見出し画像

「ITと企業経営」シリーズ 第3回 ダウンサイジングとオープン化 (2010年12月) 生産性新聞

 企業におけるコンピュータ利用が、会計や給与計算のような計算を中心とする分野から、競争戦略に直結する情報処理分野へと拡大する一方で、コンピュータのダウンサイジングが進展した。情報処理におけるダウンサイジングとは、平易に言えば、大型汎用機をワークステーションやサーバーなどの小型で、コストパフォーマンスのよい機器に置き換え、コスト削減を図ることである。

 ダウンサイジングの動きは、1980年代後半から始まり2000年頃まで続いたと言われている。日本の大型機市場に限定すれば、かつて年間数千台の需要があったメインフレーム市場は2000年頃には数百台に減少し、近年は百数十台の規模にまで縮小している。その代わりに急増したのが、サーバーやワークステーションである。コンピュータの急激な価格低下が、利用企業や利用分野の拡大に拍車をかけたのである。

 ダウンサイジングは、同時に大型汎用機特有のプロプライエタリ なOSからUNIX系やWindows系のOSへの移行を意味し、これをオープンシステム化ということがある。Windows系のOSはマイクロソフトのプロプライエタリなOSであり、UNIXもベンダーによって仕様が異なる部分はあるが、大型汎用機のOSとは異なり、特定のハードウェアの上でしか動作しないということはない。

 つまりダウンサイジングに伴ってハードウェアやソフトウェアの選択肢が広がるという意味で、「オープンシステム化」と呼ばれている。オープンシステムはユーザーが様々なハードウェアやソフトウェアの中から最適と思われるものを選択し、組み合わせることができ、特定のベンダーに拘束される度合いは、大型汎用機に比べれば、はるかに低くなる。このため、市場への参入障壁も低くなり、市場では多くのハードウェア製品、ソフトウェア製品が競い合うことになる。

 実際、大型汎用機の時代の終盤には、そのメーカーは、指を折って数えられたが、サーバーやPC、データベース等を開発・提供している企業の数は、これと比較にならないほど多い。必然的に市場競争は激しくなり、価格は低下していくため、オープンシステムは大型汎用機のシステムに比べて、圧倒的にコストパフォーマンスが優れている。

 しかし、オープンシステムは、異なるルーツを持つ様々なマシンやソフトを組み合わせてシステムを構成するため、障害の原因の特定が困難であり、運用管理コストが高くなる可能性がある。したがって、ユーザーにとって、単純に大型汎用機で構築されたシステムよりオープンシステムのほうが好ましいとは限らない。特定のベンダーに拘束されると情報システムのTCO(総保有コスト) が高くなる可能性が高くなるという判断が、オープンシステムの選択につながっているのであって、仮にシステムの安定的な運用が優先され、システム障害時の対応も含めてTCOが低くなるような用途であれば、プロプライエタリなシステムのほうがよいという判断もあり得る。

第4回へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?