見出し画像

「群れない・発信しない・新刊出さない・宣伝しない・営業しない」でも、案外しっかりと生き残れた業界「だった」んだよなあ。なにもかも変わってしまった……

 「近刊検索デルタ」や「重版出来ですYO!」など、自分で動かしているサイトで「出版社のWebサイトへのリンク」と「出版社名のヨミ」を表示するためのリストを整備しています。まず、版元ドットコム・書協・出版協・出版クラブ・丸善が公開している出版社リスト等々をマージしてDBに取り込み、その後、ちまちまと手作業で追加を続け、2018年11月18日13時時点で984社、めざせ1,000社といったところです。とりあえず、近刊検索デルタの出版社名と紐づけて各社のWebサイトへのリンクを表示しています。ヨミについても近々に使う予定。これだけ集まると、他にも何か使えそうです。

 データを整理する中で、色々と思うことがありました。

 ひとつめは「やっぱり出版社のユニークIDはあったほうが便利だなあ」ということ。ユニークIDというのは固有の識別番号のことです。そういうのがあると諸々便利なんですが、現状はそうはなっていません。似たようなものとしてISBNの「出版者記号(2桁~7桁)」や、取次との「取引コード(4桁)」はありますが、残念ながらユニークIDにはなっていません。なぜ、出版社のユニークIDが存在しないかですが、総背番号制や管理に対する抵抗がどうこうではなく、現実的な問題として「では、出版社(者)って?」という定義の問題があるからです。細かい説明は避けますが、「発行元・発売元」「口座貸し」「扱い」など、業界独特の商慣習の中で築かれた複雑な体系があり、「出版社(者)」の解釈には思った以上の幅があります。そのため、ひとつに定まる固有の識別番号を割り振ることはなかなか難しい。何者にも束縛されない自由な出版活動という意味では悪い話ではないのですが、情報化・システム化においては、けっこう悩ましい。JPRO(JPO出版情報登録センター)のおかげで話はだいぶ整理されつつありますが、それでも課題は残っています。

 次は、「業界団体等に参加していない出版社って案外あるなあ」ということです。まず、その前に、出版業界で出版社が関連する団体には、以下のようなものがあります。会員数等はいずれも2018年11月18日に調べた数です(会員数の多い順)。※2019年1月31日に美術書出版会の情報を追加。

書協(一般社団法人 日本書籍出版協会) 会員数:417
版元ドットコム(版元ドットコム有限責任事業組合) 会員数:296
出版梓会(一般社団法人 出版梓会) 会員数:106
雑協(一般社団法人 日本雑誌協会) 正会員数:93
出版協(一般社団法人 日本出版者協議会) 会員数:86
NSPA(一般社団法人 自然科学書協会) 会員数:58
日本児童図書出版協会 会員数:42
JMPA(一般社団法人 日本医書出版協会) 会員数:30
JAMP(一般社団法人 日本楽譜出版協会) 会員数:30
大学出版部協会(一般社団法人 大学出版部協会) 会員数:29
電書協(一般社団法人 日本電子書籍出版社協会) 会員数:27
ブックメール倶楽部 会員数:27
学習参考書協会 会員数:24
人文会 会員数:20
平和の棚の会 会員数:18
工学書協会 会員数:16
ヤングアダルト出版会 会員数:15
コミック出版社の会 会員数:15
美術書出版会 会員数:13
農業書協会 会員数:11
法経会 会員数:11
歴史書懇話会 会員数:9
土木・建築書協会 会員数:6
NR出版会 会員数:6
CPU(コンピュータ出版販売研究機構) 会員数:6

 改めて調べると、いっぱいあるんだなあ。活発なところもあれば、そうでもないところもありました。重なって入っている例も多々あります。書籍も雑誌も文庫もコミックも出している大手の場合は、書協+雑協+電書協+コミック出版社の会、とか。その他、書協+何らかの専門の会、というパターンも多いです。これだけあれば、ほとんどの出版社がどこかの団体に属しているように思えてきますが、案外「どこにも属していない」社は多いです。それでも特に問題なさそうなんですよね。自分の勤務している会社も、実は、どこにも属していません。JPRO(JPO出版情報登録センター)は所属している団体の垣根を取っ払い、出版業界全体のインフラとして整備されているので、弊社のように「どこにも属さない」社も利用できるというわけです。ありがたい話です。

 もうひとつ思ったのは、「Webサイト持ってない出版社も割とあるんだ」ということです。ええ、あるんですよ。どうやら、それでも困らないってことのようなんですよ。自社で情報公開しなくても、オンライン書店やリアル書店や図書館でちゃんと扱ってもらえばそれでOK、というのは、ある意味、非常に割り切った考え方のような気もします。これから先もそれでいけるかどうかは分かりませんが、ありっちゃありなんだろうな。自分は「ネットで検索した時に見つからないと現実世界に存在しないものとして判断されかねない」のが怖くて、そこまでは思い切れません。

 全体通して思うのは、「群れない・発信しない・新刊出さない・宣伝しない・営業しない」でも、しっかりと生き残れた、そういう業界「だった」んだなあと。なにもかも変わってしまいました。これから、さらに変わるんだろうなあ。自分は、ついていけるんだろうか。キビシイです。

 そういえば、そもそも「出版社のWebサイトへのリンク」を貼ろうと思ったのは、「出版社のWebサイトって被リンク数、少ないんじゃなかろうか」と考えたからです。大手や文芸・話題書を出しているような出版社はともかく、そうじゃないところは、被リンク数、どうなんでしょうか。少なくとも弊社は多くありません。ちゃんと理由がある形でのリンクであればサイトのランクに影響したり、しないかなあ。そのあたりは、詳しくはわかりませんが。

 出版社名のヨミは、店頭で注文したりの際にあると便利かなあと思って準備しています。読めない社名、沢山あるんですよ。もちろん、書名も読めないの沢山ありますが、そっちは元々JPROの情報の中に含まれているので。

 そう考えてみると、JPROでも出版社回りの情報が足りないのかもなあ。でも、項目が増えると入力が大変になるから、なるべく避けたいところですよね。難しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?