マーケターからみた - 今井 晶也さんの「されたい営業」
はじめまして。
Baseconnectという会社で、マーケティングとインサイドセールスのリーダーをしています岩村と申します。
弊社ではBtoB領域で営業パーソン向けのサービスを提供していることから、
営業に関する知識がサービス開発とビジネスの双方の面において必要になります。
このようなことから、著書である今井さんとは業界的に近しい存在にあり、
Baseconnectのカンファレンスにもご登壇いただいた経験や、京都の本社に遊びにきてくれて、直接お会いした経験もあります。
そして、何よりも今井さんのファンであり、勝手に親しみを感じているので、今回出版された「されたい営業」を様々な観点で自分なり分析してみて、マーケティング領域にも役立てたいと考えています。
皆さんのお役に立てるか分かりませんが、本書の魅力やマーケティングに活かせそうな内容をまとめているので、ご笑覧ください。
そして、今井さん、改めて書籍の発売おめでとうございます!
書籍情報
タイトル:お客様が教えてくれた「されたい」営業
著者:今井 晶也
Twitter:https://twitter.com/M_imai_CEREBRIX
本書の構成として、購買者約1,000名の調査データから今まで営業パーソンが「正」として信じていたものや、その誤解を紐解き、具体的な解決策やテクニックを紹介することで「されたい営業」に近づくことを目的としています。
プロフィールから見る「されたい」営業
まず、本書の前にタイトルである「されたい」営業という視点から、今井さんのプロフィール写真をみていきたいと思います。
私は書籍を手に取る際に、著書のプロフィールや略歴を確認し、執筆背景やその本に書かれている内容を想像しています。
本書では、今井さんご自身が、外見として「されたい営業」をどのように捉えているかですね。
いかがでしょうか?
このプロフィール写真を私はクリエイティブ観点で、以下のようなイメージを連想します。
・全体的に清潔感のある印象
・落ち着いた印象を与えるカラー構成
・凛々しさを演出するホワイトのポケットチーフ
・ポージングなどから感じるインテリジェンスさ
一部、モテたいという要素も見え隠れしているようにも感じますが、私は歴史のある外資系コンサルティング会社にいそうな方だというイメージを持ちました。(今井さん、許してください)
今井さんもセールスエバンジェリスト(コンサルタント)として活躍されており、このような外見でもお客様のイメージする「こんな方に営業されたい」を再現されていると感じます。
事実、外国のロイヤリティーフリーの写真サイトで「consultant」と検索すると、プロフィール写真と近しい素材が出てきます。
POINT💡
このように、相手がイメージするコンサルタントや営業パーソンの外見を再現することで、第一印象の壁を突破しやすくなります。
人は見た目が9割という本が大ヒットしましたが、それほど第一印象はその後に大きく左右されます。
行動経済学の観点からすると、人はロジックよりも感情で動く生き物です。
まずは第一印象として、「好きという好感度をもってもらうようにする」、
それが難しければ、「イメージ通りの人」を演出することが大切ですね。
表紙から見るブランディング要素
※なかなか本題にいきつかなくすいません。。。
本題が気になる方は読み飛ばしてください。
次に、表紙に関して。
表紙はどちらかというとクリエイティブ要素が多いので、その観点でみていきたいと思います。
まず、与える印象として、(私がセレブリックス社のことを知っていることが前提にありますが)セレブリックス社をイメージします。
補足ですが、セレブリックスは最近リブランディングを行い、クリエイティブも刷新しています。
このセレブリックスのブランドカラーと、今回の表紙はグラデーションの角度を含め、ほぼイコールになります。このセレブリックス社で言う「CX BLUE」を用いることで、ブランドイメージを醸成させる狙いを感じます。
本書にも登場しますが、心理学の「ザイオンス効果」近いものを感じます。
ザイオンス効果とは、接触頻度を増やすことで親近感や信頼性を醸成させる効果で、その接触はイメージとして記憶に残ります。
この手法を用いるのは本書に限った話ではなく、ヒットした書籍だとユニクロの柳井さんの「経営者になるためのノート」などが挙げられます。
そして、このブランディングという観点から表紙のタイトル以外のコピーを見ていくと、「購買者1000人の調査からみえた〜」が目立ちます。
※まちがいだらけの営業と決別はタイトルの言い換えで、「間違い」がひらがなになっているがいいですね。
これは、推測するに2つの背景が考えられます。
①抽象的なタイトルを具体的な数字を見せることによる、論理性の担保。
②セレブリックスのキーワードである「営業を科学する」のブランドメッセージの転換。
