたが故の感覚なのではないかと思う。押し寄せて来たのではなくて、元々ずっとあったものが見えるようになっただけなんじゃないだろうか。ただいきなり照らされたから、いつの間に!みたいな風に感じる事は当たり前な気がする。

Kさんは旅が好きらしい。旅好きの人の前で言う必要も無いんだけど自分は旅の何が良いのかが分からない。別に否定をしている訳じゃなくて旅で何を感じれるのか?何を感じたら良いのか?楽しみ方が全く分からない。自分は場所に興味が無い。景色を見ても日常で見る景色と言うか場所と言うか、それに比べたら普段見ないような新しいものを見たなと言う驚き的な何かこそ感じるものの別にそれを越えない。もう一度来たいとも思わないしなんなら新しいものを見たなと言う感覚を得るためなら他でも代用が利くものはいくらでもある。そう思ってしまう自分がいる。

こっちに来た頃は、なんでここに来たの?神奈川から!?凄いね!遠いのに行動力あるね。なんて良く言われた。この間、Yにも行動力あるなオイ!って言われた。自分からしたら行動力?ありませんけど。住んでる方には申し訳無い言い方になるが、人生どうにもならずにどうしたら良いかも分からなかったから逃げるように来たところもあるし行動力あったらここに来てないんですよ逆に。でも聞いてくる人はみんな、距離ばかりを気にしていた。物理的に遠ければ遠いほどにどうやら行動力という数値は比例して上がっていくようだ。

話は逸れた。Kさんに旅のどこが良いと思うんですか?と聞いた。どうやら海外限定らしい。何も通じない所に行くのが楽しいみたいだ。???ってなったが、大樹さんが補足のように知り合いの話をしてくれた。どうやら海外に旅に行くと何も伝わらなかったりする中で、自身の存在が誰にも知られていないような透明になった感覚になってそれが良いらしいとの事だ。Kさんもそう言う事ですと言っていた。透明になる感覚...自分の中にあるものを探してみたがそれらしき物は見当たらなかった。

しかしNHKに入ってカメラを握り、Kさんはきっと自身の中でカメラを回したいと想える物、これを知ってもらいたいと想える物、自身の中で現しきれていない物を形にしてる物と出逢いたいと言う想い等のそれらを何かに所属しながらその想いだけには忠実に過ごしてやってきたのかもしれない。それ故に最近は何かを感じているのかもしれない。

旅が好きと言うフットワークもある。自身の想いもある。NHKで、カメラと言う、ある意味自身の想いを叶え続ける事が出来るものに出逢った。カメラ1つ持って飛び回るKさんの姿が容易に想像がつく気がする。

ありがたい話、Kさんは自分を羨んでくれてた。言葉にする力もあるし、自身を良く理解している。理解しようと常にしていると。でも別にそれはKさんもやっている事なんじゃないかと思う。Kさんは映像にする力があるし、映したその物から自身の中に漂っている物に名前や形をつけようとしてる。それは分からないことが分かっているからだしそれは自身を良く理解しての事だし、理解しようと常にしているに他ならない気がする。別に手段が違うだけで似たような所を歩いている気がする。

※ここまで書きましたがこれは自分の勝手な推測と妄想の域を出ていないKさんで、実際のKさんとは大きく異なります。

いつもと違って、なんだかんだ外に出たり中に入れずにいたりして勝手にバタついていたので祥子さんの料理を途切れ途切れでしか味わい、楽しむことが出来なかった。でもお腹的には適度だった。いつもは美味しいからといつまでも食べて大変な事になっていたから今回は節度を持てた。

自分は今更なのだが基本的に脂っこい物が好きじゃない。揚げ物はもちろん、肉の脂、魚の脂も乗りすぎるとキツい。特に大トロは嫌いである。好きなのは回転寿司の中トロ。中トロと言うには淡白過ぎる感じがとても好き。しかしイノシシの脂は何故か大丈夫。自分がダメだと感じる脂は口に入れた瞬間に嫌悪感が止まらなくなる。自然と口が開き、まるで体が吐き出すように指示してくるかのような感じに陥る。イノシシの脂を含む肉に対しては体が喜んで噛もうとする。と言うより祥子さんに施されたイノシシだからだと思うけど。

