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学芸デザインミーティングGDM #5 「本のつくりかた」

日程:23.10.21土 14:00-17:00
テーマ:本のつくりかた
参加者:17名(うち4名は小学生)

GDMとして5回目のワークショップ。テーマは「本のつくりかた」。前回に続き「製本を学びたい」という生徒のリクエストを受けるかたちで企画。私自身、製本についての知識が乏しいため、浜松で村上製本という製本所を営む友人の村上亜沙美氏にアドバイスを受けてプログラムをつくった。参加者は17名。

14:00〜14:05 イントロダクション
14:05〜14:25 レクチャー:本のデザインとは
実際の本(阿部の私物)をみながら、「中綴じ」「無線綴じ」「上製本」などの基本的な綴じかたや、本のつくりや部位の名前を学ぶ。

14:25〜14:50 課題①:図書室の本を解剖する | リサーチ編
14:50〜15:20 プレゼンテーション
3人ひと組のグループワーク。図書室から「おもしろいつくりの本」を3〜5冊ピックアップし、それぞれの本の仕様から編集者/デザイナーが何故それらを選択したかを推理し、発表する。結果的に、多くの生徒が「全集」などの古い本をピックアップしてきて、それらの重厚なつくり(手触りのいい布やレザーを用いた表紙や、箔押しのタイトルなど)を皆で観察した。本の永続性について考える機会にもなった。

15:20〜15:30 休憩

15:30〜16:30 課題②:ノートブックを製本する | 実践編
「三つ目中綴じ」という製本方法を用いてノートブックをつくる実践課題。ひとまず手順を確認しながら全員いっしょに1冊をつくりあげる。その後、時間と素材が許す限り自由制作。

16:30〜16:35 まとめ、次回予告
16:35〜17:00 アフタートーク *自由参加

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#5 を振り返って
今回の課題は前回とうってかわって「手」によるものづくりに重点を置いた課題。ただし、ただの工作の体験に終わらないように、プログラムにリサーチのパートを組み入れた。普段は何気なく見ていた図書室にある本を手に取り、いつもとは異なる視点で観察する。その行為は、いままでGDMで繰り返してきた、既にあるものを観察することでデザインを発見する、という試みである。そこには、デザインは自分のすぐ隣にあり、そのなかにはデザイナーをはじめとしたさまざまなつくり手が関わっている、という事実に、なんとなくでも意識が向くようになれば、という意図を込めている。また、今回は図書室で実施することにより、多くの生徒が普段はなかなか読もうとは思わないジャンルの本にたどり着いた(多くの生徒が古い書籍に手を伸ばしたように)。デザインとは一見関係なく見えるかもしれないが、デザインを学ぶことで新しい世界に触れる機会はとても重要で、その機会をつくれたこともひとつの成果だと考える。
実践編では、生徒それぞれが素材に向き合って夢中で製本に取り組んでいた。そこに言葉は必要なく、「手」の経験がなによりも重要になる。その経験を生み出すうえで、だいたい15〜20分程度で完成させることができる「三つ目中綴じ」という製本方法は、ちょうどよい難易度だった。また、シンプルな製本方法のため、複数の色の糸を使ってみたり、本のプロポーションをかえたりなど、工夫も加えやすい。経験する前は、なんとなく専門的なものとして遠くにあった製本の世界が、たった1冊の本を綴じることによって、ぐっと近い世界となる。“自分も「本」をつくれる”。製本作業の過程で、そんなささやかな興奮を生徒たちに見ることができた。

企画協力:村上製本
*写真・文章は許諾を受けて掲載しています*

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