このようなことからも、今回の書籍は「今井 晶也」ではなく、「セレブリックスの今井 晶也」として執筆されてることに、今井さんの企業愛と優しさを感じますね。
POINT💡
このように、クリエイティブやコピーでブランドを構築する手法は企業やサービスを存続する上で非常に重要です。ここに着目すると、Zoomの背景や提案資料の表紙などの細かなクリエイティブ領域の重要性に気づきます。
これらは、大手企業が、それこそ電通や博報堂の敏腕クリエイティブディレクターをアサインして見事に実施されているので日々アウトプットされたクリエイティブの背景を考えることが大切ですね。
特にBtoC領域では、電車の中吊り広告や街頭ポスターなどから接触し、WEBにアクセスし、コンバージョンさせるまでのユーザーへのクリエイティブの一貫性がBtoBに比べより重要度が高く設定されている傾向にあるので、日々街中の広告に注目するのも勉強になります。
目次について(本書の構成要素)
ようやくここから本書の内容ですが、内容を引用すると書籍の内容を露出しすぎてしまうため、内容は購入して把握いただくものとして、私が仕事に活かせると感じた部分をポイントとしてまとめていきます。
本書の構成としては、以下4章でシンプルにまとめられています。
第1章……購買者の「されたい営業」を事実として把握する
第2章……「されたい営業」をもとに戦略の描き方を知る
第3章……「されたい営業」の商談の方法を学ぶ
第4章……「されたい営業」を商談で実施するための武器やコンテンツを作れるようにする
ではそれぞれの章をみていきましょう。
第1章 - 変わる購買、されたい営業
本章では、大きく「対面」か「オンライン」かの2択について
安直にどちらかを選ぶ危険性について言及されてます。
本書には出てこないですが、対面には、動物行動学という人間も動物の一種と捉える学問からみても、五感全てを使える有用性は残っています。
本書では、対面とオンラインのそれぞれの良い所と使い分けるシチュエーションについて説明されており、新たなオンライン商談のカタチを提示しています。その新たな商談のカタチを実現するにあたり、セールスがマーケティング手法やデジタルツールを取り入れた「商談という談話」を超えたアップデートを顧客目線で考えることの重要性を説明されています。
※詳しくは書籍をご確認ください。
さらに、「自社の課題を見つけ、解決してくれる」ことを「されたい営業」の本質として設定しており、第一印象や信頼関係醸成のためのテクニックについて説明されています。定性的な説明になりがちな内容ですが、アンケート結果のデータを見ながら顧客の気持ちを理解する試みから、非常に論理的に納得値が高く理解することができます。
POINT💡
マーケティング領域でもそうですが、お客様のニーズに合わせてデジタルツールを活用することはとても重要です。当たり前のことですが、お客様がほしいと思えるタイミングで情報を提供できる状態をデジタルを含めて作り出すことを、当たり前を見直し、マーケティングやセールスなどの垣根を外して取り組むことが大切です。
また、話は若干逸れますが、BtoCの領域では近年「香りマーケティング」と呼ばれる店内やショールームに外観のインテリアなどに加え、嗅覚からブランド印象を顧客に与える取り組みが注目されています。
レクサスが代表的な事例として注目されていますが、このように、オフラインでの改善も日々進化しているのです。
第2章 - 営業戦略をリデザインする
第2章では、営業戦略を「競合に勝つために策定された営業の方針と施策」と定義し、その勝つための戦略のリデザインとして、マーケティング要素をセールスに取り入れる重要性について説明しています。
もっと掘り下げていうと、もはやマーケとかセールスとか企業目線の言葉に内包される考え方の時代は終わりだよと警鐘を鳴らしています。
これは、あくまで私がマーケターの立場から感じていることですが、セールスが所有している定性データは非常に重要です。
マーケ領域では、広告予算を投下する以上「マーケットの最大公約数を最小のコストで獲得する」ことに重きが置かれ、それらがCPA(顧客獲得単価)やCAC(一顧客獲得にかかった総営業コスト)というKPIで表現され、月次の評価を決めています。
また、MA(マーケティングオートメーション)の登場により、顧客の個人情報や流入経路、接触頻度などは、設計さえ行えばある程度は見れるようになりましたが、定性データは未だ獲得が難しいのが現状です。
これらを踏まえて、本書では顧客目線のコミュニケーションで必要なコンテンツの重要性を説明しています。そして、そのコンテンツ提供をデジタルツールでサポートしながら、顧客の必要なタイミングで送ることの大切さを説いてます。
POINT💡
本書で登場する、マーケティングコンテンツとセールスコンテンツの違いは大変参考になります。
今井さんは、セールスがコンテンツを作れるようになることを推奨されていますが、マーケティング領域で、このセールスコンテンツをタイミング良く送付することができれば、リードの質も良いものになります。逆にマーケティングコンテンツも商談時に役に立つものは多々あるはずなのです。
