【台風災害】検証 激甚水害~「19号」の衝撃【東京23区】

スクリーンショット (50)

 過去最大級の規模で上陸して「激甚水害」をもたらした台風19号。23区内でも避難勧告や避難指示の発令が相次ぐなど、各区は緊急対応に奔走した。被害の検証を踏まえた各区の対策を追う。

※2019年12月に掲載された連載をまとめました。

(1)広域避難/風向き急変割れる意見《2019年12月13日号》

スクリーンショット (51)

 「広域避難は無理なこと。実際に250万人が避難できるはずがない。(江東)5区の考え方は一致していない」。先月20日、山崎孝明江東区長は海抜ゼロメートル地帯が広がる23区東部の江東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)などで検討を進める大水害時の広域避難についてこう話した。
 10月12日を中心に日本列島を襲った台風19号は、関東地方のみならず、信州や東北地方でも甚大な被害をもたらした。江東5区が警戒する荒川や江戸川の氾濫は避けられたが、行政区域をまたがる広域避難の議論に一石を投じる契機となった。青木克徳葛飾区長も11月の記者会見で、「広域避難は本当に課題が多い。最後の最後の手段だ」と強調した。
 この広域避難を巡っては昨年8月、江東5区で構成する協議会が計画やハザードマップをまとめた。江東5区による「自主的広域避難情報」発表時には江東5区以外に避難するよう広く周知した。
 実際、台風19号で近隣区に避難した江東5区の住民も少なくなかった。例えば隣接する台東区が開設した自主避難所の台東一丁目区民館では、受け入れ避難者全59人のうち葛飾区民が18人、江戸川区民が2人、中央区では区内避難者全59人のうち9人が江東5区内の住民だったという。

ここから先は

4,673字 / 3画像

¥ 100