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BCN 視点 #57 「CSAJのスタートアップ支援事業」 (2015年7月2日)

 ベンチャー企業は、経済を活性化する重要な一要素である。それは米国のIT企業が米国経済をけん引している現状をみればよくわかる。例えば、シリコンバレーでは年間平均1万7300社が起業し、1万2800社が廃業している(このデータの出所は、“Silicon Valley Index 2012”で、社数は1995年から2010年の平均値である)。

 言うまでもないことだが、この起業数と廃業数の差、4500社がすべて成功して大企業に成長するわけではない。半ば死んだような状態で存在し続けるゾンビ企業になるベンチャー企業も少なくない。大企業に買収されるか、新規株式公開(IPO)してエグジットに成功する企業は、この4500社のごく一部である。ただ、そのなかには時価総額数十兆円のGoogleやFacebookが含まれることを忘れてはならない。

 重要な点は、この膨大なチャレンジがあるからこそイノベーションが生まれ、世界を変えるソフトウェアが生まれてくるということにある。もちろん、単にチャレンジの数を増やせばよいというものではない。抜きん出た才能をもった人材を発掘し、起業を支援する仕組みが必要である。

 米国には、スタートアップ・アクセラレータと呼ばれる組織がいくつも存在する。2005年にわずか数万ドルで設立されたシリコンバレーのYコンビネータもその一つで、オンラインストレージ・サービスのDropboxなどを育て上げて、2010年までに投資したベンチャー企業の評価額は数十億ドルになっている。スタートアップ・アクセラレータは、シード期のベンチャー企業に投資するだけでなく、起業家を教育・訓練する仕組みをもっている。

 2月23日号のこのコラムで「起業家が起業家を育てる」という話を書いたが、スタートアップ・アクセラレータは、起業経験者が起業家を育てるという好循環エコシステムの一部になっている。日本にもこうしたシード期のベンチャー企業に投資を行い、起業家を育てる仕組みが必要である。

 手前味噌ではあるが、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)は、6月にCSAJスタートアップファンドを組成し、CSAJスタートアップ支援事業を開始した。その狙いは、世界を変える革新的なソフトウェアを生み出すことと、日本にシリコンバレーのような「起業家が起業家を育てる」好循環を創出することにある。

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