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DX再考 #8 プラットフォーム・ビジネス(その4)

シェアリング・エコノミーとプラットフォーム

 前回の定義に従えば、シェアリング・エコノミーはプラットフォーム・ビジネスでもある。
 たとえば、Uberのようなライドシェアは、自家用車で旅客運送をしようというドライバーと手早く(できるだけ安価に)移動したいという利用者とをマッチングするプラットフォームになっている。

出典:筆者作成

 AirBNBのような宿泊仲介サービスの場合には、宿泊施設や空き部屋を持つ企業や個人と、宿泊場所を探している利用者をマッチングするプラットフォームである。

出典:筆者作成

シェアリング・エコノミーに含まれるものは何か

 シェアリング・エコノミーは、デジタル技術の利用拡大がもたらした変化の一つであるが、シェアリング・エコノミーが何を指すのかを明確にしておく必要がある。
 というのは、単純に資産をシェア(共有)することと定義すると、従来からあるレンタカーや賃貸住宅のようなレンタル・リースのビジネスも含まれることになるし、逆に個人の遊休資産をシェア(共有)することだと定義すると、シェアリングの対象となる資産を企業が保有しているカーシェアリングやシェアサイクルはシェアリング・エコノミーに含まれないことになる。
 というわけで、シェアリング・エコノミーの定義については、

  1. 財・サービスの提供者を個人に限定するか、企業等も含めるか

  2. 無形のもの(スキル/労働や時間など)を含めるか

  3. ネット上のプラットフォームを利用しないもの(レンタカーのような従来のレンタルやリース)を含めるか

  4. 売買(所有権の移転)を含めるかどうか

  5. 情報財(ソフトウェア、音楽、動画等)のサブスクリプションを含めるか

の5点を明確にしておく必要がある。

いくつかの定義

 まず、既存の定義をいくつか見てみよう。

(1) 一般社団法人シェアリングエコノミー協会の定義
  一般社団法人シェアリングエコノミー協会のWebサイトでは「インターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(賃借や売買や提供)をしていく新しい経済の動き」だと説明しており、シェアリングエコノミー活用ハンドブックでは「個人・組織・団体等が保有する何らかの有形・無形の資源(モノ、場所、技能、資金など)を売買、貸し出し、利用者と共有(シェア)する経済モデル」だと定義している。

(2) 情報通信白書における定義
 総務省の「情報通信白書」は年によって多少表現が異なる。平成27年版では「典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービス」と説明しており、平成28年版では「個人が保有する遊休資産をインターネットを介して他者も利用できるサービス」、平成29年版では「個人等が保有する活用可能な資産等を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と定義している。

(3) 消費者白書における定義
 消費者庁の「平成29年版消費者白書」は「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と定義している。ちなみに、デジタル庁におけるシェアリング・エコノミーの定義もこの消費者庁の定義とほぼ同じである。

シェアリング・エコノミーの定義

 政府及び一般社団法人シェアリングエコノミー協会の定義では、1と2は含まれるが、3については含まれない。したがって、財・サービスの提供者には個人だけでなく企業等も含め、提供するものには無形のもの(スキル/労働や時間など)も含めるが、ネット上のプラットフォームを利用しないもの(従来のレンタルやリース)は含めないという定義でよいと思われる。

 4の「売買や譲渡を含めるか否か」については、シェアリングエコノミー協会の定義では含まれているが、政府の定義では含まれていない。

 5の「情報財(ソフトウェア、音楽、動画等)のサブスクリプションを含めるかどうか」については、さらに判断が難しい。
 サブスクリプションを「商品やサービスを所有・購入して利用するのではなく、一定期間利用できる権利に対して料金を支払って利用する方法あるいはビジネスモデル」だと考えると、マッチングプラットフォームを利用していれば、シェアリングエコノミーに含まれることになるが、マッチングプラットフォームを利用していないものは含まれないことになる。
 Netflixなどの動画配信サービスやSpotifyなどの音楽配信サービス、dマガジンやKindle Unlimitedなどの書籍・雑誌の読み放題サービスは、マッチングプラットフォームを利用しているので含まれるが、Adobe Creative CloudやOffice 365のSaaS(Software as a Service)、Google App EngineやKintoneのようなPaaS(Platform as a Service)、AWSのようなIaaS(Infrastructure as a Service)はプラットフォームを利用していると言えるかどうかが問題になる。

 ここでは、シェアリング・エコノミーの定義を「個人や企業等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む)をインターネット上のプラットフォームを介して、共有、貸出等(譲渡、売買は含まない)によって他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」としたい。
 つまり、UberやAirBNBはもちろん、Lancers、CrowdWorks、Uber Eatsのようなギグエコノミーも、企業が展開しているカーシェアリング、バイクシェア(シェアサイクル)やモバイルバッテリーシェアリングも、音楽や書籍、映画などの情報財のサブスクリプションサービスも含まれるが、レンタカーのような従来型のレンタル/リース・ビジネスやメルカリのような中古品売買は含まないことになる。

いくつかの事例

 シェアリングされる対象は、移動手段、場所、モノ、人・スキル、情報財(コンテンツやソフトウェア)に分類できるが、情報財については「サブスクリプション」の節で取り上げることにする。
 以下の表は、代表的な企業をまとめたものである。

出典:筆者作成


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