Zoomオンライン革命とは何か
トオラスの歴史を知っていただくため、
トオラスの共同創設者である田原真人の2018年ごろの文章をご紹介しています。
前回はこちら→「違いが生まれ続ける開かれた空間」
https://note.com/torus2020/n/n07b41c5c24eb
田原真人は、2015年からZoomというオンライン会議ツールに注目し、
2017年には「Zoomオンライン革命」という著書を出版しました。
2020年には、新型コロナウィルスの感染拡大により、
Web会議が急速に注目を集め、
今やZoomを知らない人はいないというほど一般的になりましたが、
当時はまだ誰も知らなかったZoomによって革命が起きる、と
田原をはじめとした当時のメンバーは信じていました。
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「Zoomオンライン革命とは何か」
ノーバート・ウィーナーという名前を聞いたことがありますか?
ウィーナーは、サイバネティクスというものを提唱した人として知られています。
彼は、動物の体が、どのように情報を利用しているのかについて考察しました。
例えば、机の上にある消しゴムを右手で取るという動作は、
目から入ってくる情報を脳が受け取り、
右手の筋肉に動作についての情報を送り、
さらに、右手の動きについての情報を目から受け取り、
脳がうまいこと調整して右手が消しゴムへ到達するのです。
右手を動かしてみた結果を受け取って、
動かし方を調整していくような制御
つまり、出力を元に入力を調整していく制御を
フィードバック制御といいます。
ウィーナーは、動物の体がフィードバック制御によって成り立っているシステムだと考え、
それを元に、そのようなシステムを制御する理論体系であるサイバネティクスを
考えたのです。
ウィーナーは、サイバネティクスの考えを、
人間の組織や社会へと拡張しました。
蟻の社会は、
遺伝子によって定められた本能によって行動パターンが固定されています。
固定された行動パターンの協働により、群れに複雑な振る舞いが生まれます。
ウィーナーは、蟻の社会と人間の社会との違いは何だろうかと考えました。
そして、知性を持つ人間は、単純な行動パターンに固定されるのではなく、
学習によって柔軟に行動を変化させることができるところが
本質的な違いなのだと考えました。
人間の集団は、コミュニケーションによって、
それぞれが、柔軟に行動パターンを変化させながら、
集団全体として安定な状態を保つことができ、
それこそが、人間の社会の在り方だと考えたのです。
ウィーナーは、その視点から、
全体主義による暴走を激しく非難しました。
抑圧的な教育によって、人間の学習回路の柔軟性を失わせて、
人間の行動を単純化していくことは、
人間を蟻の地位に貶める行為だと考えたのです。
私は、ウィーナーが考えたのと同じように、
コミュニケーションと学習の柔軟性が社会構造を決めていると考えています。
外から入ってくる刺激に対して、
多様な意味づけを内側ですることができ、
自由に行動を選択することができることが、
人間らしく生きる上で大切なことだと思っています。
しかし、閉鎖的な空間で、特定の人たちとばかり話していると、
思考回路が固定化していきます。
人間らしく生きるためには、
非平衡(参加者の持っている情報、強み、考え方などが均質じゃない)
開放系(コミュニティに人や情報の出入りがある)
の環境が大切なのです。
その中で、私たちは、柔軟性を取り戻し、人間らしさを取り戻していきます。
そして、人間らしい組織や、社会を作っていくのだと思います。
私が、Zoomを使って実現したいのは、非平衡開放系の環境を作り、
人間らしさを取り戻していくことです。
Zoomを使うと、本当に多様な人たちと、日々、対話する環境を作れます。
そのような対話の中で、自分の頭や心がほぐれていき、
創造性が取り戻されてきます。
創造性を取り戻した人たちが、
つながり合って共同創造の世界を作っていくと、
社会の構造が変化していくはずです。
私は、それを「Zoom革命」と呼んでいます。
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いかがでしたか?
確かに、オンライン会議の普及は、私たちの生活に大きな影響を与えました。
とはいえ、Zoomを使って対話をするだけで、本当に革命が起きるのでしょうか?
そもそも「対話」とはなんでしょう?
次回は、「対話がもつ力とは何か?」についてお伝えします。
https://note.com/torus2020/n/n11bd3548385b
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