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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(1)

個展を開催して頂けるというお話になったのは2023年の夏の終わりだったと思います。その頃の僕は錯乱していました。このまま今までの作品の延長線上で制作を続けることに懐疑的であったこと、生活を支えてきたクライアントワークを辞めたことなど様々な問題を抱えきれずにジタバタしていたのです。

†New Dawn Fades

そこに個展開催のお話を頂いて、僕はそれに飛びつきました。とにかく何か行動することに逃げたのだと思います。それは今までの作品の延長線上で制作を続けるのかという問題に一定の答えを得るに至り、その一面では成果をあげたと思います。ですがそれは新たな問題を生み出しました。今回の個展はその”新たな問題”そのものが主題になっています。

主題と便宜上書きましたが、実際のところ剥き出しの問題意識と、底なしの不安を横軸に用いた、極めて個人的(普遍性の獲得に対する配慮については最小限にとどめたという意味で)な作品群の展示になりました。

”新たな問題”


†Secret Messages


(デジタルカメラで撮られた)写真は絵画とは異なり「実物」はデジタル領域にあります。美術館やギャラリーで優れた絵画を見て「実物はよかった」という感想を持った経験は幾度もありました。この場合「実物」は「本物(オリジナル)」という意味も含みますが、Webなどで見た「作品画像に比べて」という前提で生まれた感想です。

ところが写真において「実物(=オリジナル)」は、デジタル領域のデータの形で存在します。プリントはそこからの派生物なのです。少々乱暴にまとめてしまえば、絵画や彫刻など「実物」と「複製(派生物)」の関係が逆転しているという写真の特徴があるのです。

このことは以前から自明のことして、プリントデータに様々な工夫を凝らしてきました。ですが、あくまでもオリジナルはデータです。実現が難しいことは重々承知の上で、カラーマネジメントに配慮した鑑賞環境(つまり作者が制作している環境に近い状態)で見て頂きたいと願ってしまいます。これが理想に対する問題です。

習作(作品にならなかった写真)

そして問題というより、現実の状況として写真を鑑賞する機会はモバイルデバイスも含めて、圧倒的にディスプレイであることが多くなり、機器の性能、規格の向上とともに「これでOK」と判断をくだす際に多くの取捨選択が必要になりました。つまりカラーマネジメントに配慮されていない環境でも「伝わる仕上げ」という新たな課題が生まれました。

みなさんのデバイスではどう見えているのだろう?

全作品をHPに公開しておりますので、プリント/オリジナルデータを、お手持ちのデバイスでの見え方と比較していただけるよう、本展では制作に使用しているモニタを設置、プリント展示のない作品も含めて、作家在廊時には制作データを制作環境に近い形でご覧頂けるよう準備を進めております。
是非この機会に作者の制作環境で生の作品を鑑賞して頂けたら嬉しく思います。

丹野 徹 個展『New Dawn Fedes』
会期:3月22日〜4月2日 11:00-19:00 ※土・日・祝日・最終日は17:00まで
場所:靖山画廊(東銀座)

作家在廊(予定)3月22日 ,23日 ,24日 他


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