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学習者中心主義というパラダイムシフト

前回は「対話が持つ力とは何か?」をお届けしました。
https://note.com/torus2020/n/n11bd3548385b

トオラスの共同創設者である田原真人は、
自らが予備校講師として詰め込み教育の現場に立っていた経験を経て、
社会で注目されはじめた「学習者中心主義」という考え方に非常にこだわっていました。

トオラスで生まれた様々な講座や組織作りには、
その考え方が広く根付いていたし、
現在トオラスに関わっている人たちも、その考え方を常に意識しています。

田原真人の2018年の文章をお届けします。


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「学習者中心主義というパラダイムシフト」


子どもをイメージするとき、どちらの立場に立つかで教育の考え方が変わります。

1)子どもは空っぽの容器である。
2)子どもは水から発芽する力を持つ種である。
 
20世紀の文明を作った産業化教育では、
子どもは、1)の立場でイメージされています。
 
『被抑圧者の教育学』を書いたパウロ・フレイレは、

1)の立場の教育を、銀行にお金を預けるように、
頭に知識を詰め込んでいく教育だと批判し、
「銀行型教育」と呼びました。
 
また、2)の立場の教育に必要なものが対話だと考え、
「対話型教育」を推奨しました。
 
組織を機械のようにイメージして、
人間を機械の歯車のようにイメージすると、
子どもを空っぽの容器だとイメージして、
そこに必要な知識や技術を流し込んで歯車を大量生産するというやり方が
ピッタリ来ます。
 
産業革命以降、機械的な組織が世界中に広がり、
そこで働くための労働者を学校で育成してきました。
 
産業化教育には、次のような3つの隠れたカリキュラムがありました。
1)服従
2)時間厳守
3)単純な反復作業に耐える
 
僕達が、炎天下で運動会の練習のために行進をさせられたり、
学校でチャイムを守って、時間内に席に着くことが厳しく言われたり、
ドリルで反復練習をしたり、
 
今でも、それは、続いていたりします。
 
子どものころから、その中にいるので、私たちにとって、
あまりに当たり前になっていて、それが気づかないほどです。
 
しかし、世界がインターネットによって繋がりあうようになり、
社会が、機械というよりは、生態系のようになってくると、
組織も生命体としての動きが求められるようになってきました。
 
今までは、大量生産ロボットを作り出す教育だったのに、
急に、生き物が育つ教育への転換を求められ、
現場の先生も、親も、大混乱しています。
 
私たち自身が、ロボットになるように育てられてきたので、
自分のいのちのはたらきを感じにくくなっているのです。
 
感情を感じないようにして、
身体のリズムを無視して、
決められた時間に、決められた作業を行うことを、
ちゃんとした大人になることだと言われてきたら、
自分の感情や、身体のリズムは、分からなくなってしまいます。
 
ゆったりとしたスペースを取って、
自分の感情を感じてみる。
 
そして、感情の奥にある自分の願いに
耳を傾けてみる。
 
その願いをエネルギー源にして動いてみる。
 
それを繰り返していくうちに、
自分が生き物として動いているし、
自分で育っていけることに気づいてきます。
 
その感覚を大事にしながら、
子どもに向かい合ったときに始めて、
すべての子どもにも、自分と同じようなエネルギー源があり、
そのエネルギー源から動いていけば、自分で育っていけるのだと
信じられるようになります。
 
その信頼を土台にして、学びを考えるのが、
学習者中心主義だと、僕は思います。
 
Zoomに集まった人を空っぽな容器だと見なして、
一方的に知識やスキルを詰め込もうとすると、
リアルの場に比べて強制力が働かないのでうまくいきません。
しかし、Zoomに集まった人たちは、すべて生き物であり、
自分と同じエネルギー源を身体の中に持っていて、
そこに働きかければ、自分から動き出して、自己実現していくのだと、
深い信頼から関わっていくと、学びの渦が回りはじめます。
 
どちらの在り方から関わっていくか?
Zoomを使った学びでは、
その違いが、リアルよりもはっきりとした形で現れてきます。
 

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いかがでしたか?

現在トオラスに関わっているメンバーは、
Zoomをはじめとしたオンラインが最適解だとは考えていませんが、
とはいえ、トオラスのメンバーは世界各国に散らばっているので、
現実的に、オンラインに頼らざるを得ません。


しかし、私たちが何よりも大切にしているのは、
私たちが「生き物である」ということ。
今までの「産業成長型社会」から、「生命持続型社会」への移行(ジョアンナ・メイシー「アクティブ・ホープ」より)を促進すべきだし、
そうなるに違いないという信念が、私たちの活動のベースにあります。

次回は、「動画によって可能になるマイペースの学び」についてお伝えします。
https://note.com/torus2020/n/n8308e53093ae

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