メスはハイスタンダードに美味しい。肉も柔らかいし独特の臭いも無い。しかしオスも捨てがたい。個人的には食感も肉々しくて好き。後からオスを感じるけど肉を食らった感覚は強く残る。交互に食べたら止まらなくなりそう。甘い物としょっぱい物的な、メスとオス。

祥子さんは、いつもイノシシの命をどう活かせるか考えている。それでもどうにもならないこともあるし、どうにもしてあげられないこともある。それが自然な事なのかもしれないが祥子さんは命を活かせないととても残念で寂しさと悔しさを滲ませた顔をする。

イノシシがいるから来てくれと連絡を受けて祥子さんは向かう。明らかに異臭がしていて嫌な感じが漂う。そこにいたのはお腹側が裂けていて、かろうじてフーフーと言っていられる程に弱ったオスのイノシシだった。どうやらメスに盛っている時に他のオスに突き上げられての今この状態。そして裂けてから3日程経っていたらしい。てかどんだけ生きんんだよ。って思った。話を正確に自分が覚えていないが、どうやら100キロほどのイノシシで3日で結構細くなった状態で横たわっていたようだ。それはどうにもならず、解体して捨てるしか無かったそうで、その祥子さんの顔が先に書いたような顔をしていた。

イノシシの寿命は約4~5年。年に付随して大きくなる。そして100キロを越えた個体は熊のそれと変わらない程に大きい。祥子さんが1回、連絡を受けて行った先にいたのは普通に人が住んでいる地域のど真ん中に堂々と寝ていたイノシシだった。もうここまで来ると恐れる物も、天敵もいない、人も法律上では銃を使えないエリア。どうしようもない。イノシシは人が作った法律を恐らく本能的に理解して快適な場所にただ自身の身を置く事をしている。ここなら人も銃を撃てないらしい、エサもある、天敵もいない=最高。そしてそれが更なる成長を促す。最終的に犬で発破かけてなんとか追いやったそうだ。

祥子さんから話を聞くと、イノシシは本当に頭が良くて学習能力が桁違いな気がする。

イノシシ達が通る獣道。ここに人間が一歩でも踏み入れたならその道をイノシシは使わなくなる。嗅覚ゆえか何なのかは分からないがリスクを負う行動を極力避けているイメージがある。そして先の話。そのリスクを避ける感じが失われるのはどうやら子孫を残す時。でもそれも生物として考えたら子孫を残すことは大きいメリットだ。割り込まれて自身が殺られてしまうことより、その行為をヒヨって子孫を残せる可能性を感じない方がリスクなのを本能的に理解してるのだろう。

なんかイノシシの本能的選択を自分も少し身に付けられないかな?って思ってしまった。なんかかっこいいなとさえ思ってしまった。イノシシはそれだけ、自身の生に忠実なんだろうなって思う。

パーティーも程無く、終了のお時間。各々が帰っていくなかで今後の取材がどう行われていくかをゼロ円ハウスの住人とKさんと大樹さんと部外者1名で話し合われた。

Kさん的には今後、どういった感じで番組として組み立てていくかは具体性としてはまだ無い感じで、でもとりあえずは近い上司にはOKされているようだ。そしてここからは取材する日も増えていくとのことでグループメッセージを作ることなとが行われた。色々な話が飛び交う中で、やはりKさんが何故ゼロ円ハウスに興味を持ったのか?と言う話になった。Kさんは正直に分からないことは分からないと言いつつもちゃんと言葉を紡いでいた。偉そうだけどこれが人の信用を獲るんだよなと感じた。ミーティングも終えてKさんは帰られて、祥子さんも大体の片付けを終えて帰られた。その後、ゼロ円ハウスに泊まると言う猛者の十亀舞さんとゼロ円ハウスメンバーで修学旅行の夜みたいな話をして盛り上がり、そして1日の終わりを感じつつ段々とゼロ円ハウスもゼロ円ハウスに戻っていった。自分は屋根裏に寝る。初めてだがどうだろうか。

こうして非日常の1日が終わった。

ゼロ円ハウス138日目終了。

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