見出し画像

エンドユーザー7億人「デジタル白地図」のつくり方

新型コロナが5類感染症に移行し、2023年4月29日から入国時の「ワクチン証明書」等の提示が不要になったことで「人の移動」が再び活発になりつつあります。

円安ドル高基調も味方して、「安い日本」を目指すインバウンド需要がコロナ前水準に近づきつつあるという報道もあります。

そうした時代背景も加味したうえで、いま私が温めている仮説は「移動の価値が上昇する時代に突入する」というもの。

人が動き出す時代に「移動の価値」を考える

アフターコロナという文脈だけでなく、"生成AIの進化"という要素も踏まえた仮説です。こちらの記事で取り上げた「『手と目』の時代から『耳と口』の時代へ」という変化が本格化するのはもう少し先かもしれません。

しかしながら「リベンジ消費」という言葉を耳にする機会が増えていることからもわかるように、失ったものを取り戻すかのような「移動を伴う消費」は当然のように復活し始めています。

もう1点忘れてはならないのが、「一人旅」やキャンプや登山といった「アウトドア」に注目が集まるなど、コロナ禍を機に高まりつつある、これまでとは少し違うニーズです。たとえば、「一人旅」の場合、観光スポットでの周遊だけでなく、旅行計画を立てて現地を目指すことも「体験価値」の1つです。登山の場合も、「登山口」から「山頂」を目指す過程に大きな価値があります。

なぜ、「地図」は1つでは足りないのか

すでに、そうした動きに対応したサービス・コンテンツは、コロナ禍前から存在していますし、これからも増えていくでしょう。たとえば、マップボックスの技術が採用されているSUBARUオーナーのためのドライブアプリ「SUBAROAD」は、まさに「移動」の楽しさを追求したアプリとなっています。

また、「地球とつながるよろこび。」をパーパスに掲げるヤマップさんが提供している「YAMAP」は、「登山」に特化した「地図」サービスです。
さらには、移動を価値に変える「ポイ活」、移動することでゲームを楽しむ「位置情報ゲーム」なども、移動の体験価値を向上させるコンテンツといえるのではないでしょうか。

ここでご紹介したサービス・コンテンツに採用されている「地図」は一様ではありません。

同じ位置情報ゲームであっても、『ポケモンGO』と『信長の野望 出陣』の「地図」はまったく違います。それはなぜかといえば、それぞれのコンテンツの開発者が、ユーザーの求める世界観・使いやすさ等を考慮したうえで、最適な「地図」を創り上げているからです。

そして、そうした開発者の方々が、自由に地図をつくることができるような、いわば「デジタル白地図」をつくっているのが、私たちマップボックス・ジャパンの仕事になります。

私たちが目指している「デジタル白地図」のイメージはこんな感じです。

写真が写し出すような「現実世界」(左側)をそのまま地図にするわけではありません。「3D白地図」(真ん中)として、開発者の方々が、それぞれの「コンテンツ」(右側)の用途に応じて加工しやすいように、あえてデフォルメしたり、建物や道に特化したり、不要なデータを削って軽くしたりしています。

約150社、2000ソースのデータを活用し、毎日更新し続ける

ここからは、デジタル地図開発プラットフォームである「マップボックス」の"地図づくり"をご紹介したいと思います。本noteは長く続けていますが、意外にも"地図づくり"をテーマにするのは初めてです。

最初にお伝えしたいことは、当社の地図のベースとなっているのは、ゼンリンさんをはじめとする多くのパートナーのみなさまの「地図」です。約150社、2000のソースがあるからこそ、私たちは多くのクライアント企業、開発者の方々が使いやすい「地図」を提供できます。この場をお借りして、あらためて御礼をお伝えできればと思います。

では、私たちはその膨大な情報をどのように活用し、地図をつくっているのか。さまざまな地図を集めたあとに、まず行なうのは、マシンラーニングを活用した重複・ダブり・漏れの排除などを行なう「コンフレーション」という作業になります。その後、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)やSDK(ソフトウェア・デベロップメント・キット)を活用する形で、一度、ユーザーの方々の手元に届きます。その数はおおよそ7億人。

しかし、そこで完結しないのが、地図づくりの難しさであり、ユニークさでもあります。下記にあるような、Telemetry情報、衛星写真の情報、車からの情報など活用して、1日70万回程度更新する作業を毎日行なっています。

Telemetry情報には、これまでデータのなかった道・標識情報、車線の情報、混雑状況の情報、POI(Point of Interest)情報、店舗の営業時間なども含まれます。

「なぜ樹木はデフォルメされる?」マップボックス地図のつくり方

デジタル地図については、さまざまな作成方法がありますが、私たちマップボックスが目指しているのは「白地図」です。

繰り返しになりますが、クライアント企業の開発者、あるいは個人の地図サービス開発者が加工しやすい地図をつくることが、デジタル地図開発プラットホームを標榜している私たちの使命だからです。

そのため、いくつもの「こだわり」をもって「白地図」を作成しているのですが、そのこだわりの1つは「データの軽さ・扱いやすさ」です。

たとえば、公園などの樹木を「写真」のようには描いていません。画像にあるように、針葉樹か落葉樹かがわかる程度にデフォルメしてデータ化しています。樹木だけでなく、建物なども過度に写実化すると、データが重くなって扱いづらくなってしまうからです。

また、下の画像にあるように、マップボックスの地図では「デザイン」の情報と、「形」とを分離して保有しているため、柱、窓、屋根といった属性ごとに色を分けたり、強調したりすることもできます。

また、そもそも「写真のように描いた地図=使いやすい」わけではないことにも注意が必要です。たとえば、航空写真を見て、行きたい場所に行けと言われると戸惑ってしまう人が多いのではないでしょうか。

つまり、すべての情報を写真と同じように詳細に描くとかえってわかりづらくなってしまうため、たとえば、開発者の方が、ユーザーが目的地にたどりつくために必要な建物、目印となるランドマークだけを目立たせられるような仕様にしているのです。

こだわりポイントを一挙紹介

ここからは、マップボックスジャパンCEOである私が独断と偏見で選ぶこだわりポイント3つご紹介したいと思います。

1つ目は、「3D」へのこだわり。

衛星情報を活用することで、建物の「形」だけでなく、「高さ」を含めたモデリングをしているため、画像のように、太陽の位置に対応した「影」を加えることができます。

2つ目は、「川のきらめき」

ゲーム好きの方であれば、見慣れた光景かもしれませんが、太陽の日差しを受け、水面がきらきらしているような描写も可能です。

3つ目は、「空の表現」

没入感を高める効果もあり、画像のように晴れ・曇り・雨といった描写も可能です。

以上、「デジタル白地図」のつくり方でした。

自社独自の顧客体験を「地図」を使って強化したいというご要望がありましたら、お気軽にお声がけください。

最後に、マップボックスの技術が採用されているサービス・コンテンツのツイートをご紹介して終わりにしたいと思います。活用事例集もご用意していますので、ご活用ください。

Twitterでも最新情報を発信中

マップボックス・ジャパンHP