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DX再考 #16 自動化(その1)

DX時代の自動化

 DXによる変化の特徴の最後は「自動化」である。自動化とは技術を用いて労働や作業を代替することであり、言うまでもなく、DX以前から存在している。DX時代の自動化は、それ以前の自動化とは異なる特徴がある。
 以下の表にその違いをまとめてみたが、DX以前の自動化は、主に工場における単純な繰り返し作業の自動化であり、代替される労働の種類は肉体労働である。一方DX時代の自動化は、ルール化された繰り返し作業やフィードバックのある繰り返し作業であり、労働の種類も知的労働や知的労働を伴う肉体労働である。
 DX以前の自動化は主に製造業のブルーカラーの労働が対象であったが、DX時代の自動化は、製造業だけでなく農業、金融、サービス、流通、政府などのあらゆる産業におけるホワイトカラーの労働が対象となる。

出典:筆者作成

 たとえば、事務処理の自動化に用いられるRPA(Robotic Process Automation)ツールは、DX時代の自動化の典型例だろう。RPAは、事務処理を自動化するソフトウェア型ロボットであり、デジタルレイバー(Digital Labor)と呼ばれることもある。
 単純作業に近い事務処理や繰り返しの多い事務処理に活用され、書類関係の作業が比較的多い金融等の業種、総務・経理系の業務で採用が進んでいる。当然のことながら、人のようにケアレスミスをすることはないし、休みたい、辞めたいと不満を言うこともなく、働き続けてくれる。

画像認識による自動化

 ディープラーニングを用いた画像認識を活用した自動化も進んでいる。ここでは分野の異なる事例をいくつか取り上げる。

事例1:ベーカリースキャン
 
ベーカリースキャンは、さまざまな焼き立てパンを販売するパン屋で活躍している専用のPOSレジである。顧客がパンを乗せたトレイをレジ・カウンターに置くと、トレイ上のパンの値段と種類と数をカメラで一括識別するシステムである。1秒程度でレジ入力が終了し、顧客は表示された金額を自分で支払う仕組みになっている。
 顧客が支払いをしている間に店員はパンを袋詰めする。店員はお金を触ることがないので衛生的でもある。また、従来であれば、レジを担当する店員はパンの種類と価格を覚えるために一定期間の研修が必要であったが、このシステムを利用すれば、研修期間を短くできるというメリットもある。
 詳細は次のURLかYouTubeの動画を参照されたい。

○ベーカリースキャン

○ベーカリースキャンのYouTube動画


事例2:きゅうりの選別AI
 二つ目の事例は(6年ほど前にニュースになったのでご存知の方も少なくないのではないかと思うのだが)、静岡県のきゅうり農家の小池誠さんが発明したきゅうりの自動選別AIである。
 小池さんが栽培するきゅうりは、その長さや太さ、曲がり具合、色ツヤや病気の有無などによって9つの等級に分別されている。きゅうりを作り続けて30年の小池さんの母親は、分別作業に熟練しており、きゅうりを見た瞬間に等級を判断できるのだが、小池さんはそれができない。そこで小池さんは、画像認識AIを利用して分別作業を自動化しようと考えた。
 小池さんはかつて自動車部品メーカーのソフトウェア・エンジニアであったこともあり、Googleが公開しているOSSの「TensorFlow」を利用してきゅうりの識別ができるAIを開発した。教師データは、母親が分別したきゅうりを撮影した1万枚以上のきゅうりの画像である。
 この結果、カメラを備えた台にきゅうりを載せると瞬時に等級を表示できる自動選別装置が完成した。小池さん自身の工数を考えなければ、追加でかかった費用はWebカメラ等の3000円程度だという。
 きゅうりのAIを利用した選別システムもYouTube動画がある。


事例3:産業用廃棄物のAIを使った選別処理
 埼玉県にあるシタラ興産では、産業廃棄物仕分け作業にAIロボットを導入している。これもニュースで配信されているので、ご存知の方も少なくないだろう。2016年11月に試験を開始し、2017年2月に本稼働したシステムである。
 このAIロボットシステムの利用によって、従来は18名体制で行なっていたライン作業が2名で可能になったという。シタラ興産の発表によれば、人件費削減効果は、手選別作業員の削減に加えて、管理者や労務管理の手間などを合算すると、51~54名分に相当するという。
 同様のシステムは他の地域の産業用廃棄物処理で利用されるようになってきている。
 これも動画をみていただいた方がわかりやすいだろう。


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