見出し画像

「ITと企業経営」シリーズ 第4回 インターネットの衝撃 (2011年1月) 生産性新聞

 ダウンサイジングの次にやってきた波がインターネットである。インターネットの歴史は1969年に運用が開始された米国防総省のARPANETに始まるが、商用利用が始まったのはそれから20年ほど経った1980年代の終盤であり、企業の情報システムに大きな影響をもたらすようになったのはさらに10年ほど後である。

 一つのきっかけはマルチメディアに対応したブラウザ「モザイク」の登場である。モザイクは、現在広く利用されているさまざまなブラウザの先祖とも言えるソフトウェアであり、イリノイ大学の国立スーパーコンピュータ応用研究所において、当時22歳だったマーク・アンドリーセンとその仲間によって開発され、1993年に公開されている。このブラウザの登場によって、インターネットは万人のためのメディアとなった。

 インターネットの利用者の拡大に合わせるように、多くの企業はインターネット上に企業ウェブサイトを開設していった。その多くは広報目的や情報提供目的のものであったが、一部の企業はウェブサイト上で求人や商品の販売を行った。例えば、パソコンメーカーのデルは1996年7月にインターネット経由での直販を始め、1997年12月には1日当たりの販売額が300万ドルに達している。また、ネット上でモノやサービスを販売する企業も現れた。1995年7月にネット上で書籍の販売を始めたアマゾン・ドットコムは、取扱商品を音楽CDやビデオ、玩具、家電商品などに拡大し、1999年の年間売上高は16億ドルに達している(ちなみに2009年のアマゾン・ドットコムの年間売上高は245億ドルである)。

 当初、ウェブは要求されたコンテンツを単純にクライアントに送り返し、ブラウザはそれを表示するだけであったが、ウェブサーバー側でユーザーが選択したプログラムを動作させる技術(CGI)の登場によって、動的に生成したコンテンツを表示させることができようになった。これによって、企業の情報システムのウェブアプリ化が始まった。たとえば、様々な外食チェーンを展開するニユートーキヨーは、1998年にサーバー側で動作するJava Servletを使って飲食材の受発注システム「セルベッサ」を開発している。やがて、Javaに加えて、PerlやPHP、Rubyといったスクリプト言語がウェブサーバーで利用されるようになり、「クライアント側に特別なソフトウェアをインストールする必要がない(標準的なブラウザがあればよい)」、「クライアント側の環境に左右されない(OSを問わない)」、「社内も社外も同様にサービス可能である」という特長から、企業の情報システムのウェブアプリ化が進んだ。

 特に、電子メール、スケジュール管理、ファイル共有、電子会議室などの企業内の組織横断的なコミュニケーションや情報共有を可能とするツールを統合したグループウェアは、インターネット技術の上に構築されるようになった。

 このように、インターネットは、この十数年で社会に浸透し、日常生活はもちろん企業活動にも欠くことのできない存在となった。

第5回へ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?