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NCニュースの読み方 #22 「GoogleによるWritelyの買収は何を意味するのか」 (2006年3月13日)

 2006年3月9日、Googleはウェブベースのワープロ「Writely」を開発しているUpstartleを買収したことを明らかにした。

 WritelyはInternet ExplorerやFireFoxなどのブラウザ上でワープロ文書を作成、共有できるサービスで、昨年の8月に公開されてからまだ半年あまりだが、口コミでインターネット利用者に広がり、ベータテスト中にもかかわらず、既に多くの利用者がいる。

 Writelyは、ちょうどワープロソフトで文書を作成、修正するような作業がブラウザ上でできるサービスである。MS WordやOpenOffice で作成したファイルの他、RTF、HTML、テキスト形式のファイルのアップロード(読込み)、ダウンロード(書出し)ができる。

 従来のワープロソフトと異なる点は、インターネットに接続されているパソコンがあれば、どこからでも文書作成作業を行うことができる点と、インターネットを介してその文書を仲間と共有できることにある。共有したい仲間のメールアドレスを入力すれば、文書へのリンク付きのメールが配信され、文書を共有できる。共同で文書を作成、編集することもできるし、閲覧だけを許可するという設定も可能だ。

 WritelyはAjax技術を用いて作られており、見た目や操作性は普及しているワープロソフトと変わるところは少なく、利用者からの評判はすこぶるよい。

 この買収を最も脅威に感じているのは、おそらくマイクロソフトだろう。昨年の秋、Googleとサン・マイクロシステムズが提携するというニュースが流れた時、マイクロソフト嫌いの人たちはウェブベースのGoogle Officeの開発計画の発表を期待した。しかし、10月4日に両社から発表されたのは「Java.com」で配布されているJRE(Java Runtime Environment)のオプションに「Google Toolbar」を追加するということだけで、期待を募らせていた人たちは大きなため息をついた。しかし、今回の買収は明らかにGoogle Officeへの第一歩である。人々は、Googleに蓄積された技術力、トップクラスの研究者の頭脳、豊富な資金によるWritelyの機能強化と本格的なサービスを期待している。すでにウェブベースの表計算ソフトを開発している企業もGoogleに買収されるのではないかとの噂まで流れている。

 Googleが提供しているGmailの利用可能容量はベータテストを開始した2004年4月時点では1GBであったが、現在では2.5GBにまで拡張されている。同じように、Writelyも世界中のインターネット利用者に十分な容量と機能を提供されるようになるのだろう。Googleは、「こちら側の世界(パソコン)」にあるデータやアプリケーションをすべて「あちら側の世界(サーバー)」に移そうとしているように見える。

 GoogleがWritelyによって、どのようなビジネスモデルを考えているのかは明らかではない。もしかすると作成されている文書のコンテクストを分析して、それに合った広告を提供するという戦略かもしれない。そうなると、プライバシの侵害だという批判もでてくるだろうが、Gmailの時と同じように、Writelyの利用者は拡大し、ソフトウェアのパッケージ・ビジネスを脅かす存在になるだろう。もちろん、世界に4億人以上いると言われているOffice製品の利用者が決める未来ではあるが、今回のGoogleによるWritelyの買収によってソフトウェアのサービス化という流れはより鮮明になったような気がする。

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