このようなクロスメディア的観点(部門やチャンネルを横断した考え方)でコミュニケーションで必要なコンテンツを構築すると、お客様目線のされたい営業に近づけると考えます。
第3章 - 商談のブレンド化と場創りのキードライバー
あえて、「場作り」を「場創り」と表現していることが今井さんの顧客目線を徹底している姿勢を感じますね。
ここでは、タイトルの通り、「リアルとオンラインのブレンド化」の重要性について前半は語られています。
このことをマーケティングでは「OMO(オンラインマーケティング・ウィズ・オフライン)」と呼んでいます。
そして、この章で注目したいのは、企業目線でオンライン商談の難易度を上げている一つの要因として、お客様の「心離れ」をピックアップしています。「心離れ」とはオンライン商談は相手の顔しか映らず、また日々の業務で用いているPCで行うため(当たり前ですが)、どうしてもメールやSlackなどのチャットが入ってしまったり、裏で仕事をしていてもバレないという、オフラインと比べ、商談をする側にとって相手が集中できない環境を必然的に与えられているというデメリットから生まれる要因です。
※もちろん、オフライン時でもこのようなことは起こりうるのですが、頻度がオンラインのほうが圧倒的に多いのは事実としてあります。
これを「場を創る」ことで解消しようというのが、本章での解決策になり、
4つのキードライバー(持つべき観点)と12のディテール(テクニック)を紹介しています。
※各項目だけでは内容が判断できないと思うので、転載させていただきます。
各項目は是非本書をお読みいただければと思うのですが、今井さんが素晴らしいのは、このように「場創り」に必要な要素を体系化される能力があることです。
POINT💡
特にマーケティングとしても非常に重要なのが、事例の活用です。
事例の活用は、WEBサイトやホワイトペーパーなど、商談前のリードを獲得するための有効コンテンツにもなりえますし、商談時の成約に至るまでの納得値を高めるためのプロセスにも有効なので、マーケとセールスが共同で作業を行うことが大切だと感じてます。
前章でも解説していますが、ホワイトペーパーや自分たちが所有しているメディアやコンテンツなど、マーケティングとしてリード獲得目的で使用していたコンテンツが、思いの外、インサイドセールスや商談に役に立つケースがあります。
この考え方を広げ、今井さんのように顧客視点で役に立った情報を体系化することが、企業が成長する一つの要素として間違いなくあるのでこのあたりは非常に勉強になります。
第4章 - 優れたセールスコンテンツの作り方
冒頭から、「されたい営業」を追求するために目指す姿は"お客様が興味のあるコンテンツ"を届けることと言及しており、コンテンツ創りの大切さを説明しています。そして、そのコンテンツはタイミングとの掛け合わせが非常に重要であると説明されています。
そのコンテンツが企業目線での「自慢話」になるか、顧客目線の「課題解決を導く資料」となるかはタイミング次第なのです。
そして、セレブリックス社が100パターン以上の顧客事例を所有していることからも、お客様に必要とされる事例やコンテンツをあらゆる切り口でいつでも提供できる環境を準備していくことはとても重要です。
POINT💡
今井さんが司会を務めているセレブリックス社のYoutubeコンテンツで、
インサイドセールス白本で有名な茂野さんが出演された際も同じようなお話をされていました。
8:20前後〜
このように、コンテンツの質だけではなく、送付するタイミング、そして圧倒的なコンテンツ量を日々の業務で資産化することが重要ですね。
まとめ
まず、読んで最初に感じたことは、企業やプレスリリースとして展開している市場調査系の内容をここまでコンテンツ化出来る凄さでした。書籍を執筆する前提でアンケートを取られたのか、アンケートの調査を経て書籍を出版されようと思ったのか、おそらく前者だと思いますが、それにしても今井さんの調査データから得る学びは非常に勉強になります。
また、本書を通じて一番感じたことが、
「部門の垣根を超えてお客様と向き合うこと」です。
THE MODELに代表される組織体制だと、少なからず情報やコミュニケーションの分断化が生じてしまい、最適な情報提供やお客様のニーズを汲み取れなくなるケースが珍しくありません。
このように、日々の業務をお客様を中心に考える頻度を高め、部門全体で取り組むことが企業の成長につながると感じました。
そして、忘れてはいけないシンプルな本質が、「人の役に立つこと」。
されたい営業は、部門や仕事という枠を超えていきてくると思います。
このような取り組みを行うことで、「されたい営業」に近づけるようにこの学びを今後に活かしていければと考えてます。
以上、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。