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令和日本紀行 -15: 出雲国の旅

今まで訪れた日本国内の地域の地理・歴史について、記録しています。今回は、ついに、念願の出雲国(現島根県東部)を書くことができました!

私は、出雲国といえば、3人の女性を思い浮かべる。
まずは、出雲の阿国。
安土桃山時代から江戸時代にあけて、かぶき踊りを創始した。これが変遷し、歌舞伎とチンドン屋になったと言われている。
阿国は、出雲国杵築中村の里に生まれたとされ、杵築大社(現出雲大社)の近くに墓がある。

次は、女流五冠の福間香奈。
「出雲のイナズマ」と恐れられた鋭い寄せは、並の男性棋士をはるかに凌駕し、2022年のプロ入り編入試験では敗退したものの、藤井聡太七冠とともに、将棋界を支える1人だ。

福間香奈女流王位が加藤桃子女流四段に快勝(東京新聞社)

3人目は、衆議院議員の亀井亜紀子。
今年4月28日の島根一区の補欠選挙において当選。先週の全国社会保険労務士会連合会の総会後懇親会でお見かけしたが、ご挨拶できなかった。

さて、出雲国は、古事記(712年)や日本書紀(720年)に記されていて、常に「いづも」と読まれていたらしい。
島根県立古代出雲歴史博物館においては、天平5年(733年)に編纂された「出雲国風土記」が、現存する各国風土記の中で唯一ほぼ完本の状態であることを強調している。他国の風土記は、都から派遣された国司が作成を指揮したのに比べて、地元の名士の出雲国造に任せた史実から、朝廷が出雲国に敬意を払っていたことを示したいのであろう。

さて、「出雲国風土記」では、国引き神話が有名だ。当初の国の面積が小さいことを憂いた八束水臣津野命が、高志(現在の北陸地方、能登半島あたり?)や他の地域から、怪力で陸地を引き寄せ、現在の奇怪な形状の島根半島を作ったとのこと。

島根県立古代出雲歴史博物館におけるプロジェクション展示

考古学的には、弥生時代において、大陸との交流を通じた、青銅器と鉄器を用いた一代勢力が存在し、日本海を中心とした強大な国家を形成したと考えられる。
スサノオの八岐大蛇退治やその娘婿とされるオオクニヌシの神話が古事記等に記載されているのは、藤原不比等達が出雲国を重視していた現れであろう。

2000〜2001年、出雲大社の境内から発見された3本1組となったスギの大木が発見された。鎌倉時代に建てられた巨大な神殿を支えた柱の一部と考えられる。

出雲大社境内遺跡出土の宇豆柱
島根県立古代出雲歴史博物館における出雲大社の復元模型

歴史博物館でたっぷり予習した後は、800メートル程の距離にある出雲大社への参拝だ。
伊勢神宮の内宮とは少し赴きが違うが、皇統を意識した建造物が多い。

出雲大社

中世の山陰地方は、大内氏、尼子氏、毛利氏、そして織田氏の覇権争いの場となった。関ヶ原の戦で戦功のあった堀尾忠氏と父の堀尾吉晴が、この地に入り、城を建てた付近を「松江」と名付けた。

松江城の天守は、1935年に旧国宝(現行法の重要文化財)に指定されたが、第二次世界大戦後は、
姫路城や松本城に知名度で劣っていたと思われる。
2015年、天守が国宝に指定(63年ぶり5件目)されたことは、さぞかし島根県民の面目躍如となったことだろう。

松江城天守の最上階に展示されている国宝指定書

松江城を囲む武家屋敷のある通りを塩見縄手と呼ぶが、明治時代にここに移り住んだ外国人がいた。
名はラフカディア・ハーン。
ギリシア人の母とアイルランド人の父を持つ男は、卓越した文才を持ち、イギリス、アメリカ、カリブ海などを点々としながら、多様な文化、未知なる土地への興味を持ち続けた。
彼は、英国人の言語学者チェンバレンが1882年に発表した英訳版の「古事記」を読み、日本への関心を高めた。紆余曲折の後、1890年に横浜の地を踏み、最初に居を構えたのが松江であった。

身の回りの世話をしてくれた小泉セツは、没落士族の娘で最初の夫に出奔されるなど気の毒な前半生をたどっていたが、特殊な才能があった。土地に伝わる物語を聞かせる表現力である。
程なく、ハーンはセツと結ばれることとなり、誕生した息子の将来を考えて、日本人に帰化した。
小泉八雲の誕生である。

「知られぬ日本の面影」は、日本の文化を世界に発信したが、八雲の真骨頂は、妻のセツに口述させた日本の昔話や怪談を英語で表現したことだ。

小泉八雲の肖像

実は、私が、松江市を訪れたのは3回目。1回目は、大田市で開催された全国高等学校総合体育大会(インターハイ)に出場して敗退後に、「小泉八雲旧居」を訪問した。近くの鰻屋で、弓道部顧問の先生が私達に鰻重を食べさせてくれたことが懐かしい。
2回目は、大学院の学生の時だったので、今回は約40年ぶりの出雲訪問になる。

出雲国は、八雲たなびく地。
私だけではなく、日本を愛する全ての人々の心の故郷と言えよう。

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