見出し画像

BCN 視点 #52 「AWSの一人勝ちは本当か」 (2014年8月28日)

 米アマゾン・ドット・コムが7月24日に発表した2014年4~6月期の決算は、市場の予想以上の赤字決算となった。売上高は前年同期比23%アップの193億ドルだったが、純損失は1億2600万ドル(前年同期の純損失は700万ドル)を計上している。この赤字拡大の背景には、配送センターの増設や生鮮食品の配達地域の拡大などのアマゾンの積極的な拡大戦略があるのだが、それ以外の要素として、アマゾンのクラウドサービスであるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の料金値下げによる収益悪化が指摘されている。

 これまでAWSはアマゾンの成長エンジンの一つとみなされてきた。しかし、4~6月期の決算をみると、このAWSの売り上げを含む「その他事業」の売上高は、前年同期比37%増の12億1800万ドルであるものの、その伸び率は1~3月期の前年同期比58%増に比べて低くなっており、売上高そのものも1~3月期の12億5600万ドルよりも少ない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、アマゾンのトム・スクータックCFOも、AWSの料金引下げが4~6月期の業績に大きな影響を与えたことを認めている。

 アマゾンはAWSのサービス開始からすでに40回以上も料金を改訂しているが、今年4月の料金引下げはかなり大幅なものであった。この料金引下げの背景には、クラウド・ビジネスにおける競争激化がある。グーグルやマイクロソフトとの競争に加えて、資金が潤沢な大手通信事業者や大手ITベンダー、クラウド関連技術の革新を背景にしたスタートアップ企業がクラウド市場に参入してきており、とくに価格面での競争が激しくなっている。

 例えば、今年3月に、話題のベンチャー・キャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツから3720万ドルの出資を得たデジタル・オーシャンの場合、512MBのメモリ、20GBのSSDの仮想サーバーの料金は、1か月5ドル(1時間あたり0.7円程度)である。おまけに、デジタル・オーシャンの利用手続きや操作は非常に簡単で、わかりやすいコントロールパネルで必要な設定を行うと1分程度でサーバーが立ち上がる。

 米国のクラウド市場はAWSの一人勝ちになりつつあるという報道もあるが、こうした新興企業の動きをみると、まだしばらく激しい競争が続くと考えたほうがいいだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?